第三十三話 眠れてないですわ!
「ララ‥」
私はただ燃え上がる教室を呆然と見ていた。
「リアはここで待っていろ!私が確認してくる」
そう言ってにゃあ吉は私を置いて校舎に走り出す。
確かに最悪な出来事が起きていたら私はパニックになってしまうかもしれない。
けれどここでにゃあ吉だけに頼るのはいかがなものか。
私は覚悟を決め、にゃあ吉を引き留めた。
「待って!‥私も行く」
にゃあ吉はうなづいて走り出す。
私はそれに続いた。
2階まで階段で上がり、廊下を走る。
すると今だに燃えている教室が見えてくる。
瓦礫が散らばり、壁や床に火がついている中を進んだ。
教室の前に着くと、扉や壁は崩れており、校舎内にも関わらず、外の景色が見えてしまっていた。
そして見たところ生徒の姿はない。
生徒の姿はないが、ただ1人、教室の外側に不良のようにしゃがみながら、片手で自身の両頬を揉んでいる謎の女性がいた。
ただ呆然と外を見つめボソボソと何かを喋っている。
後ろ姿からでも感じる禍々しいオーラは、私に彼女が敵であると言うことを知らせているかのようだった。
「おいお前。そんなところで何をしている」
にゃあ吉が相手に話しかける。
「おかしいですねー。正義の心が強い彼女なら逃げた後だとしても、自信の思い出の教室を破壊されちゃったら怒ってでてくる思ったんですけどぉ。ねぇ貴方達はどう思います?」
(よかった。ララは逃げてたんや)
私はそっと肩の力を抜いた。
それと同時に相手は、ゆっくりと立ち上がる。
そしてこちらに振り返り、相変わらず自分の頬を揉んでいた。
瞳孔が開いているように大きく開いた目は、くまでおおあれており、綺麗な髪は地面にまで着くほどの長さで、口は小さく顔は整っているが、顔色の悪さから美しさは感じられない。
何よりも私が驚いたのはその身長だ。
裕に2メートルは超えている。
手足は細長く、体も痩せているのか、肩幅が狭いのかわからないがとにかく華奢だ。
前身真っ黒な服装で身を纏っており、ジャケットを着ているがそれでも腕の細さはつたわり、ズボンは短パンで足の細さが目で見てわかる。
「‥お前は馬鹿なのか。高々1ヶ月かそこら‥いや、1ヶ月すらたっていない教室に大した思い出などあるはずがないだろう」
にゃあ吉は相手の質問に答える。
「そっかぁ。じゃあうちのした事は無駄だったんですねぇ。残念。でも、この無駄な労力を使ったおかげで今夜こそ眠れるかもしれませぇん」
そう言って彼女は無邪気な笑顔を見せる。
「きぃてくださいよ。うち、今日で17年目突入なんですよぉ」
私たちはその意味が理解できなかった。
「うー。理解できてないですねぇ。17年間寝てないって言ってるんですよぉ」
「17年!?」
「まぁつまりはぁ生まれてこの方ぁ、眠ったことがぁ無いってことなんですけどぉ」
私はこんな場面にも関わらず、声を出して驚いてしまう。
けれど生まれてから寝ていないだとか、ありえないことを言われると驚くのは当然だ。
もちろん普通なら冗談だとか、嘘だと思うかもしれないが、彼女のあのくたびれた表情を見れば、それは納得がいく事となった。
「あぁ早く眠ってみたいですぅ。とてもつらいですぅ」
そう言いながら相手は悲しそうな表情を浮かべた。
強弱のない喋り方に対して、表情はとても豊かだ。
「リア。無駄話している余裕はないぞ。ララがいないなら他をわたろう」
そう言ってにゃあ吉は歩き出す。
「待ってくださいよぉ。もう少し、お話しましょう。いーぱいお話しして、今日こそぐっすりと‥あれ?貴方たち今回のターゲットの人たちに似てますねぇ」
そう言いながら相手は目の色を変えた。
懐から紙を取り出し、私たちとその紙に書かれた何かとを比較をしている。
「ほらぁ。この紙に描かれた似顔絵と一致したぁ。えーとそこの女性がリア・クリスタロス。貴族令嬢ですねぇ。いいですねぇオシャレです」
褒められると言うのは、たとえ敵からの言葉でも嬉しいものだな。
「それからそこの男性が、ミッドナイト・キャットですねぇ。いやー初めましてぇ。ボスが会いたがってましたよぉ」
それはどう言った意味だろうか。
何故相手のボス。つまりは『黒薔薇の最後』のボスがにゃあ吉と会いたがっていたのだろうか。
「あー。その方の前ではこのお話しは、しないほうが良かったですかぁ?ごめんなさいですぅ」
そう言って相手は頭を下げる。
「それからもう一つ謝罪です。私は別に貴方達に恨みなんてないですし、きっとこれからもそう言った感情を貴方たちに向ける事はありません。それなのにこのような無礼をお許しください」
そう言った丁寧な言葉の後に、相手は姿を消した。
「リア。私から離れるな」
にゃあ吉は私に近づいて抱き寄せる。
すると後ろから相手の攻撃が飛んできた。
シンプルな打撃だが、振り翳されたその拳は岩をも砕く勢いでこちらに向かって飛んでくる。
避けたにゃあ吉だったが、避けた先のコンクリートは砕け散っていた。
「うーん。避けないでくださぃ」
「無茶を言うな。」




