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第十二話 魔法ですわ!

「まず、リアは魔法を何処まで知っているのかを教えてくれないか」


「えーと、魔法は使役、身体強化、回復の3種類がある事とか?」


 私は数少ない知識を話した。


 今私の部屋でにゃあ吉から、魔法についてを教わっているところだ。


 にゃあ吉はベッド近くの窓際に座りながら、私に質問を出して、私はにゃあ吉の方向に体を向けながら、ベッドに座っている。


「それ以外は知らないのか?」


「うん。まぁそうやな」


「なるほど‥ならまずは魔力について教えるとしよう。今日私が人間の姿になった後、君の魔力を貰ったと言ったのを覚えているか?」


「うん。覚えてるで」


 確かに、にゃあ吉が人間になった後、私がぐったりとしていると、「私が魔力を貰ったから」だと言っていた。


「まず魔力だが、この世界のものはどんな生き物だろうと持っている。魔力袋と言った臓器から魔力を得ているんだ。魔力袋とはその名の通り魔力を発生させる場所、そして魔力を貯めて置ける場所でもある」


 元いた世界では無かった臓器だ。聞いたことがない。

 ゲームでもその様な説明はされていなかった。

 どうやらゲームでは語られていない設定が、多い様だ。

 原作を知っているからと言ってこの世界のことを知ったつもりになるのは、良くないのかもしれない。


「そしてその魔力袋だが、リアも当然持っている。

 そして私はそのリアの魔力袋から魔力をいただいたんだ」


「魔力をいただいたって、どうやったん?」


 私は首を傾げる。


「本来特殊な魔法を使う以外は誰かの魔力を貰うことなんて出来ない。けれど私たちは契約をしている。それが故に私は好きなタイミングでリアの魔力を貰うことができるんだ。まぁ緊急時以外はそんなことしないがね」


 なるほどそういうことだったのかと私は大きく頷く。

 まずにゃあ吉は私と契約しているから、私の魔力をもらうことが出来た。

 そして、にゃあ吉は元人間で魔力を失うと猫になる。

 つまりは魔力を得たあの時は一時的に人間に戻れたということか。


「魔力の話は終わって、次は魔法についてだ。魔法だが、リアの言った通り、使役、身体強化、回復の3種類であっている。テストなら満点だ。けれど本来は違う」


 私には一つ心当たりがあった。

 にゃあ吉がこの前使っていた火の魔法だ。


「魔法は今言った3つの他に複数の魔法が確認されている。けれど、それらは神より授かる魔法ではない。全て黒魔術、もしくは魔導書、もしくは‥悪魔との契約によって手に入る魔法だ」


 悪魔。

 その存在は元の世界でも聞いたことがある。

 ゲームやアニメ、映画などでも度々登場する、悪を象徴する存在。

 そんな存在がこの世界に実在するなんて驚きだ。


「リア、私は君に隠し事をしたくない。だからあえて言おう。私は悪魔と契約している。この前使った火の魔法もその一つだ」


 にゃあ吉は少し怯えた表情でその事を語った。

 私に軽蔑されたくないと言った感情なのだろうか。

 どうか嫌わないでほしいと言った顔を浮かべている。


「そうやったんや。悪魔との契約がこの世界でどう言った意味を持つのかはわからへんけど。私は、あの火の魔法をにゃあ吉が使ってくれたおかげで助かったと思ってるから、その事に対して悪い印象を持ったりしないで」


 私は正直な感想を述べる。


「そうかよかった‥」


 にゃあ吉は安心した顔を浮かべている。


「魔法についての話は以上だ。リアの年齢ならこれ程の知識で十分だからな」


 案外短かったな。

 いや、にゃあ吉が私のことを考えて、なるべく短く終わる内容にまとめてくれたのだろう。

 きっと長ければ長いほど私は真面目に話を聞けなくなってしまうからな。


「それでだリア。次は私は君に聞きたいことがある」


 勉強も終わって、ひと段落と思っていたが、にゃあ吉は口を開いた。


「リア、君は一体何者だ?」


 私は呆気に取られる。

 それはどういう意味だろうか。

 確かに私は変わった境遇で今に至る。

 にゃあ吉はそれを見抜いているのだろうか。


「いや、言いたくなければそれで良いんだ。人にはそれぞれ、言いたくないことはあるものだからな」


 にゃあ吉が話を切り上げる。


「私は本当はリアじゃない!」


 けれど私は話を切り上げさせずに、続ける。


「私は本当はリアじゃない‥いやリアではあるんだけど‥リアではないというか」


 話すのが難しい。

 記憶が戻った今の私はもう殆どリアとしての記憶は残っていない。

 けれど、かと言って私は転生してからリアとして生きてきた。

 それでも、元はと言えばリアはゲーム

「LOVE SCHOOL」のキャラクターだ。

 そう考えれば私はリアじゃないのかもしれない。


「大丈夫かリア‥無理はしなくて良いのだぞ」


 にゃあ吉が心配そうに私を見つめる。


「ううん。大丈夫。‥えっとな私は元々花園桜っていう名前で、こことは違う世界からきた人間やねん‥。」


 あまりにも非現実的な話だ。

 自分で言っていてそう思う。

 信じてもらえるのだろうか。

 私は不安が積もる中、話を続ける。

 

 「それでな、事故に遭って死んじゃったんやけど。私は友達としていたゲームのキャラクターに転生してん」


「それがリアだったのか?」


「うん」


 私はにゃあ吉の顔が見れないでいた。

 どう言った言葉をかけられるのかが、わからなかったからだ。

 先程のにゃあ吉も同じ様な気持ちだったのだろうか。


「なるほど。リアは転生者だったのか」


 私の不安とは裏腹に、にゃあ吉は簡単に受け入れてくれた。


「信じてくれる?」


「信じるも何も、リアは今過去を話してくれたんだろ?わざわざ話してくれたのに、それを疑うわけがないだろ」


 私は安堵する。


 安心している私に、にゃあ吉はゲームとは何かを尋ねてくる。

 私は説明が難しいと判断し、物語に声や動きなどを足したものといった大雑把な説明をした。


 にゃあ吉は「ある程度はわかった」と頷く。

 そして考え込んだ後、不安な顔を浮かべながら口を開いた。


「それじゃあリアはこの世界の未来を、知っているのか」


 その通りだが、私は返事をする前にある事を思った。


 (この世界の未来を知ってるのって、大丈夫なんやろか)

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