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ラミアの独り言 ---「気がついたらラミアに」サイド・ストーリー ---  作者: 並矢 美樹


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子育て担当はどうだろうか

 今回の戦いは、私たちの完勝で終わるだろう。

 結果は見えていて、どれだけ戦いの犠牲者を減らすことが出来るかを考えているのが実情だ。

 そんな風に甘く見て、油断をするのが最も良くないと自分を戒めているのだけど、ディフィーとどれだけ検討を重ねても、それ以外の結論は見えてこない。

 戦う前に、既に勝っている状態だ。


 でも、これは私やディフィーの功績ではない。

 私たちは、この戦いというよりも、もっと大きい一連の戦いの中で、目立ちはするけど本当はもう付け足しのような戦いで、少し助力が出来ただけのことだ。


 ゴブの巣の掃討戦が終わった時に、王国の中央で幅を利かせている貴族と対立してしまうのは予想の範囲内だった。

 それだから、その直後から王国の貴族たちの軍との戦いを想定して、ヴェスター領ではミーリア様をトップにして、それに備える体制を着々と構築していった。

 もちろん軍事面のミーリア様だけでなく、さまざまな分野において、領内を発展させることが急務で、アルフさん以下、みんな必死に働いてきた。

 それに亡くなった軍務卿の思惑だとか、王家の問題とかか絡んで複雑化してしまったのだけど、軍務卿亡き後もエルマー侯爵が主導しての王国の中枢の勢力争いは、貴族連合自身の内部での失敗なんかが相次ぎ、ほぼ決するような状態になった。


 彼らの残存ゴブに対する対応策が、まずは一番の失策だったと私は思う。

 ゴブへの対処は古くはヴェスター家と隣のシルヴィーさんの実家だった伯爵家に、ほぼ丸投げされていたり、最近では今の三子爵家に押し付けられたりしていて、実情をあまり知らなかったことが理由かもしれないが、大失敗だろう。

 私たちはミーリア様の命令の下、元は逃げたゴブが増えたのを殲滅することを若手や、実戦経験の少ない者の訓練の場としたのだが、彼らはゴブとの戦いでの兵力損耗を嫌って、戦いを極力避ける方向に舵を切った。


 結局それが降格貴族たちの崩壊という形で、兵力を失うだけでなく、多数の自派閥からの離脱を生んでしまった。

 降格貴族たちの騒ぎが、戦いにならないで終わりを迎えてしまった時点で、次の王になるのはという政権争いは、実質的には終わったと考えて良いと私は思う。


 ミーリア様は、まだ油断なく辺境伯軍の強化をしていたけど、私とディフィーはその時点で、懸念していた戦いは起こらない可能性が高まったと判断していた。

 もちろんそう考えてはいても、ミーリア様の指示に変化はなかったので、私たちも戦いに備えて準備を怠りはしなかった。


 この戦いが起こる直前の時点で、一番懸念される状況は、反現国王派の貴族たちが王都で国王陛下以下を人質のように扱って、権力奪取をすることだった。

 ま、これは昔から懸念されていて、そのためにヴェスター領と王都を繋ぐ街道の整備を、軍務卿から命じられたりしていたのだけど、この懸念への対処だけは、本当に困った問題だった。

 それでも最近はもう外堀までは完全に埋まっているような状況だったので、権力闘争も次の段階として、条件闘争みたいなことになるのかと思っていた。


 そこにまさか、騙し討ちの形で、若いカドス子爵が祖父に唆されて、キースたちを手にかけるなんて、完全に想像外のことだった。


 その知らせを聞いた時、キースたちを失ったという悲しみとショック、そして完全に想定外の事態に、私もディフィーも即座の手を思い浮かばなかった。

 私たち二人は少しの間、放心状態だったのだ。


 ところがアレクは即座に動いた。

 全てを放り出して、自分は王都へと即座に向かったのだった、全力で。

 そして王都では、デイヴも即座に動いた。


 その結果として、王太子殿下は摂政王太子として、反現国王派に知られることなく、このラミウィン領にやって来た。

 摂政になっていたのは、エルマー侯爵の働きだと思うけど、王太子殿下を争いが表面化する前に、知られることなくこちらに連れて来れたのは、確実に二人の功績だ。

 この功績に比べれば、私たちの貢献なんて些細なことだと思う。


 この王太子殿下を迎えることが出来た時点で、私は今回の争いの勝利が確定したと思った。

 キースたちのことが無ければ、私たちは言い方は悪いが、常に人質を取られているような状況で、政争を戦うことを強いられていたろう。

 勝敗は、こうならなくてもこちら側に有利な形になっただろうが、完全決着とはならず、敵方の影響もまだまだ長く残ったことだろう。

 敵方の戦略も、現状を考えて現実路線として、最近はそちらにシフトし始めていた気がする。


 それを先代カドス子爵夫人の父である、前伯爵が、孫の現カドス子爵を唆して事件を起こしてしまったことは、彼らにとっても大きな誤算だっただろう。

 そのお陰に、王太子に忠誠を誓うかどうかの踏み絵をさせられるような、表面化した対立構造になってしまったのだ。

 バカなことをしたものだと、私は思う。


 それにしても、アレクもデイヴも、音を抑えて泣くことが出来ないほど、キースたちの死を悲しんでいたのに、その行為をして良い、本当に少しの余裕の時間が出来るまで、二人とも心に蓋をして、ほとんど態度に表すことなく、今の状況で最善のことをすることのみに集中していた。

 私は二人の心の中を、苦しさ、辛さを思うと、震えるだけだった。


 二人だけじゃないけど、そんな悲しみの上に、今の状況がある訳で、私は参謀としては、望外の有利な状況で、とことん利用しなければと考えてしまう。

 それは参謀としては当然の態度・思考だと思うのだが、それでも私はそんなことを、キースたちの死をとことん利用しようと考える自分が嫌でしょうがない。

 参謀として、最善を尽くさなければと考える自分も本当の自分だけど、そんなことを考える自分が嫌な自分も本当の自分なのだ。


 でもまあ、今回の戦いが終われば、もう私やディフィーが戦いのための参謀として必要とされることはないのではないかと思う。

 逃げられてしまったゴブとの戦いは、まだまだこれからも続くだろう。 でも、その戦いはミーリア様たちはもちろん、私たちもその最前線に立つことはないと思う。


 そうしたら、参謀をしなくても良くなったら、私は何をしようか。

 アレクは摂政補佐官に任命されてしまったから、きっとアルフさんと共にこれからは王国の中枢で働くことになるのだろう。


 他の貴族との関わりとかは、やはりそこはリーダー、いや正妻のナーリアの役だろう。 私はあまりそういうのはしたくないし。


 サーブはこれからも、辺境伯軍全体の訓練教官をするのだろうなぁ。


 レンスは、なんだかんだ言ってはいても、イクス様を手伝う形で、学校関連に進んでいくことになるだろう。 昔は私以上に喋らなかったのに、今では教壇に一番立っていて、先生と呼ばれるのが一番普通になっているのだものなぁ。 昔から考えるとびっくりだよ。


 アンも変わらずに、ハキと共に経済担当を続けることになるだろうけど、なんだかもっと重い立場になりそうな感じだな。 きっと、肩書きとかはそんなに変わらないままで居ようとするのだけど、気がつけばアルフさんの妹とか、誰も逆らえないとか、どんどん周りに、勝手に重要人物に仕立て上げていかれてしまうんじゃないかな。 これはちょっと見ていると面白そうだ。


 モエギシュウメは、きっとシロシュウメ様の後を継いで、ハーピーの今後に関わっていくのだろう。 正直、種族特性もあって、今ラミアはどんどん数を増やしていて、このままいけば絶滅は免れるだろう、と考えられるところまで来ている気がする。 だけどハーピーは、元々ラミアに比べると若い世代が少なかったこともあり、まだまだ完全に絶滅しかねない危機的状況が続いている。 だから、それをどうにかするために、モエギシュウメはウスベニメと一緒にこれからも色々と働かなくてはならないだろう。


 そして私と共に参謀のディフィーは、どうするのかなと思うのだけど、私はレンスと同じように教壇に立つことになるのではないかと思う。 ただ、レンスはイクス様を継ぐ形で教育行政にまで、教壇に立つ傍ら関わると思うけど、ディフィーはそうではなく、研究者となって、戦術論の教科書かなんか、そんな物を書きそうな感じ。 私と違って、話もちゃんと出来るから、もちろん教壇にも立つだろうけど。

 あ、レンスも父親に倣って、本も書くかも知れないな。


 で、私はどうしよう。

 ワーリアたちは「何でも屋」なんて自嘲していたけど、私こそが得意なことのない、なんでもそれなりにしかこなせない何でも屋なんだよなぁ。

 みんな忙しそうだから、ラミウィン領のことを見なければいけないだろうか。 でもそれはクラウスとワーリアたちがいるし、バンジたちもいるから問題ないだろうなぁ。


 あ、そうだ、アレクは補佐官になるんで、伯爵に陞爵が決まっていた。 そうなると今の領地だけでは狭すぎるので、きっと他にも領地を与えられるだろうな。

 とすると、可能性として最も高いのは、後継者がいなくなってしまった現在宙ぶらりんのカドス領かな。

 そうするとそっちにも人手を取られることになって、やっぱりラミウィン伯爵家としての領政は見なくちゃいけなくなるかも知れないな。

 それは覚悟しておこう。


 でも、私は一番やりたいことは、全く別のこと。

 私は母親になったけど、その時から、いやその前から参謀の仕事が忙しくて、仕方がないのだけど、子育てに使える時間がとても限られていた。

 正直に言えば、これは私に限らず、ナーリアのみんなは子育てに関しては、本当にイクス様とメリーに任せきりのような形だった。

 だから、これからも私以外はそれぞれにきっと忙しいだろうから、私は子育て担当というのが良いと思う。

 参謀もやり甲斐はあったけど、子育ての方がもっとやり甲斐がある気がする。 イクス様のように、自分の子供たち以外からも母様と呼ばれるような存在にはなれないだろうけど、今まで関われなかった分を取り返すように関わっていけたら良いなと思う。


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