表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/204

122.探索は続く

あらすじ


以前、来たコボルトの探索者たちがまたやってきた。今度は前以上に作業的な動きで複製体を倒しつつ進んでいる。その退屈そうな姿に、私はある危機感を抱いた。

このままだと、常連魔物たちにも飽きられてしまうのではないか、と。

そこで、テコ入れ案として新たな複製体候補の投入を検討する。それなりの時間が過ぎ、幾つかの候補が上がり、実際に投入してみようと考えた所で、私は疑問を抱く。

そういえば、この探索者たちはいつ帰るのだろうか、と。




 エルロンドの探索者パーティー、エムカトラムの猟犬に属するコボルトたちが、ついに第一階層の最奥、守護者の待つ階段部屋まで辿り着こうとしていた。うむ、着いてしまったな。コボルトの探索者たちが二度目の探索を始めた日から三日。まさか、探索者たちがダンジョン内で三日も過ごすとは思わなかった。

 だが、今ならば、その理由も多少は理解出来る。私もまたこの三日間で、この探索者たちから新たな発見を得たからだ。


 それは、探索者たちが第一階層の探索を始めてから二日が経った頃の事。

 探索者たちはあれから最小限の食事と休憩を取るだけで、後はひたすら探索を続けている。だというのに、未だ探索者たちに疲れの様なものは見えない。如何にこの探索者たちが魔物であると言っても、ダンジョンへの侵入者であり、私にとって敵対者であるこの探索者たちは、魔力供給というダンジョンから得られる恩恵を受けられないというのに、まるで魔力供給を受けて、常に万全な状態を維持しているかのようだ。

 さすがにこれは偶然ややせ我慢が理由という訳では無いだろう。何か、あるはずだ。探索者たちの有利になるような何かが。そう考えた私は、改めて探索者たちの行動を注意深く観察した。すると、ややあって少し気になることを発見したのだ。

 それは探索者たちが複製体たちとの戦闘を終えた直後の事。倒されたことでその場に溶け消えていく複製体の身体から、探索者たちに向けて魔力が流れていた。

 探索者たちが倒した複製体から流れた魔力を吸収している? それはほんの僅かな魔力であり、時間も一瞬。スキルレベルが十に至った『魔力感知』で、意識的に注意深く観察していなければ、きっと気づけなかっただろう。しかし、確かに解けた複製体の魔力は探索者たちの身体へと吸収されていった。その魔力の動きは、ダンジョンの魔力供給とよく似ている。だとしたら、それが齎す効果も同じと考えるべきだろう。

 これは複製体を倒したものは漏れなく魔力を吸収しているのか? それとも魔物であれば等しく、倒した複製体から魔力を吸収している? もしくは、今回の探索者だけが自発的に行っていることか?


 現状で確かめられるのは、病魔の森の常連たちも同じように魔力を吸収しているかどうかだろう。ダンジョンにコボルトの探索者たちが侵入してきた直後は、警戒してダンジョンに近づいてこなかった病魔の森の常連たちだったが、それから一日が経つ頃には、次第にダンジョンへ侵入してくるようになった。特に毎日のようにダンジョンへ通っていた魔物たちは、もういつもと同じように探索を行っている。

 私は一時的に副思考へ探索者たちの観察を交代すると、主思考で常連たちの戦闘を観察してみた。本当は探索者たちから意識を逸らしたくなかったのだが、この精密な知覚処理は、さすがに主思考で無いと難しい。

 私は意識の大部分を『魔力感知』に集中して、魔物たちの戦闘を観察する。

 すると、僅かにだが、複製体を倒した魔物たちの魔力が増えているような気がした。だが、本当に僅かな差だ。一体、何が違うのだろう。

 私は必ずそこに何かがあるはずだ、と信じて、『魔力感知』を発動させ続けた。

 その結果、確かに倒れた複製体から常連の魔物たちへ、魔力が流れる様を観察することに成功したのだ。


 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『魔力精査LV1』を獲得しました〉


 気が付けば、そんな文字が意識の中に浮いていた。このスキルは、高位の魔物たちが持っているのを確認したことがある。確か地脈で調べたところによると、『魔力感知』よりも精密な魔力の知覚が出来るスキルだったか。

 いや、今はいい。それよりもその結果として分かったことの方が重要だろう。

 確かに常連の魔物たちも魔力を吸収していた。ただし、本当に少ない量だ。ともすれば、勘違いでは無いかと思える程度。そういう意味で言うと、吸収というよりも、複製体を構成していた魔力が拡散した際に、僅かな飛沫を受けているといった方が正しいくらいだ。この様子だと、恐らく意識的に行っている事では無いだろう。

 これを理解した上で、改めてコボルトの探索者たちを観察してみた所、どうやら彼らは半ば意識的に魔力を吸収しているということが分かった。さすがにそれが、完全な意識の上でのことなのか、それとも経験から殆ど無意識的に行っていることなのかまでは、分からなかったけれど。

 それにこのコボルトの探索者が行っている魔力の吸収にしても、ダンジョンが行う魔力供給と比べれば、それは僅かなものに過ぎない。しかも、常に魔力が供給されている訳でも無かった。故に、これだけで全てを補えるという訳では無いだろう。だからこそ、そこを少ない食事や休憩で補っているのではないか。それに加えて、この探索者たちが私のダンジョンの探索に慣れてきたことも一役買っているはずだ。消費する体力や精神力が少なければ少ない程、回復に必要とする力も減っていくだろうから。


 そう考えてみると、この複製体からの魔力の吸収という行為だけで、探索者たちが延々とダンジョンを探索するということは無いだろう。今は消費と吸収のバランスが奇跡的に取れているからこそ、こんなに断続的に探索が行えているのだ。もしも、このバランスを崩すような戦いがあれば、探索者たちもさすがにダンジョンから脱出せざるを得なくなるだろう。

 果たして、第一階層の守護者はそれを成すことが出来るのだろうか?



 第一階層から第二階層へと降りる階段の設置された小部屋。そこは現在、ダンジョンコアの機能の一つにより配置された守護者たちが守っている。

 この守護者は、ダンジョンの機能で一から作られた複製体とは違い、通常の魔物たちをダンジョンの機能で強化した私の配下たちだ。当然、自らの意思を持ち、思考して戦う為、複製体たちとは比べ物にならないほど、複雑な戦闘が行える。さらにその力はダンジョンコアの機能により大幅に強化されており、その上で複製体たちと同じように、戦闘で倒されたとしても、時間の経過によりダンジョンの魔力で復活することが出来るのだ。

 まさに守護者と呼ぶに相応しき不死身の強さをもって、次の階層へ続く階段を守っている。

 ただ、それほどの力を持つには、厳しい代償も存在する。まず、守護者として配置した魔物たちは、その小部屋から出ることが出来ない。さらに、一度守護者という存在になった魔物は、もう守護者を止めることが出来なくなる。つまり、守護者となった配下は、私と同じようにダンジョンという地へ縛り付けられてしまうのだ。

 まあしかし、今のところ守護者となった配下たちから、その事について不満のようなものは出ていない。私が召喚した魔物ということもあるのだろうが、恐らく魔力供給によって満たされた状態が維持されているというのが大きいだろうと思っている。


 さて、そんな第一階層の階段部屋に守護者として配置されているのは、五匹のゴブリンたちだ。より正確に言うのであれば、まずは守護者の中心となる正面からの戦闘が得意なゴブリンリーダー。それから近接戦闘を専門に鍛えてきた三体のゴブリンファイター。最後に暗闇での弓の扱いを得意とする【闇夜の射手】の称号を持つゴブリン。

 Eランクのゴブリンリーダー以外は、全てがFランクの魔物だが、守護者というダンジョンコアの機能でその力は強化されており、実質的には一ランク上の実力を持つ。それに彼らは守護者となってからもスキルの鍛錬を怠っておらず、Dランクの魔物たちと比べても、遜色のない強さにまで成長している。相手がDランクの魔物たちであっても、十分に勝つ可能性はあるだろう。いよいよ、第一階層の守護者たちが真っ当に活躍する姿を確認することが出来そうだ。

 と、そこまで考えた所で、私はある疑問に思い至った。

 果たして私は、この探索者たちを倒してしまってもいいのだろうか?



 相手はダンジョンへの侵入者だ。それはつまり、ダンジョンという危険地帯に自らの意思で侵入してきているということ。ならば、そこで敗れ、死ぬことも承知の上だろう。少なくともダンジョンコアである私自身は、そう考えている。

 だが、この探索者たちはあの魔王レティシアの国の住民だ。もしも、ここで探索者たちを返り討ちにして、その行為が魔王レティシアの怒りに触れたら?

 さすがにそれは無いと思う。そもそも、恐らくダンジョン内での会話からして、この探索者たちはエルロンドの一般的な国民だ。果たして一国の王が、そんな一国民の為に、動くだろうか? 冷静に考えて、そんな可能性は無いに等しい。

 それでもそんな可能性を私が考えてしまったのは、あの時、憎悪を向けられた恐怖が心の内に残っているせいだろう。

 しかし、それを理解した今でも、この探索者たちを生かして返さないという選択肢に、未だ私は恐れの様なものを感じている。

 何故、探索者たちはこのコボルトたちだけしか来ないのか? 私はそれが気になっている?

 仮定の話というものは、考えれば考える程に増えていく。なにせ、それを確定させるための情報が、圧倒的に足りていないのだから。

 しかし、この予感は重要な気がする。ただの考え過ぎという可能性だって十分にあるけれど。わざわざ、ここで確実に殺す必要は無い、か。


 守護者を設置した部屋には、ダンジョンコアの機能により、ある設定が追加されている。それは、守護者の生存と連動して閉ざされる扉の存在だ。小部屋への入り口と、次の階層へ繋がる階段の手前。そこに守護者を倒さなければ、開かない扉が設置されている。小部屋の入り口に設置された扉は、守護者に戦いを挑んだ侵入者を逃がさないために。階段の手前に設置された扉は、守護者を無視して先へ進ませないために存在していた。

 ところでこの二つの扉だが、私の方で設定を弄ることが出来る。例えば、侵入者が守護者と戦っている最中にも、入り口の扉は閉じないようにしておいたり。


 私は探索者たちが守護者の待つ階段部屋へ入る前に、入り口に設置された扉の自動開閉機能を切っておいた。これで、部屋の扉は戦闘中も開いたままだ。

 この探索者たちが戦闘で不利を感じたら、いつでも途中で逃げることが出来る。


 うん、これでいい。

 さらに一応、守護者たちにも伝えておけば、大丈夫だろう。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ