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第四十三話 食事ですわ!

「サイカ‥あんた何でここにおるん‥」


 私は相手に問いかける。

 サイカは未だに体の一部が凍傷しており、体の至る所が赤く腫れている。


「何でも何もないですわ。私は貴方たちを『黒薔薇の最後』の皆様に突き出すんですから、それを全うしにきただけですわ」


  彼らが撤退した事などを知らないサイカは、哀れにも任務を未だ全うしようとしていた。


「愚かな女だ。奴らなら先程私に敗北し、逃げたばかりだ」


 サイカは驚いた顔を浮かべる。

 汗を垂れ流し、瞳孔を開く。


「そんな‥嘘よ!あの方達は、私たちを仲間に引き入れてくれるって約束したんですわ!」


 逆上しながら、サイカはそう叫ぶ。


「その私たちと言うのは誰が含まれているんだい」


「‥私のお友達と、先輩方ですわ」


 私はそれに対して驚きを見せる。

 てっきり誘われていたのはサイカとその取り巻きたちだけだと思っていたからだ。


「‥なるほどな。お前らは利用されたんだ」


 にゃあ吉はサイカを哀れな何かを見る目で、冷たく見つめる。


「この学園について、やけに詳しいと思っていたんだ。少しのミスであいつらの姿は公に晒される。それなのにあいつらはそれを上手く避けていた」


 言われてみればそうだ。

 教室を破壊したちゃぷるも、ララの教室を知っていて破壊したようだったし、そして恐らく彼らが屋上に身を置いたのは、授業時間中なら屋上利用者がいない事を把握していたからだろう。

 学園に内通者がいた。それなら全て辻褄が合う。


「結局は自業自得だ。騙されるお前が悪いし、そもそも奴らの話にのる事自体間違っている。さっさとここから去って、罪を償ってこい」


 にゃあ吉は淡々と彼女を責め立てる。


「きっと‥きっと何かの間違いですわ。‥そうだそうよふふふ」


 サイカはぶつぶつと何かを言いながら笑い始めた。

 私はそれを見て少し気の毒に感じてしまった。


「きっと私が失敗したから彼の方たちは、逃げただけですわ!今からでも任務を全うすればきっと‥きっと!私を仲間に迎え入れてくれますわ!」


 サイカは大声を上げて、私たちの方にギョッと視線を向ける。

 それは身の毛がよだつほど恐ろしい眼差しだった。


 すると次の瞬間、サイカは何かを胸ポケットから取り出す。


 私は本物のそれを初めて目の当たりにする。

 黒く光る重量感のある外装、拳銃だ。


 サイカはそれをそっと私に向けた。


 にゃあ吉はそれを見た瞬間サイカの方へと走り出す。


「散々‥私のことをコケにしてくれましたね。リアさん‥私は特別なんです。彼らに再度それを認めてもらわないと‥」


 そう言ってサイカは引き金に手を伸ばし、ゆっくりと握る。


 にゃあ吉は間に合いそうにない。

 あまりの状況に私はうまく反応できず、逃げ遅れてしまう。


 このままでは、私は‥


 ゴンッ!


 私は恐ろしさから目を瞑った。

 けれど発砲音は聞こえず、その代わり鉄で何かを殴ったかのような重たい音が聞こえた。

 ゆっくりと目を開ける。


「リア様無事ですか!」


 そこに立っていたのはララだった。


 ララは、グングニルでサイカの腕を殴ったようで、拳銃は転がり落ちており、サイカの殴られた腕は大きく腫れていた。


「ラスト‥ライト‥」


 サイカはララを睨みつけ、最後に私を見るとすぐさまその場を去っていった。


 階段を使い降りていったのだ。

 恐らく先生たちに拘束されるだろう。

 にゃあ吉も後を追おうとはしなかった。


 するとララは、こちらに物凄い速さで駆け寄ってきて、私を強く抱きしめた。


「リア様!よかった!」


 そう言って強く、更に強く抱きしめてくる。


「ぐっ‥ぐるじぃ」


「図書館にいないと思ったら屋上へ向かうところが見えて‥私、気が気でありませんでした。本当によかった」


 後から先生から聞いた話だが図書館で最も苦労したのは、生徒への状況説明や、パニックを抑えることではなく、私のところへ向かおうとするララを押さえ込むことだったそうだ。


「うん。わがっだ。ありがどう。ぐるじい」


「リア様!」


 私は暫く抱きしめられた。


 それを見ていたノットさんは、「青春だね」といいながら、面白がって助けてはくれなかった。


 落ち着いたララが私からゆっくりと離れると、にゃあ吉がこちらに向かってくる。


「先程は助かったララ。お前がいなければ、私が代わりに撃たれるしかなかった。最悪の場合‥リアが撃たれていた可能性もあった‥本当に感謝する」


 そう言って、にゃあ吉は深く頭を下げた。

 ここまで畏まったにゃあ吉を見るのは初めてだ。


「い、いえそんな。私はただ‥リア様のお友達として、当然のことをしただけです」


 愛も変わらず、ララはいつものように上品に言葉を返す。


「でもほんまにありがとうな。ララ」


 私もララにしっかりとお礼を告げる。


「それににゃあ吉に、ノットさんも改めてありがとう。皆んながいなかったら、学園がどうなってたわからへん。それに、そうなったら多分‥」


 恐らく私は殺されていただろう。

 皆のおかげで、一つ目の死の運命を回避する事ができたのだ。


「ほんまにありがとう!」


 私は精一杯感謝を伝える。


「気にするなリア。私は好きでお前を助けただけだ。それに私も、お前に救われたのだから」


「そうだよリア君。君がここにきてくれなかったらにゃあ吉君と共倒れになっていた」


「二人を助けたのなら、そのおかげで助かった私もリア様に助けられたことになりますね」


 そう言った後、3人は私に感謝の言葉を投げかけてくれた。


 助けられたのは、どう考えても私なのに。


 (本当にいい人たちと巡り会えたもんやな!)


 私は笑顔を浮かべながら、バレないほどの涙を流した。


 その後すぐにチャイムが鳴り始める。

 4限目の終わり、今から昼休みだ。


「あっ!そうや!今日ララと屋上で昼食取る約束してたんや!」


 私は大声をあげる。

 色んなことが起きすぎて、すっかり忘れてしまっていた。


「何かと思えば‥」

「そんな、気にしないで下さい。また今度で‥」

「いや!約束は破られへん何とかできひんやろか」

 

 私は辺りを見渡すが、瓦礫や、焦げた跡ばかりで、かつてあったであろう綺麗なテーブルや椅子たちは鉄屑と化していた。


 私は頭を悩ませる。

 腕を組み、眉間に皺を寄せて考える。


「そう言うことなら図書室の机を使うがいいよ」


 ノットさんがそう提案してくれる。


「ほんまですわ!?やったこれで場所は確保ですわ!そして、肝心のご飯ですが‥なんと!私、持ってきてるんですわ!」


 あの日約束した後、私は考え直して、屋上から食堂に行っていたらそれだけ時間を多く取られてしまうと考えにいきつき、朝からお弁当を私とララの分を作った。

 勿論にゃあ吉のぶんも‥。


「にゃあ吉の分のご飯!猫ようの量しか持ってきてないですわ!」


「‥まぁ私は構わないが‥」


 私の慌て具合に反して、にゃあ吉は冷静だった。

 

「それなら‥私も、今日のためにお弁当作ってきたんです。やっぱりリア様に食堂から屋上までを経由してもらうのは申し訳ないと思いまして‥」


 恥ずかしそうにしながらララはそう口にする。


「やったーありがとうララ!これで条件は揃ったで!ですわ!」

「本当にここでするのか?」


 私は今更何を言っているのだ?といった顔を浮かべる。

「いやまぁ良いのだが‥」


「それじゃあ、貸し出せる机のところまで案内するよ」


 そう言って図書館に向かうノットさんを引き止める。


「あっ!ノットさんも勿論参加してくださいね」


「ん?教師の私が混ざってしまっていいのかい?」


「勿論ですわ!今日のお疲れ様会も込みでやりましょう!」


 その後机や椅子を運び、屋上に置いた後、持ってきたお弁当などを並べた。


 そして皆で食事を始める。

 今は先程のことを忘れて、他愛もない会話をしながら盛り上がる。

 何気ない時間だが、とても幸せに感じる。


 改めて言おう。

 私は彼らと出会った事を心の底から嬉しく思う。

 今後も前世での友達を探すつもりだが、皆との時間も大切にしていきたい。

 なんて言ったって、前世での親友たちと同じく、彼らもまた親友なのだから。



 



 残す死の運命は、2つ。

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