未来編
倒壊した城は宝物庫の財宝を売り払い資金となり、縮小して再建された。
王は代理としてフェニックスを立てることになった、王族が誰も居なくなり伯爵の位にあった彼ならば発言力も多少はあるだろうとダモンが指名した。
そのダモンに仕返しの意味を込めてフェニックスは彼を騎士団長に指名したが、満更でもない顔をし了承した彼にまた一杯食わされたと悔しがっていた。
空席となった一番部隊長にはこの騒ぎを知らなかったスタンジアが選ばれ、部隊を引き連れ帰還した時には崩壊した城を目撃し最高責任者であるフェニックスを問い詰めたのであった。
今城の名は国を滅亡へと誘った大犯罪者として後世に残され、その者を崇拝する者は即刻牢獄行となった。
あの時今城を止めようと立ち上がった勇者達も復興のために精を出している。
一人は忙しいダモンやスタンジアに変わって剣術を新兵たちに教え込み。
一人はフェニックスに資金が足りないと頭を下げられ、鍛えられた鍛冶の技術で幾つもの作品を作り売ることで資金源として貢献し。
一人は食料の増産を命令され効率のよい育成方法を広げるために各地を転々とし。
一人は学会に自分の考えた技術が認められ博士の称号と子爵の地位を与えられ、城の設計と街の整備改善へ特に力を注いだ。
そして一人は城に残り代理であるフェニックスの秘書ととなり国の未来を作り、もう一人も未来のために剣を捧げるのであった。
人が復興し城が復興し国が復興した頃、俺はサヤと共に旅に出た。
目的は様々だ、持て余した力を人のために使うのもいいだろうし、故郷で両親に会い報告するつもりもあった。
が、その前にあいつに会っていかなければならないか。
北方の山に登りダンジョンの入り口にある魔法陣に乗ると、目の前には体勢は変わらないが笑みを浮かべた魔王がいた。
「ほう其方が我が騎士が見初めた婚約者か」
「オリ君、この大きい人、誰?」
「魔王だ、俺よりも強い。闇の世界の支配者」
「え!?オリ君より!?」
サヤは驚いていた、その大きさにも強さにも。
当り前だ、俺よりも強いということは、いよいよ天界にしか対抗できるものが居ないということになるのだからな。
「やけに嬉しそうじゃないか?」
「当り前のことよ。其方に感化され我は再び天界に戦いを挑んだ。するとどうだろうか、慢心し弱くなった神共に出会ったのだ。そして全部の神をボコボコし全能神が言ったのだ”悪かった”と、それを更にボコボコにして戻ってきたのだ」
「めちゃくちゃだな?」
「其方もめちゃくちゃにしたのではないか?」
「まぁそうだな」
魔王は心の憂いが晴れたように清々しい顔で俺と語り合った。
その後
「だが全力を出し、今はもう力が残っておらん。余は眠りに就くことにする」
「俺達はここには残らないぞ?」
「分かっておる、自由に世界を旅するがいい。装備も返さなくてよいぞ!なんなら全部持っていくがよい、この時代では在りえんほど強い武具だろうからな」
「まぁいいさ。俺は人間界最強の騎士だからな、自分の女くらい何があっても守るさ」
「それでこそ余の騎士である、ではそろそろ別れだ」
「ああ、ありがとう、アンタのお陰だ」
「フッ・・・・・・」
魔王は安らぎを得た。
闇は晴れ、温かな光で満たされていく。
彼の体は崩れ魂が天へと昇っていき、そこで3つの光と合わると更なる高みへと消えていったのだ。
「・・・俺達も行くか」
「うん!」
それを見納めサヤに手を取り彼女の笑顔と共にまた今日の一歩を踏み出したのだ。
完。