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第三十九話 喧嘩ですわ!

「リアくん‥」


「ッ!!リア!何しにきた戻れ!」


 ついて早々、そこにいた人たち全員の視線がこちらに向いた。


 そこには傷つき、血を流しているにゃあ吉とノットさん、そして敵と思われる4人の姿があった。


 にゃあ吉とノットさんは敵と向かい合っており、にゃあ吉は未だ相手に立ち向かう姿勢をとっているのに対して、ノットさんは腰をついていた。


 見たところにゃあ吉よりも傷が酷い、もう立っていられないのだろう。


 ノットさんは私を見つめ、いつものような笑顔は浮かべずに、何故ここにいるのかと言った戸惑った顔を浮かべていた。


 そしてにゃあ吉は今まで見たこともないほど動揺した顔を浮かべている。

 

 にゃあ吉は慌てながら、床に力強く拳を落とした。


 砂埃が舞い、視界が塞がって何も見えなくなる。


 すると私は何者かに手を引かれた。


 痛む目を開けると、にゃあ吉が私を階段へと連れ戻そうとしていた。


 私はにゃあ吉の手を振り解く。


「何しているリア!早く戻れ!」

「違うねん!にゃあ吉。話聞いて」


 私は魔力の事を伝えようとする。


 けれどそんな中、にゃあ吉は突如ふらつき始め、その場に膝をついた。


 私は駆け寄り声をかけ、肩を揺するが、にゃあ吉は俯いたまま返事をしない。


 すると揺すっていた肩が徐々に小さくなっていっているように感じた。


 感じたのではなく事実としてそれは起きており、にゃあ吉を見てみると、少しずつ小さくなっているのがわかった。


 厳密に言えば幼くなっている。


 みるみる幼くなっていき、にゃあ吉はとうとう少年の姿にまで戻ってしまった。


「ッ!何が起きた。何故この姿に」


「にゃあ吉これ見て!」


 同様するにゃあ吉に、私は手にはめた指輪を突きつけ見せる。


「光が弱くなっている?‥なるほど魔力が残り少ないというわけか」


 理解したかのような素振りを見せて、にゃあ吉はふらつきながら立ち上がる。

 砂埃は徐々に風にさらわれ消えて行く。


 にゃあ吉は私の肩を掴み、顔を上げて、真っ直ぐ私の瞳に目を合わせる。


「リアよく聞け。魔力が無くなれば敗北は確実だ。そうなればそこの女も共にやられることになる。つまりは図書館は奴らに占拠されることになる」


 私は固唾を飲む。


 「そうなるとリアも奴らにやられかねない。だから最後に一度。相手に強力な魔法の一撃を喰らわし、一時的に魔法障壁が緩む隙を作る。その隙に逃げるんだ」


「にゃあ吉は?!」


「力を使い果たせばすぐに行動することは叶わない。私のことは構わないから先に逃げるんだ!」


 同様する私に、にゃあ吉は強く言いつける。


「そんなんいやや!」


 私は肩を掴んでいるにゃあ吉の腕を振り解き、首を大きく横に振る。

 まるで駄々をこねる子供のようだ。


「我儘を言うなリア!」


「いややったらいややねん!」


 私はにゃあ吉を強く見つめる。


「そもそも私がここにきたのは、私がここに残るって言いに来たからやねん!やからにゃあ吉が逃げて!」


「何を言ってるんだリア。私はお前に生きて欲しいと何度も言っているだろう。それが私の望みなんだ」


「なら私の望みはにゃあ吉が生きてくれること!私は絶タッいっ!1人で逃げたりしぃひん」


 とうに相手の目をくらますために舞わせた砂埃は消えており、私たちのどちらが相手に逃げてもらうかと言った、よくわからない言い合いを先生と今まさに戦っている敵に見せてしまっていた。


「いう事を聞けリア!」

「いやや!」


「おいお前たち、いい加減にしないか」


「「うるさい!」」


 どう考えてもうるさいのは私たちだ。

 敵の注意を払い除ける。


 喧嘩を初めてしたというのもありとても白熱してしまい、今は関係のない、お互い言いたかった事を言い合う合戦にまで発展してしまった。


「いつもいつも我儘ばっかり言って、振り回される私の身にもなってみろ!」


「我儘はそっちやん!大人ぶって自分がいつも正しいみたいな顔して、別に毎回正解言えてるわけじゃないで!」

 

 鼻先があたるほど顔を近づけて双方譲らず睨み合う。


「そこまでだ!!」


 するとノットさんが大きな声をあげて、その場にいながら注意を入れる。


「君たち、ここは戦場だ。いつまでこうしているつもりなんだ」

「よかった。そちらにもまともな人がいたようですね」


 しっかりと注意するノットを見て、敵の1人が安心した表情を浮かべている。


 そして実は先程から私たちの喧嘩を大はしゃぎしながら見ていた敵がいたのだが、注意が入った途端とても残念そうな顔を浮かべていた。


 その敵の容姿はモコモコの黒いダウンをきた白髪のお婆さんで、服装は少し派手だが、朗らかな顔をしていた。


「てことですまないが少し作戦する時間をいただけないかな敵諸君」


「ふざけてるのか!」


「ふざけてなんていないよ」


 どう考えても敵が正しい気がする。

 こんな条件飲んでもらえる筈ないと当然思っていたのだが。


「ぼ、‥僕はっ!別にぃ作戦させてあげてもいいと‥思います」


 敵の1人が作戦を認める節の言葉を吐いた。

 赤いランドセルのようなものを背負った女の子だが、何やら俯き、体が少し痙攣している。

 何かを我慢しているようだ。


「何を言っているんだ君まで‥」


「だって!!!!喧嘩はダメなんですよ!!!ママもパパもそう言ってたんです!!早く‥早く仲直りしなくちゃーえぇぇぇぇん!!」


 そう言いながら突如女の子は大きな声をあげて泣き出した。


「あっあー何も泣かなくてもいいじゃないですか。わかりましたこの子が泣き止むまでの間作戦を許します。するならとっとと仲直りして下さい」

 

 そう言って女の子を宥めている、先程からまともな指摘をしているスーツ姿のサングラスをかけたキャップ姿の男性がとても不憫に見えた。


 そして先程注意が入り落ち込んでいたおばあちゃんが立ち待ち大はしゃぎし始めた。


 そして先程から何も言葉を発さず立っている恐竜の被り物をしている顔が見れない敵の人は、しゃがんで休み始めた。


「それじゃあ許可も取れた事だし、そこの喧嘩中の馬鹿ップル集合」


「「カップルじゃない!!」」


 こうして不思議な状況下での、作戦会議が始まった。

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