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【連載版】人手不足で過労の俺、異世界では”要領の良さ”を活かします。  作者: なまこ


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『なんでも屋』のアリシェラ

『人手不足で過労の俺、異世界では”要領の良さ”を活かします。』の連載版です。


面白いと思ったらブックマークや高評価で応援していただけると嬉しいです。


毎日19時に投稿を予定しています。よろしくお願いします。

黒田充くろだ みつるは、死ぬ直前にこう思っていた。

――もう、無理だ。


プロジェクトの人手は常に不足し、気づけば自分一人で五人分の仕事を回す羽目になっていた。

スケジュール調整、クライアント交渉、資料作成、トラブル対処。

全部、黒田一人。


ただし彼は要領が良かった。

人に仕事を押しつけるのではなく、“段取り”と“省力化”でなんとかしてしまうタイプだった。

だからブラックになった。


「黒田さんならできますよね?」

「黒田さんのほうが早いんで!」


そんな言葉が、彼の定時を永遠に奪った。

そして気づいた時には――過労で意識を失っていた。


「……おはよう、人間さん」


涼しげな声が聞こえ、黒田はゆっくり目を開く。

そこはオフィスでも病院でもなかった。

見知らぬ草原。


空の色は地球とは少し違い、どこか透明感がある。

そして彼の顔をのぞき込んでいたのは――

青銀の髪に琥珀色の目をした、美しい女性だった。


彼女は腰に短剣、背には大きな荷物袋を背負っている。

その姿は冒険者のようでもあり、旅商人のようでもある。


「私はアリシェラ。『なんでも屋』をやってるの」

「な、なんでも屋……?」


「依頼があれば、調査、護衛、買い付け、薬の調合まで何でもね。あなたは……転移者?」

黒田は思わず苦笑した。

「……そうなんですかね」


アリシェラはあっさりと状況を受け入れた。

「そっか。じゃあ働く場所、探してるんだよね?」

「え、いや……なんか、急に……」

「どう? うちで働かない? 人手不足なんだよね」

黒田は反射的に固まった。


人手不足――

その言葉は、彼にとって最も恐ろしい呪文だった。


「……あの、ブラックじゃないですか?」

「ブラックって何?」

「理不尽な労働環境のことで……徹夜とか、休日なしとか……」


アリシェラは大笑いした。


「しないよ!私が死んじゃうし、あなたも死んじゃうでしょ?」

「……まあ、そうですよね」


異世界の常識は、案外まともらしい。


歩きながら、アリシェラは言った。

「私は雑に仕事を請けすぎてさ。効率とか苦手で、いつもてんてこ舞いなんだよ」

黒田の耳がぴくりと動く。


効率が苦手。

段取りができない。


――それ、俺の最も得意なジャンルじゃないか?


「例えば今日もそう。薬草採取と荷物の受け取りと護衛依頼が重なって……もう無理!」

黒田は自然と口を開いていた。

「優先度を整理して、効率的に回れば――3つとも今日中に終わりますよ」


「えっ!? 本当に!?」

「たぶん、この世界の地理を把握できれば、もっと上手くできます」

アリシェラは目を輝かせた。


「あなた……すごいね? 魔法使い?」

「違います。ただの……元ブラック企業勤めですよ」


「ブラック、って怖い言葉だけど……あなたは便利すぎない?」

便利すぎたからこそ、ブラックだった。

だが――異世界なら、その“便利さ”が武器になる。


「黒田、試しにうちで働いてみない?働き次第では報酬も用意するわ」

差し出されたアリシェラの手は、なぜか温かかった。


黒田は迷わず握り返した。

「よろしくお願いします。アリシェラさん」


こうして黒田充は、

異世界の“なんでも屋”として第二の人生を歩み始めた。

――今度は、要領の良さを武器に、ブラックじゃない世界で生きていくために。


まずは情報収集だ。

任務の内容、この世界の地理、そして貴重品の価値。


――1時間あれば問題ない。

黒田はそう判断すると、アリシェラの店へ向かう道すがら、自然な調子で質問を投げ始めた。

「薬草の採取地はどのあたりですか? 町からどれくらい離れています?」

「えっと、北の丘。歩いて30分かな」


「荷物の受け取りは?」

「南の商隊。今日は昼過ぎに町へ到着予定」


「護衛依頼の集合場所は?」

「西門。夕方までには来てくれってさ」


黒田の頭の中で、地図が組み上がっていく。

北――薬草採取

南――商隊の荷物

西――護衛依頼


(バラバラだけど……動線を最適化すれば全部こなせる)

しかも、この世界では魔物が出るリスクがあるため、普通の冒険者は単純に距離だけで動くわけではない。


だが黒田は、効率化のプロだった。

「アリシェラさん、まずは薬草を取りに行きませんか?」

「北の? でも、商隊が来ちゃうよ?」


「大丈夫です。薬草を集めたら、そのまま丘を南側へ降りるルートを通って町へ戻れば時間ロスが最小になります。商隊の到着にちょうど良く間に合います」


「そんなルートあったっけ?」

「……ありますよね?」


「……あるね。使ったことないけど!」

アリシェラは目を丸くした。

(使ったことないのかよ……)


しかし黒田はもう計算を終えていた。

「で、荷物の受け取りが終わったら、そのまま西門へ。距離が近いし、夕方まで余裕があります。護衛の依頼主を待たせる必要もありません」

「……え、それだけで一日分の依頼が全部片付くの?」


「むしろ午後は空きますね」

「空くの!? いつも夜までかかったんだけど!?」

アリシェラの驚愕は本物だった。


黒田は、懐かしい感覚を覚える。

(段取りさえ整えば、仕事は軽くなる。俺がブラックだったのは……できるから任されすぎただけだ)

だが異世界では、同じ能力が“価値”になる。

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