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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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123.守護者ゴブリンリーダー

あらすじ


探索者たちはあれから三日をかけて、守護者の待つ第一階層最後の部屋までやってきていた。私はその間に、新たに覚えたスキル『魔力精査』を使い、探索者たちが長期間の探索を可能とする理由を探り出す。

探索者たちは倒した複製体から僅かな魔力を吸収していたのだ。だが、それはダンジョンの魔力供給ほど完全なものでは無い。消費と供給のバランスが崩れれば、何れは探索も不可能となる。

その後、私は探索者の背後にいるであろう魔王レティシアを警戒し、探索者たちの為の退路を残しつつ、守護者にもその旨を伝えた。



 階段部屋で五体のコボルトたちを迎えたのは、四体のゴブリンたちだった。

 小部屋の中で対峙する探索者と守護者。その緊迫した状況の中で、最初に仕掛けたのは守護者たちだった。三匹のゴブリンファイターたちが、それぞれに武器を構え、コボルトたちへと襲い掛かる。さらにその後ろから、少し遅れてそれに続くゴブリンリーダー。


 守護者たちにはそれぞれに合った装備品を与えている。ゴブリンリーダーには棍棒と盾を。そして、ゴブリンファイターたちには、二体に剣を、一体には斧を。さらにそれに加えて全員が革製の軽鎧を身につけている。これらは人間の冒険者たちから得た戦利品を、宝図鑑の機能により召喚して増やしたものだ。召喚に使うDPの関係上、最高品質を与えている訳では無いが、そこそこの良品は選んでいる。

 ちなみに、守護者が持つこれらの装備品は守護者の機能の一部に組み込まれているようで、守護者たちが倒された際は一旦その肉体と共に溶け崩れ、一定の時間をおいて肉体と共に復活するという便利仕様だ。倒される度に毎回、DPを消費して召喚する必要が無いので、非常に助かっている。


 そうして襲い掛かる守護者たちを迎え撃つのは、コボルトブレイダーとコボルトシールダーの二体。コボルトブレイダーが一体のゴブリンファイターによる斧の一撃を剣で受け流し、コボルトシールダーがその盾で二体のゴブリンファイターの剣による攻撃を受け持つ。

 その瞬間、それぞれの背後に立つゴブリンリーダーとコボルトコマンダーの視線が交差する。その一瞬で、二人は互いの視線から何かを察したようだった。互いに仲間たちへと指示をしつつ、自身も攻撃に参加していく。

 そうして次の瞬間、ゴブリンリーダーの合図を受けて、小部屋の影に潜んでいたゴブリンが、コボルトコマンダーに向けて、漆黒の矢を放つ。


 その矢は守護者たちが用意した切り札の一つだ。ただでさえ薄暗い小部屋の中で、特に暗い部屋の隅に気配を隠して潜み、【闇夜の射手】の称号を持つゴブリンが放つ矢。しかもその矢には、予め粉にした炭を塗り込めてあり、この薄暗闇の空間で目立たぬように黒く染められている。高速で飛来するこの矢に薄暗いダンジョン内で気が付くのは至難の技だ。それが戦闘中であれば、尚更に。

 だというのに、矢が放たれた瞬間、素早く動いたコボルトスカウトが、その爪で飛んできた矢を的確に弾いた。そして、反撃とばかりにコボルトアーチャーが、矢の放たれた方向へ矢を放った。その動きからして恐らく、『嗅覚』で小部屋内にゴブリンがもう一匹隠れていることを予め察していたのだろう。それ故に、ずっと警戒していたことで、突然の矢にうまく対処できたのだ。

 だが、必殺を狙った矢を防がれた程度で終わる守護者たちではない。矢が弾かれたことを合図とするように、ゴブリンリーダーが攻撃を仕掛け、コボルトコマンダーが迎え撃つ。

 戦いながらも双方の指揮者は仲間たちに指示を与え、それを受けた仲間たちはこの戦闘の中で、より複雑な動きを実行していく。


 それは全戦力を投入した五対五の混戦だった。一人一人が分かれて別々に戦っている訳ではない。全員が全員、五対五の戦闘の中で自らの役目を果たしつつも、その時その時の状況に応じた的確な動きをしている。

 それはまさに連携対連携の戦い。指揮を受けた誰もが実力を十全に発揮し、戦闘を少しでも優位な方向に持っていこうと狙っている。


 攻撃、防御、牽制、誘導、奇襲。


 その中でも、戦いを指揮する二体の指揮官は頭一つ跳び抜けた実力者だ。僅かな時間で目まぐるしく変化していく戦いを完全に把握して、仲間たちの動きを操っている。もちろん、自らも戦闘に参加しながら。

 私は副思考も使いつつ、その戦闘の経過を丁寧に『記憶』していく。『加速思考』を使っても、この戦場で起きている全ての動きを現在進行形で認識していくのは難しい。一つ一つの動きであれば認識することが出来ても、複雑に絡み合う十体全ての動きを認識し、その裏に満ちた戦略を察するのは、慣れていない私には不可能だ。だからこそ、副思考も動員して一旦全てを記憶しておき、あとでじっくり思い出すことにした。

 それに、こういう実力が拮抗するような戦いは珍しい。駆け引きのレベルも一つ一つに分解していけば、今の私でも理解出来るようだし、きっと、この『記憶』は私の乏しい戦いに関する知識の糧となってくれることだろう。


 それにしても、ゴブリンリーダーには一応、予め相手を生かすよう伝えておいたはずなのだが、少なくとも今の私が認識できる範囲では、この戦闘の中に手加減などという言葉は見つからない。双方が確実に相手の息の根を止める勢いで、動いているように思える。

 本当に大丈夫なのだろうか?

 そんな不安を抱きつつも、私は戦いの行く末を待った。


 そうして長く続いた削り合いは、ゴブリンにより暗闇から放たれた一本の矢によって、一気に終わりへと加速していく。



 最初の一撃を防がれたゴブリンは、反撃の矢を何とか交わした後も、暫く暗闇から矢を放ち、戦いの援護を行っていた。しかし、ある時からその援護を止め、暗闇で気配を隠すことに集中し始める。

 最初はそんなゴブリンに警戒を続けていたコボルトたちだったが、次第に戦いが熾烈を極めていくと、コボルトたちの中で攻撃を止めたゴブリンへの警戒が疎かになっていく。それこそが、ゴブリンにその行動を指示したであろうゴブリンリーダーの狙いだった。

 しかし、言うは易く行うは難し。五対五で互角の戦いを繰り広げていた状態から、援護が一体抜けた上で、その状況を維持するのは相当に厳しかったはずだ。それを成せたのは、偏にゴブリンリーダーの卓越した戦力の分配能力のおかげだろう。


『記憶』に記されたそれぞれの戦いの様子を確認してみると、それがよくわかる。戦況に応じて当たる相手をうまく変えていき、こちらが有利となる戦いを随所に発生させていた。その細かな指揮の数々が、減った一体分の戦力をギリギリのところで埋めていたのだ。

 ランクの定められた守護者となったことで、進化という選択肢を失ったゴブリンリーダーは、それでも格上の侵入者を相手に勝つことを諦めていなかった。幾度も強力な侵入者に敗れながらも、ひたすら戦略を磨き続けたのだろう。その結果は、この戦闘に集約されている。


 完全に戦場から忘れ去られたその瞬間に放たれたゴブリンの一矢は、見事にコボルトコマンダーの利き腕を刺し貫いた。その痛みに一瞬、コボルトコマンダーの集中が途切れる。それを見計らったゴブリンリーダーは、その隙を逃さぬよう他の仲間たちに全力攻撃の指示を送っていた。

 ゴブリンリーダーの指示を受け、一際強く守護者たちの身体に魔力が巡る。守護者たちは瞬間的に『身体強化』の強化度合を上げ、一気呵成とコボルトたちへ襲い掛かったのだ。

 通常の『身体強化』ならばいざ知らず、己の身の内を巡る魔力を振り絞ったその攻撃は、もしも相手に受けきられてしまえば、一転して守護者たちの不利に傾く諸刃の力。

 だが、この瞬間は見事に相手の意表をついていた。その結果、見事に守護者たちの攻撃は成功し、コボルトたちはかなりの重傷を負ってしまう。さすがに致命傷という程の傷を受けたコボルトはいないようだが、このまま戦闘を続行できるほどの体力は残っていまい。

 探索者たちは何とか守護者たちから距離を取り、体勢を立て直したが、そこから感じる気配は弱ったまま。それに対して、守護者たちはここぞとばかりに威嚇しつつ、これ見よがしにゆっくりと探索者たちへ近づいていく。さながら、もはやトドメだというように。


 お。これは、もしかしてうまくいきそうか?


 ゴブリンたちの攻撃が止んだその瞬間を、コボルトたちは見逃さなかった。コボルトスカウトが守護者たちへ向けて何かを投げると、部屋中に何かが広がっていく。ダンジョンコアの知覚による感覚から察するに、恐らく煙幕の様なものだろう。その隙にコボルトたちは反転すると、すぐさま部屋を出て、通路へと戻っていった。

 まさに最高の結果だ。コボルトたちを追い返しつつ、死者は出していない。しかも、双方に、だ。これを予測して行ったというのであれば、守護者のゴブリンリーダーの評価を大幅に見直さなければならないだろう。守護者として配置していなければ、四天王候補の配下に加えたいくらいだ。ああ、守護者として配置したことが悔やまれる。いや、守護者として配置していたからこそ、その才能をここまで育て上げることが出来たのか。きっと、そうでなければ、今まで生き残ることなんて出来なかっただろうから。

 いい加減に、正式な名前を与えるべきか。それは、前から幾度か考えていたことだ。名前を与えれば、ゴブリンリーダーはさらに強くなるだろう。死んでも蘇る守護者に名前を与えるということは、ダンジョンが永続的に強化されるということ。

 それに、名前を与えるということは、私からゴブリンリーダーへ与えられる最大の報奨となるはずだ。聞くところによると、それくらい私から名前を与えられるということは、配下たちにとって栄誉なことらしいから。

 まあ、それを知りつつも私は、魔鼠たちに適当な名前を付けまくっていた訳だけど。

 しかし、今の第一階層の守護者は、現状のダンジョンの難易度に丁度当てはまっている気がするんだよな。それを簡単に強くしてしまうのもどうなんだろう? んー、やっぱりここは一旦、保留ということで。


 私は『伝心』で守護者たちを労いつつ、逃げた探索者たちの観察を続ける。

 どうやら逃げたコボルトたちは、階段部屋から離れた位置まで来ると、荷物の中から出したポーションで傷を癒したようだ。

 なかなか良質なポーションを使ったようで、コボルトたちが負った重傷は綺麗に回復している。コボルトたちから感じる気配も大分、戻ってきた。

 このまま再度、守護者たちに挑むかとも思ったが、どうやらコボルトたちは帰還を選んだようだ。地図を取り出すと、最短経路を選んで戻っていく。

 恐らくこれ以上の探索は困難だと考えたのだろう。


 とりあえずは、これでこのコボルトの探索者たちもようやく帰ってくれそうだ。

 さて、それじゃコボルトたちがダンジョンから出ていったら、いよいよ第一階層に配置している複製体の更新を行うことにしようか。








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