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ベースキャンプが出来て一ヶ月が経った。
ユウとカオがトレントを倒したのをきっかけにダンジョン化の進んだ場所の割り出しも大分進んで周辺部では他にもボス級の魔獣が出る場所が幾つか発見されている。
最近の私は洞窟拡張を理由としてカモフラージュの為に洞窟に篭っていたり、再びダンジョンの探索に出向いたりしているのだけど、今日は洞窟の家でゆっくりしていた。
ベースキャンプを使ってくれる冒険者も多くなって来たのでそろそろ新しいことを始めたいと話していたところ、ベルが来たので相談しようと思ったのだけど疲れているのかその顔色は優れない。
「近隣から少しずつ冒険者や商人が集まってきてくれたのは良いのですが、色々と問題も起きていまして」
「問題?」
「ええ、住人や元々居た冒険者と新たにやって来た冒険者や魔獣の素材目当てにやって来た商人達との揉め事が多いんです」
「あー、まあ人が増えればそういうこともあるよね」
「そうなんですよ、喧嘩騒ぎ程度なら良いのですが商人同士の話などは、私ではどうにも出来ませんし、景気が良くなってありがたいのですが警備隊や文官たちは大わらわです」
大きくため息をつくベルを労う為に、紅茶を入れとっておきのケーキを出すとベルは嬉しそうに食べはじめた。
「んー、美味しい! 甘いものはあまり得意じゃないと思っていたのですが、マイナのケーキは本当にいつも美味しいなあ。これはチーズですか?」
「レアチーズケーキだよ。近くの村で色々と乳製品を作っているところがあったから作ってみたんだ。お店で買うと高いし、ちょっと甘すぎて私の好みじゃなくてさ」
「塩は豊富なんですが、砂糖は高級品ですからね」
この世界、甘いものを食べる文化はそれなりにあるんだけどよほど大きな都市でなければスイーツの専門店なんてものはなく、屋台のお菓子か高級な料理店という極端な選択肢しかない上、高級菓子は基本的にガッツリ甘いものが好まれるらしくて、私には甘すぎた。
なので最近はちょこちょこ自分でお菓子やらケーキやらを作っては知り合いへの手土産にしているんだけど、ベルは実に美味しそうに食べてくれるので嬉しいね。
「あのー」
「ん? なに?」
ベルに最近作ったお菓子で気に入ったものを聞いていると遠慮がちにユウが手を上げた。
「あの、なんで私達がここにいるのでございましょうか?」
緊張しているのか尻尾をピンと伸ばしているユウの言葉遣いが可笑しいし、普段以上に無口なカオは挙動不審にベルをチラチラ見ている。
「なんでも何も2人は元々いたでしょ?」
「いやあのそうじゃなくて、なんでフラウベル様と同席させていただいているのでございましょうか?」
「うん、とりあえず落ち着こうね? もっと普通に話して良いと思うよ」
「ええ、普段通りに話してくださってかまいませんから」
「いやあの、そういう分けにもいかないのではないかと」
元々はユウとカオと一緒にお茶をしていたらベルが来たので入ってもらったんだけど、そうかそこまで緊張するのか。
そう考えると確かにベルと話していると他の人たちが声をかけて来ることってほとんど無いな。
ベルは一緒にホックスの街を歩いているといろんな人に声をかけているからあまり気にしていなかったのだけど、まあ王女さまだものね。
「ユウさんとカオさんの活躍は私も聞いていますので、ぜひ一度お話してみたいと思っていたんです。ダメですか?」
「いえいえいえ、ダメなんてことはないんですけど……ちょっと、マイナ! 助けてよ!?」
こういった反応に慣れているのかベルは落ち着いたものだ。
対照的にユウはどうしたら良いのか分からないらしく小声で私に助けを求めて来るけど、同じテーブルで話しているんだからベルにも聞こえていると思うよ?
「まあ、緊張するなとはいわないけどこれから顔を合わせることも増えるだろうし、早く慣れてね?」
「そんなー」
狐耳を伏せて情けない声を出すユウについ笑ってしまうと恨みがましい目で見られた。
カオは自分は無関係とばかりにお茶を飲んでいるけど、もう中身入ってないからね?
ベルもケーキを食べ終えたのでお茶を入れ直した。
「それで相談なんだけど」
「ああ、そうでしたね? なにか新しいことを始めたいとか?」
「そうなんだ、ちょっと食堂を始めたいんだけどさ……」
私がこの世界に来てから3ヶ月、今のところ私なりのダンジョン運営は順調だ。
大陸西北部がそろそろ寒くなってきたので、雪が降って動けなくなる前にいろいろやっておきたいところなのだけど、世界は私を中心に動いているわけではない。
この直後に隣国であるフォリート帝国で内乱が勃発、ホックス王国にも避難民が押し寄せることになるのだった。
うーん、やっぱり私の知っている通りにいくことばかりじゃないね。
遅くなりました上に短いです。
申し訳ない。
再び書き溜められたら更新しますので、少々お待ちください。




