覚悟を決めて
「高ランクっていうからどんなもんかと思ったらDランクかよ。前のと一つしか変わらないぞ?」
「……まあ見ればわかるよ」
呆れるようにアキトは言った。
「そういえばまだBランクしかいないって聞いたけど、なんで今1番強いやつがB扱いなんだ?」
結城が質問するとすかさずエルンが喋り出した。
「それはランクは『危険度』を基に決まってるからです」
「危険度?」
「はい。個体としての強さもそうですが、繁殖速度、破壊速度、転移速度などさまざまな要素からなる『危険度』を基準にしてるんです。E、Dは『局所的バグ』
、Cは『感染危機』、Bは『システム占領』、Aは『パンデミック』、Sは『サーバー喰らい』みたいな感じです」
「『サーバー喰らい』…」
結城は思わず息を呑んだ。
「まあそんなウイルス出て来ないと思いますけどね。取り敢えず作ってるだけみたいな」
エルンは半信半疑な顔でそう口にした。
「まあそうか」
エルンの言葉に結城が再び表情を和らげる。
「ついたよ」
細長い螺旋階段を登り終えた先には真っ白な壁に覆われた大きな空間が広がっていた。その壁にはいくつもの絵画や彫刻が描かれていた。
「大聖堂と言ったところか」
結城がそう喋ると、続いてアキトが口を開いた。
「ここはゲームの中。ゲームの中だとウイルスとの戦いも一味違うんだ」
「違うって何が…っ!」
結城が質問しようとしたその瞬間、結城の横を歩いていた聖職者?が殴りかかってきた。結城はなんとか身を捻り拳を躱す。
「危ねえ!なんでこいつらが攻撃してくんだよ!」
走って逃げる結城にアキトがゆっくり着いてくる。
「まさにそれだ。ここではゲーム内のキャラクターがウイルスに操られる。僕たちはそれと戦うんだ」
驚く結城とは対照的にアキトは冷静にそう答える。
「…じゃあつまりこいつらをやればいいってことか」
そう言い終わると共に結城は拳を握りしめる。
「エルン、やるぞ」
「はい!**『身体能力操作…」
「待て!」
エルンの詠唱を遮るようにアキトが叫んだ。
「えっ」
「こんなモブに力を使ってだめだ。仮にもこれはDランク依頼、こんなのに力を使ってたら最後まで持たない」
「って言っても俺らはこれ以外何も…」
困惑する結城にアキトは小さな刀を渡す。
「これは…」
「見ての通り刀だ。これで奴の首を切れ」
「首!?そんなことできるわけないだろ!」
刀を受け取った結城の右手が震える。
「何を気にする?人を殺そうが所詮ただのゲームだ」
アキトの口調は落ち着いていた。
(そうだ、おかしいのは俺なんだ。命をかけてここにきてるのに何言ってるんだ俺は)
「…やるよ」
結城は刀を持つ右手を見つめてそう答えた。
「なら早くやりなよ。もうそこまで来てるよ」
その言葉を聞いて目をやると、殴りかかってきた聖職者はもうそこまで来ていた。
結城は刀を強く握りしめる。
「来い!聖職者!」
口ではそう言ったものの手は震えている。
躊躇う結城に再び聖職者が殴りかかる。
「結城!何してる!斬れ!」
「っ……」
結城はなんとかガードを固める。
(痛くない…いや…)
殴られたはずだった。だが結城の体に痛みはなかった。
結城が目を開けるとそこにいたのは、アキトだった。
横を見ると先ほどの聖職者が首から血を流し倒れていた。
「アキト…なんで…」
「僕たちはパーティメンバーだ。それに今君に死なれると僕が困る」
アキトは冷静にそう口にする。
対して結城は笑顔を浮かべていた。
「ありがとう。助かったよ」
「っ…別に、僕のためにやっただけだ。次は助けない」
顔を逸らすアキト。
そんなアキトに結城は
「あぁ、次こそ任せてくれ!」
と気合いの入った返事を返した。
♯ーーー
突如爆発音のような大きな音が大聖堂に鳴り響いた。
「なんだ!」
すかさず結城とエルンは体勢を整える。
そんな中アキトは冷静に天井を見上げて口にした。
「来たよ…怪物がね」




