第三十二話 敵襲ですわ!
「あんたその組織の一員やったってこと?」
私は動揺しながら彼女に問いかける。
「理解力のないお方、そうに決まっているでしょ。厳密にいえば、私たちはつい最近組織に入らせていただいたばかりですが」
私たちという事はこの取り巻きたちも、その組織に入ったのだろう。
一体どうやって組織と接触したのか、何故組織に入ったのか、疑問が頭を駆け巡る。
「何故そんな愚かな真似をした。お前はあそこがどう言った組織か理解して入ったのか」
にゃあ吉は相手を睨みつけながら質問する。
「勿論。それから私の名は、あんたやお前ではなくサイカという名前があります。これからはそう呼んで下さい。まぁ短い間になると思いますけど」
バカにするようにしながらサイカは言葉を返した。
「短い間ってどういう事やねん。私たちになにするつもりや」
「別に貴方たちに限った事ではありませんわ」
彼女がそう言った途端、学校で聞いたこともないような音が鳴り響く。
緊張感のあるサイレンのような後は、高い音で頭や体にまで響く。
「警報音?‥まさかお前ら!」
にゃあ吉は深刻な顔をした後、サイカ達を怒鳴り上げる。
「ご想像通りですよ」
サイカは不気味な笑みを浮かべる。
「只今学園に複数の侵入者が確認されました。生徒の皆さんは教室からは出ずに、先生から離れないようにして下さい。繰り返します‥」
にゃあ吉は慌てた表情で私に駆け寄る。
「リア逃げるぞ。もしかしたら‥今日かもしれない」
そう言ってにゃあ吉は私をいつものように抱き抱える。
にゃあ吉が戸惑いながら言った今日とは、リアが亡くなってしまう日のことだろう。
私は前に、リアが学園で死亡する未来があることをにゃあ吉に話した。
そのことを警戒してくれているのだろう。
確かに私もここにいるのは危険だと思う。
だとしたら今すぐに学園から離れるのが得策だ。
「あら貴方たちだけ逃げるんですの?やはり愚かですね。友を置いて逃げるなんて」
「気にするなリア」
にゃあ吉は私を抱き抱え走り出そうとする。
「まぁ逃しませんけど」
「にゃあ吉後ろ!」
走り出そうとしたにゃあ吉の背に、サイカは拳をぶつける。
「ッ!」
にゃあ吉は大きく一歩下がり、サイカから距離をとる。
「前よりか格段に速さが上がっているな」
「えー。組織からいただいた薬のおかげで」
にゃあ吉は私をそっと下ろす。
「待ってろリア」
そう言ってにゃあ吉は相手達の前へと歩いていく。
「愚かなことを‥」
相手は一斉ににゃあ吉へ向かって飛び掛かった。
にゃあ吉はそんな状況にも関わらず、顔色を変えずそっと手を前に出した。
前に出した手は、白い霧を纏い、一瞬にしてあたりの温度をグッと下げた。
私はその瞬間身が凍るかのような感覚に飲み込まれる。
それが起きてすぐのこと、相手は地面に転がっていた。
各々の体の一部分がところどころ氷ついている。
「痛い痛い痛いっ!!」
皆は苦悶の表情を浮かべながら、声色を濁らせて叫んでいる。
凍傷という言葉があるように、冷たいがすぎるとまるで傷ついたかのような痛みが襲うのだろう。
にゃあ吉はその後すぐにこちらへと戻ってきた。
「行くぞリア。一刻も早くここを離れよう」
「ありがとうにゃあ吉‥。でもあの人たち大丈夫やろか」
「大丈夫だリア。すぐに氷はとけて元に戻る」
そう言って再びにゃあ吉は私を抱き抱える。
「貴方達本当に逃げるんですの?」
声を震わせながら、あいも変わらず馬鹿にしたような顔で私たちに問いかける。
にゃあ吉は気にせず歩き出す。
「黒薔薇の最後の目的はスカウトです」
サイカは大きな声でそう告げる。
「強力な仲間を手に入れるためこの学園にやってきたそうで、実力のあるものは問答無用で仲間に引き入れ、組織に入隊させるそうです。それを抵抗するものは‥どうなってしまうでしょうね!」
気にせず歩くにゃあ吉の袖をそっと私は掴んだ。
ふと頭をよぎったことがあったからだ。
「なぁにゃあ吉。なんでサイカ達は私たちを引き止めようとしたんやろ」
「‥入学式の因縁か、もしくは組織にそう命じられていたかだな。私たちは組織のものに干渉している。その為狙われたのかもしれない」
私は嫌な予感がした。
深刻な顔を浮かべ、にゃあ吉の袖を掴む。
「やったらにゃあ吉!ララが危ない!」
そう言った途端ララのいる教室から爆発が起きた。
私はまるで映画を見ているかのような感覚に陥る。
けれど、火薬の匂いに、こちらにまで届く火の暑さが、これは作品ではなく事実だということを、私に突きつけてきたのだ。




