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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
聖女邂逅の章

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154.始まりの神話

あらすじ


複製体ゴブリンに襲われたミーシェは、それを透明な壁で囲み、放置することで解決した。その後もダンジョンを先へ先へと進んでいくミーシェだったが、どうやら途中から迷っていたらしく、私は配下をミーシェの下へ向かわせ、ダンジョンの外まで連れていく。

その後、何とかミーシェ自身からその肩書を聞き出すことに成功した私は、いよいよ、ミーシェから人間側の情報を聞き出すべく、会話を進めていくのだった。




 それは、今から約三千年ほど昔のこと。

 我らの先祖、始まりの五十二人は、古き神々が守護せし聖地を不当なる迫害により追放された。しかし、追放されし五十二人は偉大なる聖女の導きにより、今では古都ノムカピテールと呼ばれる地に辿り着く。ノムカピテールとは古き言葉で再誕の聖都を表している。名を付けた聖女と五十二人の民たちはその地にて、新たなる聖地、真なる理想郷を築こうとしたのだ。

 しかし、その地には人々の崇高なる願いを阻む者たちがいた。それが、悪しき邪神とその邪神が生み出した魔物たちだ。


 最初の頃、人々はその邪悪なる魔物たちに抗う術を持たず、ただひたすらに虐げられる日々を送っていた。されど、導きの聖女が人々の真摯なる祈りにより神へと至り、人々に抗う力を授けたことで、その状況は次第に好転していく。

 人々は神より授けられた力を使い、邪悪なる魔物たちに対抗した。そうして、次第にその版図を広げていったのだ。

 その後、神は信仰を束ねて新たなる神を生み出し、それらの新たなる神々によって、領域教会が発足される。そうして今日、領域教会の神々に支えられ、人々はこの地に多くの国々を築くに至ったのだ。



「――と、これが領域教会の成り立ちを伝える、始まりの神話だよ。ちなみに、この神へと至った聖女が、聖女神リクシルさまなの」


 ミーシェの属する領域教会と呼ばれる組織について尋ねた私に対して、ミーシェはそのような神話を教えてくれた。どうやらこれは、この世界の人間ならば、大抵は知ってるほどに有名な話らしい。


「それと、古都ノムカピテールはね。ここからずーっと先、人間の領域の奥深くにある真っ白な建物が並ぶ綺麗な街だよ。私もね、そこから遥々やってきたんだ」


 過去を思い出しつつ語っているせいか、ミーシェの言葉には古都ノムカピテールの街並みらしき風景が溶け込んでいる。断片的なイメージではあるが、荘厳で美しい街の様子が感じ取れた。

 それに、護衛の騎士たちと馬車を乗り継いで移動するイメージも混じっている。どうやらミーシェは、ここに来るまで随分と長旅を経験してきたようだ。

 こちらもなかなかに興味深い話ではあるけれど、今は神話の方が気になっている。話を戻す意味でも、そちらについて、幾つか質問してみようか。


 ――その話に出てくる古き神々が守護せし聖地とは、どんな場所なのだ?


 私がそう尋ねると、ミーシェはこてんと首を傾げた。


「私も詳しくは知らないの。もはや、戻ることは叶わぬ遠き地、としか」


 言葉からは困ったような印象が読み取れる。本当に知らないようだ。


「ただ、魔術師の間では、異世界にあるって説が定番らしいね。私に魔術を教えてくれた先生はその理由を、えーと、我々の魔力に刻まれた理が、この世界由来の魔力とは異なっているから、とか言ってたよ?」


 首を傾げながら、ミーシェは考え考え、そう付け加える。どうやら聞いた言葉をそのまま話してくれたようだ。全体的なイメージとしては酷く曖昧だが、一つ一つの言葉として分解し、理解し直していけば、大よそは分かる。人間の持つ魔力と、この世界の魔力の違いか。なかなかに面白い話だ。

 しかし、それ以上に私の興味を引く単語が出てきたな。


 魔術。


 ミーシェのステータスを確認した時から、密かにそちらも気になってはいたのだ。特に『魔法陣学』については、無い頭を下げてでもご教授賜りたい。丁度最近、人間の残した魔法陣の解析に関して、独学に行き詰まりを感じていたところだったので渡りに船というやつだ。

 しかし、領域教会の神話も気になる。この世界の人間の事を知る為という意味もあるが、それ以上にこれは私の好きな部類の話だ。今は魔術と同じくらい気になっている。

 ふむ。ここで焦って話題を終わらせてしまうと、もう一度、同じ話題を振るのに苦労するかもしれない。今は魔術を学んだという情報を引き出せたことで、満足しておこう。

 だが、あとで絶対に話は聞く。



 ――そうか、なるほど

 ――もう一つ、ミーシェはその神話に出てくる邪神というものが何か知っているか?


「……それは、この世を支配する邪悪。全ての魔物たちを生み出し、闘争へと扇動する元凶にして、人間の繁栄を阻む、領域教会が打ち倒すべき怨敵、と」


 ミーシェは感情を消すようにして、それを諳んじる。その雰囲気は、神話を語っていた時と酷似していた。恐らく、何千、何万回と繰り返し、同じ言葉を語ってきた為だろう。だからこそ、そこから読み解けるイメージも、固定化されており、非常に読みやすい。


 実のところ、私は神話を聞いていた時から、この邪神について、少しだけ心当たりがあった。それが、今のミーシェの言葉によって、より確信に近づく。

 それは、領域教会が出来る前から存在する神であり、同時に領域教会の神々が敵視する領域教会に属さぬ神。

 そう。その心当たりとは、魔王レティシアを魔物へと転化させた神と、私をこの世界へ転生させた神だ。尤も、魔物が関係しているという意味では、魔王レティシアが信奉している神の方が有力だろうか。


 ところで、ミーシェが邪神のことを話した瞬間、私の『敵意感知』に僅かな反応があった。反応の元はミーシェ。ミーシェが抱いた二度目の敵意である。どうやら、魔物とお友達になろうというミーシェであっても、この邪神という存在には思う所があるようだ。


 邪神。邪悪なる神か。

 まあ、魔物と敵対する人間たちからの呼び名だ。それが真実、どのような存在であるかを、その呼び名一つで決めつけることは出来ない。特にどちらかと言えば、魔物側である私には、害の無い存在であってほしいところだ。これ以上、敵は増えてほしくないからな。



 最後にもう一つ、神話の件で気になっていることがあった。それは、魔物へ抗う為に生み出された人間の力。以前、魔王レティシアに聞いていた情報から、ある程度の予測は着いているのだけれど、出来る事なら改めて、ミーシェからも聞いておきたい。

 ただ、果たして聖女たるミーシェが、これを私に教えてくれるだろうか?


 ――最後に一つ、これは答えられる範囲で構わないのだが、神話の中で人間が神から授けられた抗う力とは、どういったものだったのだ?


「職業と加護だよ」


 躊躇う時間すら無い、か。


 ――職業と加護、か。それは我に教えても良い事なのか?


「特に隠せとは言われてないし、大丈夫なんじゃない?」


 ――そうか


 そうなのか?


 ――では、職業と加護というのは、具体的にはどんな力なのだ?


 そう尋ねると、ミーシェの雰囲気がまた切り替わる。そうして、長い話が始まった。


 職業はその者の適性に合わせて、神々より授けられる力です。その為、適性の幅が広い方は、多くの職業から選べる場合もあります。また、一度選んだ職業は、お近くの教会で神に祈ることにより、変更することが可能です。適性はその職業に関係のあるスキルを磨くことで、新たに増えることもあるので、最初の段階で望んだ職業が現れなかったとしても、すぐに諦める必要はありません。その場合は、望んだ職業が現れるまで、他の職業に就きながら、スキルを磨くという選択をお勧めします。ただ、職業は長く同じ職業に就いていた方が適性が高まるようなので、あまり転職を繰り返すことは推奨されません。


 一方で、加護は授けた神の司っている概念により、その力のあり方を変えます。例えば、最も一般的な守護神から授けられた加護は、主に身体能力や魔力の向上と、その守護神が守護する土地での力の増加です。また、それぞれの職業を司る職業神から授けられた加護は、その職業の適性の向上と、職業に関するスキルの習得のしやすさなどが向上します。

 そんな神々の中でも、領域教会の総主神たる聖女神さまは、全ての神々の力を司っており、その加護は他のどんな加護よりも強力な力を授けて下さいます。

 また、加護には段階というものが存在しています。一番下から順に、祝福、加護、恩寵。そして最上位に位置する加護が、寵愛です。加護は上に行けば行くほど、神から授けられる力を強めていきます

 」


 淀みなく丁寧で、酷く事務的な説明だ。これもまた、これまで幾度も繰り返してきた事なのだろう。それだけに、イメージもはっきりしていて、読み取りやすい。


「ちなみに、私は領域教会の総主神たる聖女神リクシル様の寵愛を授かっているんですよ。何と言っても、聖女ですからっ!」


 しかし、ミーシェは最後に少しだけ茶目っ気を交え、感情全開でそう付け加える。最後の一言には、堂々と胸すら張って。




「ところで、マスターさん。私、暫くこの辺りに留まりたいんだけど、いいかな?」


 話が一区切りついたところで、ミーシェから唐突にそのような申し出があった。こちらとしても、まだミーシェには聞きたいことがあるので、断る理由など無い。

 ただ、何故にミーシェが滞在を望むのかは気になる。


 ――構わぬが、何故だ?


「んー、ダンジョンに興味が湧いたから?」


 何とも曖昧な答えが返ってきた。だが、何かを隠しているという風ではない。どうやら、自分でも確固たる確信がある訳では無いようだ。いや、自分の行動の理由だろうに。


「それに、マスターさんにもまだ聞きたいことがあるし?」


 道案内を終えた後も未だ、ミーシェの側で待機させているゴブリンへ、にっこりと笑顔を向けて言うミーシェ。どうやら、そちらは確固たる理由のようだ。


 ――聞きたいこと?


「うん。私のお友達のこととか。魔物さんたちの事とか、色々と」


 ミーシェの目的関連か。ふむ、悪くない。こちらにも聞きたいことはあるのだから、ここは持ちつ持たれつと行こう。私が答えられる範囲であれば、ミーシェの疑問に答えるのも吝かではない。


 ――こちらとしても、ミーシェに聞きたいことはまだある

 ――我に答えられる範囲であれば、喜んで答えさせて貰おう


「やったぁ! ありがと、マスターさん」


 そうして、ミーシェの滞在が決定した。





 ――ところで、ミーシェは魔術というものについて、詳しく知っているか?

 ――出来れば、我に基礎から教えてもらいたいのだが……



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