鬼と会長は密談をし『あの日』を実現しようともくろむ〜
鬼隠しが始まって数十分が経過していた。
もうあたりは闇が空をつつみ、風が草木をなびかせ祭りの始まりを歓迎する。
風は運動場をかけまわる。
だがその風は何かをよけるように進んでいった。
「お前・・・いつまでそこに立っている気だ?」
指令台から降りた与実がふと楓に気づき声をかける。
だが楓はそれを聞こえていないかのように無視をした。
風が楓の髪をなびかせる。
だが風は止み、この空間に沈黙がやってきた。
しばらく2人の会話は途絶える。
だが、楓は突然ニヤリと笑って答えた。
「もう一日目にちょっと『殺しすぎちゃった』みたいだからね」
与実はそれを聞いて少しため息をつく。
「お前・・・一日目に何人殺したか覚えてるか?」
楓は何も言わずに首を振った。
「どちらにしろそのナイフは替えたほうがよくないか・・・?」
与実は楓の右手に持っていたナイフをにらんで言う。
楓は右手を上げて、ナイフを空に溶け込ませた。
だがナイフの色はこの暗闇で分かるほど赤く、血に染まっていた。
しばらく楓がナイフをあげているとそれにはむかうように雲が晴れ月が姿を現した。
ナイフは月の光を浴びて楓からは影となり、血の色を隠す。
楓は少しそれを不満そうに感じたのか手を下ろした。
そしてゆっくりと返答をする。
「まだ大丈夫。三日目で変えるよ・・・」
楓はそう小声で言うと突然首をひねらせ与実を見た。
与実は驚いて身構える。
「何分経った・・・?」
楓が与実にたずねた。
与実は少しとまどいながら時計を見る。
少し与実が黙り込んだ。
「鬼隠し開始してから・・・30分ピッタリ経った」
与実がそう言ったとたん楓は突然学校の建物へ走り出す。
「キミもオレを楽しませてくれよ?」
楓はそういい残すと与実の視界から闇へ消えた。
与実はその殺す宣告をうけて息をのむ。
だがふと自信をとりもどした。
「しょせんはマネ事に過ぎなかろうて・・・」
与実はそう一人でつぶやくと楓はまったく逆方向へ歩き始めた。
楓は不吉にニヤリと笑いながら一人、一人、丁寧に生徒を殺していくのだった。