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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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番外編 一年後の夏祭り

Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


番外編


一年後の夏祭り


前書き


一年。


経った。


時計は。


止まらなかった。


誰も。


消えなかった。


誰も。


呼ばれなかった。


それでも。


夏は。


また。


来た。


⸻


八月十五日 午後二時十七分


海鳴町駅


暑い。


悠。


駅。


出た瞬間。


思う。


「……帰りたい。」


スマートフォン。


震える。


圭介。


『着いた?』


悠。


『今』


『遅い』


『まだ二時だぞ』


『もうみんないる』


悠。


足。


止める。


『祭り夜だろ』


すぐ。


返る。


『知らん』


悠。


「……。」


一年。


経っても。


こいつ。


変わらない。


もう一通。


紗季。


『圭介の「みんないる」は嘘』


悠。


笑う。


『やっぱり』


『今いるの圭介と私だけ』


続けて。


『あと圭介がもう焼きそば食べてる』


悠。


『まだ屋台始まったばっかだろ』


圭介。


割り込む。


『祭りは始まった瞬間から祭り』


悠。


『意味分からん』


スマートフォン。


しまう。


駅前。


歩く。


去年。


ここへ来た時。


探していた。


人。


名前。


記憶。


今年。


探す必要。


ない。


待っている。


場所。


分かっている。


⸻


午後二時三十一分


白石屋前


圭介。


焼きそば。


食べている。


悠。


「本当に。」


「食ってる。」


圭介。


「遅い。」


紗季。


店先。


「まだ。」


「集合時間でも。」


「ないから。」


圭介。


容器。


見せる。


「これ。」


「七百円。」


悠。


「去年も。」


「七百円じゃなかった?」


圭介。


止まる。


「……。」


紗季。


「覚えてないの?」


圭介。


「いや。」


「去年。」


「物価。」


「高いって。」


「驚いたのは。」


「覚えてる。」


悠。


「じゃ。」


「同じだろ。」


圭介。


「でも。」


「高い。」


紗季。


「そこは。」


「変わらないんだ。」


圭介。


「十二年。」


「飛んだ人間は。」


「物価に。」


「敏感なんだよ。」


悠。


「一年。」


「暮らしただろ。」


圭介。


「まだ。」


「慣れない。」


紗季。


「スマホは?」


圭介。


「慣れた。」


悠。


「この前。」


「電話の切り方。」


「店員に聞いたって。」


圭介。


「それ。」


「半年前!」


「半年で。」


「威張るな。」


紗季。


笑う。


店。


奥。


美佐江。


声。


「紗季ー!」


「はーい!」


紗季。


振り返る。


「ちょっと。」


「手伝ってくる。」


圭介。


「俺も。」


「何か。」


「食べ――」


紗季。


「手伝うなら。」


「いいよ。」


圭介。


「……。」


悠。


「行け。」


圭介。


「何で。」


「俺まで。」


「働くんだよ。」


紗季。


「焼きそば代。」


「稼いで。」


「七百円。」


圭介。


「根に。」


「持ってる?」


悠。


「行け。」


圭介。


店。


入る。


一年。


前。


十二年ぶりに。


母親。


会った少年。


今。


祭りの。


手伝い。


文句。


言っている。


それだけで。


悠。


少し。


笑う。


⸻


午後三時〇六分


花屋。


春人。


白い花。


一本。


買う。


店主。


美和。


「今年も?」


春人。


「はい。」


美和。


包む。


「去年は。」


「渡せた?」


春人。


少し。


笑う。


「渡しました。」


「十二年。」


「遅れたけど。」


美和。


「今年は。」


春人。


花。


受け取る。


「普通に。」


「墓参りです。」


美和。


「そっか。」


春人。


「はい。」


普通に。


花。


買う。


それが。


できるように。


なった。


⸻


午後三時四十八分


海鳴町・墓地


橘依子。


メアリー・アンダーソン。


二つ。


墓。


春人。


白い花。


供える。


「今年も。」


「祭り。」


「始まってる。」


風。


吹く。


返事。


ない。


春人。


それを。


待たない。


「圭介。」


「もう。」


「焼きそば。」


「食べたらしい。」


少し。


笑う。


「早すぎるやろ。」


静か。


蝉。


鳴く。


春人。


立つ。


「じゃ。」


「行ってくる。」


背中。


向ける。


足。


止めない。


⸻


午後四時十二分


商店街。


透。


新しい。


カメラ。


構える。


シャッター。


切る。


子ども。


屋台。


提灯。


店。


笑う人。


蓮。


隣。


「兄ちゃん。」


「撮りすぎ。」


透。


「そう?」


「今日。」


「もう。」


「何枚?」


透。


画面。


見る。


「二百三十八。」


「撮りすぎ。」


「デジタル。」


「だから。」


「いいだろ。」


蓮。


カメラ。


見る。


「前のは?」


透。


「家。」


「箱。」


「そっか。」


透。


また。


一枚。


撮る。


蓮。


「それ。」


「何の。」


「証拠?」


透。


止まる。


悠。


ちょうど。


後ろ。


来る。


「俺も。」


「聞こうとした。」


透。


振り返る。


「証拠じゃない。」


悠。


「じゃ。」


「何。」


透。


少し。


考える。


「インスタ。」


悠。


「お前が?」


蓮。


吹き出す。


透。


「何。」


「悪い?」


悠。


「アカウント。」


「あるの?」


透。


「ある。」


蓮。


「フォロワー。」


「四十三人。」


透。


「言うな。」


悠。


「少な。」


透。


「お前。」


「撮らんぞ。」


悠。


「別に。」


シャッター。


切れる。


悠。


「撮ってるだろ。」


透。


画面。


見る。


「今の。」


「いい。」


悠。


「消せ。」


「インスタ。」


「載せる。」


「やめろ。」


蓮。


笑う。


⸻


午後四時五十九分


久我時計店。


ヨル。


鏡。


見る。


浴衣。


着ている。


紺。


久我。


「動くな。」


ヨル。


「苦しい。」


「まだ。」


「締めとらん。」


「もう。」


「苦しい。」


「気のせいや。」


ヨル。


「去年。」


「こんなの。」


「着てない。」


久我。


「今年。」


「着たい言うたん。」


「お前やろ。」


ヨル。


「言った。」


「ほな。」


「我慢せぇ。」


ヨル。


鏡。


見る。


少し。


笑う。


「似合う?」


久我。


帯。


整える。


「まあまあ。」


ヨル。


「まあまあ。」


「一番。」


「腹立つ。」


久我。


「誰に。」


「教わった。」


「レイ。」


「やっぱり。」


⸻


午後五時二十分


神社・参道


レイ。


屋台。


前。


立っている。


悠。


「何。」


「食ってる。」


レイ。


「チョコバナナ。」


悠。


一瞬。


止まる。


レイ。


気づく。


「食う?」


悠。


「いや。」


「何。」


「別に。」


レイ。


一口。


食べる。


「メアリー。」


「好きだったっけ。」


悠。


「匂い。」


「嗅いでた。」


レイ。


「そっか。」


それだけ。


レイ。


もう一口。


「甘。」


悠。


「当たり前。」


「バナナに。」


「チョコ。」


「かけてるから。」


「説明。」


「いらない。」


悠。


笑う。


二人。


歩く。


レイ。


「今日。」


「大丈夫?」


悠。


「何が。」


「……なら。」


「いい。」


悠。


少し。


考える。


「ああ。」


「大丈夫。」


本当に。


大丈夫。


忘れた。


わけではない。


平気に。


なった。


わけでもない。


でも。


大丈夫。


それで。


十分。


⸻


午後五時四十七分


白石屋前


みんな。


集まる。


圭介。


紗季。


春人。


透。


蓮。


直哉。


ヨル。


久我。


レイ。


悠。


直哉。


去年より。


少し。


髪。


伸びている。


悠。


「久しぶり。」


直哉。


「ああ。」


圭介。


「仕事。」


「どう?」


直哉。


「普通。」


「普通?」


「普通。」


「何してんの。」


「それ。」


「今。」


「聞く?」


圭介。


「一年。」


「聞いてなかった。」


紗季。


「そういうとこ。」


「変わらないね。」


直哉。


笑う。


「いいよ。」


「あとで。」


「話す。」


ヨル。


浴衣。


見せる。


「どう?」


悠。


「似合ってる。」


ヨル。


「まあまあ?」


久我。


「おい。」


ヨル。


「まあまあは。」


「ダメ。」


レイ。


「教育。」


「成功。」


久我。


「お前か。」


全員。


笑う。


⸻


午後六時〇九分


時計台。


悠。


見る。


針。


進む。


六時十分。


誰も。


黙らない。


圭介。


「焼きそば。」


「もう一個。」


紗季。


「まだ。」


「食べるの?」


ヨル。


「私。」


「たこ焼き。」


久我。


「熱いぞ。」


ヨル。


「去年。」


「食べた。」


「火傷した。」


「学習せぇ。」


六時十一分。


透。


写真。


撮る。


六時十二分。


子ども。


走る。


六時十三分。


時計。


進む。


普通に。


悠。


もう。


見ない。


スマートフォン。


震える。


圭介。


目の前。


いる。


のに。


メッセージ。


『どこにおるん』


悠。


圭介を見る。


「お前。」


圭介。


笑う。


「一回。」


「やってみたかった。」


悠。


「母ちゃんの。」


「真似。」


「うん。」


紗季。


「しょうもな。」


圭介。


「一年越し。」


「一年。」


「温めるな。」


悠。


笑う。


去年。


同じ時間。


スマートフォン。


通知。


見ること。


怖かった。


今年。


ただ。


くだらない。


⸻


午後七時三十八分


花火。


上がる。


ヨル。


見上げる。


「去年より。」


「大きい?」


久我。


「同じや。」


圭介。


「物価は。」


「同じ。」


紗季。


「まだ。」


「言ってる。」


透。


カメラ。


構える。


花火。


撮る。


そして。


みんな。


撮る。


悠。


「また。」


「写真?」


透。


「ああ。」


「何の。」


透。


悠を見る。


「別に。」


シャッター。


悠。


笑う。


「そっか。」


⸻


午後八時四十六分


海岸。


祭り。


少し。


離れる。


音。


遠い。


去年。


ここ。


朝。


みんなで。


写真。


撮った。


透。


三脚。


立てる。


新しい。


カメラ。


固定。


圭介。


「また。」


「撮るの?」


透。


「撮る。」


紗季。


「去年も。」


「撮った。」


透。


「だから。」


「撮る。」


蓮。


「毎年?」


透。


「いいだろ。」


春人。


「何て。」


「名前。」


「付ける?」


透。


「名前?」


「去年。」


「これから行く人間の写真。」


透。


少し。


考える。


「今年は。」


みんな。


待つ。


透。


「今年の写真。」


圭介。


「普通!」


透。


「普通で。」


「いいんだよ。」


悠。


笑う。


「そうだな。」


⸻


並ぶ。


今年。


中村。


いない。


透。


セルフタイマー。


設定。


十秒。


走る。


「行くぞ!」


十。


九。


圭介。


「待って。」


八。


紗季。


「何。」


七。


圭介。


「俺。」


「端。」


六。


「知らない。」


五。


ヨル。


帽子。


今日は。


ない。


浴衣。


裾。


押さえる。


四。


透。


走る。


三。


蓮。


「兄ちゃん。」


「早く!」


二。


透。


飛び込む。


一。


圭介。


「あ。」


シャッター。


切れる。


⸻


画面。


確認。


圭介。


目。


半分。


閉じている。


紗季。


爆笑。


「最悪。」


圭介。


「撮り直し!」


透。


「これ。」


「いい。」


「よくない!」


ヨル。


笑う。


レイ。


笑う。


春人。


笑う。


直哉。


笑う。


悠。


画面。


見る。


全員。


いる。


一人。


去年より。


少ない。


でも。


悠。


そこを。


探さない。


「もう一枚。」


透。


言う。


「今度。」


「ちゃんと。」


「撮るぞ。」


圭介。


「最初から。」


「そうして。」


再び。


タイマー。


十。


九。


八。


笑い声。


続く。


⸻


午後九時十九分


みんな。


先。


歩く。


悠。


少し。


遅れる。


海。


見る。


スマートフォン。


開く。


去年。


写真。


朝の海。


真ん中。


メアリー。


白い花。


悠。


隣。


次。


今日。


写真。


メアリー。


いない。


でも。


二枚。


並べる。


どちらも。


大切。


悠。


画面。


見ながら。


小さく。


笑う。


「今年も。」


「来たよ。」


返事。


ない。


波。


音。


だけ。


悠。


スマートフォン。


しまう。


それで。


いい。


⸻


遠く。


圭介。


「悠ー!」


悠。


顔。


上げる。


「何!」


「ファミレス!」


悠。


「また!?」


紗季。


「去年も。」


「行ったでしょ!」


圭介。


「だから。」


「行くんだよ!」


悠。


「意味。」


「分からん!」


レイ。


「早く来い!」


ヨル。


「オムライス。」


悠。


一瞬。


止まる。


ヨル。


「食べたい。」


悠。


笑う。


「分かった!」


走る。


海。


背中。


向ける。


もう。


振り返らない。


⸻


午後九時四十七分


ファミリーレストラン


タッチパネル。


圭介。


睨む。


悠。


「一年。」


「経ったぞ。」


圭介。


「分かってる。」


紗季。


「貸して。」


「待て。」


「自分で。」


「やる。」


悠。


「成長。」


「見せろ。」


圭介。


画面。


押す。


注文。


完了。


圭介。


勝ち誇る。


「見た?」


悠。


「一年。」


「かかった。」


「うるさい。」


ヨル。


「オムライス。」


久我。


「もう。」


「頼んだ。」


レイ。


「チョコバナナのあとに?」


ヨル。


「別腹。」


久我。


「それも。」


「お前が。」


「教えたんか。」


レイ。


「知らない。」


笑い声。


店。


中。


響く。


悠。


窓。


外。


見る。


時計。


午後九時四十八分。


普通に。


進む。


⸻


去年。


「また明日」は。


別れの。


言葉だった。


もう。


会えない人へ。


言う。


約束だった。


今年。


圭介。


「明日。」


「何する?」


悠。


「明日?」


「昼。」


「暇?」


「仕事。」


「じゃ。」


「明後日。」


「仕事。」


「来週。」


「しつこい。」


紗季。


「でも。」


「また。」


「集まろ。」


春人。


「うん。」


蓮。


「次。」


「いつ?」


透。


「決めれば。」


「いいだろ。」


ヨル。


「明日。」


全員。


見る。


ヨル。


オムライス。


食べながら。


「明日。」


「また。」


「会えばいい。」


悠。


少し。


笑う。


「そうだな。」


去年。


あれほど。


重かった。


言葉。


今は。


ただの。


約束。


悠。


グラス。


持つ。


「じゃ。」


「また明日。」


圭介。


「明日。」


「仕事だろ。」


悠。


「雰囲気。」


「壊すな。」


全員。


笑う。


窓。


外。


夏。


夜。


時計。


進む。


明日へ。


⸻


番外編「一年後の夏祭り」

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