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続・紫竜の花嫁 ~檸檬の章~  作者: 秋桜
第1章 母の種族
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解放軍の責任者

「戻ってきませんね?」


同じころ、豊は陸地から湖に浮かぶ白鳥の建物を見ていた。

竜礼だけはそばに残っている。



まさか龍陽が飛んで行ってしまうとは!?



龍景が追いかけていき、上空で捕まえたと思ったのに、結局、龍陽とともに白鳥の建物に降りていってしまった。

解放軍と遭遇してしまったのだろうか?



いやこの燃え方なら解放軍はすでに撤退した後だと思いたい・・・



「あ!人族たちが船で出てきたわよ!」



竜礼はそう言って湖を指さす。

豊が見ると、遠いので乗っている人まではよく見えないが船が白鳥の建物から出ていくのは見えた。



「・・・」


「無視?てっきり龍景が皆殺しにしたと思ったのに、よかったわね?若様が奥様に似て慈悲深くて」


「は?」


竜礼は何を言ってるんだ?



「さっき銃声が聞こえたでしょ?解放軍が若様を攻撃したのよ。」



「んなバカな!?」


豊は驚きのあまり大声が出た。


紫竜とつながりがあることは、解放軍の司令官や幹部しか知らないが、紫竜とは対立するなとの命令は末端にまで届いているはずだ。



「私はこんな嘘はつかないわよ~

もしかしたら龍景が責任者の首だけで許したのかもね~」



「せ、責任者!?」


豊は青くなった。


あそこに誘拐された司令官がいるのかは分からないが、おそらく指揮官として幹部クラスの誰かは来ているはずだ。



「そんな顔しないでよ~私たちは人族なり解放軍を優遇することはできないの~」


「分かっております。攻撃が事実なら・・・」


豊は頭では理解できるが感情が追い付かない。

解放軍の仲間を紫竜から守るのも豊の役割なのに、解放軍からの攻撃なら庇いようがない。



かつて象の獣人が紫竜族長の息子の暗殺に失敗した時には、関与した象はもちろん、関与していなかった象族長一族の処刑により象族はけじめをつけたらしい。

それと同じことを人がする訳には・・・



「んふふ~若様のご希望があれば族長には黙っててあげる。」


竜礼が意外なことを言い出した。



「人族の優遇はしないのでしょう?」


「うん。だから豊との取引よ~あれは解放軍の仕業でしょ?あそこの白鳥を始末した理由は何?」


「私は解放軍から聞いておりませんよ。」


「聞かなくても分かるんでしょ?

これと関係あるわよね?」


竜礼はそう言って懐から金のネックレスを取り出した。


三角のペンダントトップがついている。

豊はこのペンダントを知っている。


少し前に紫竜からの依頼でこのペンダントトップに入っていた粉の解析をしたのだ。



「もうそこまでご存知でしたか。解放軍はその毒の根絶も目的にしているので、おそらくあそこは白鳥の拠点だったのでしょう。」


豊は白状した。



「なんで知らないふりしたの?私たちは解放軍の邪魔はしないわよ?」


「分かっております。・・・あの毒が粉末化されて悪用されていることを芙蓉さんには知られたくないんですよ。」


「なんで?族長の奥様を利用した方が解放軍は楽じゃない?」


竜礼は遠慮なく尋ねてくる。



「僕も司令官も芙蓉さんを危険に巻き込みたくないんですよ。まだ白鳥の妻もいますしね。」


「んふふ~昔の族長みたいなこと言ってる!?」


竜礼は笑いながら意外なことを言う。



「族長のお考えは今は違うのですか?」



豊の知る限り、龍希は芙蓉さんにたいしてはかなりの過保護だ。



「うん。白鳥が粉にして悪用してることは族長からもう知らせたの。」



「はあ!?なんで!?」


豊は怒りが沸いてきた。



「こわ~い。豊は芙蓉ちゃんのことになるとむきになるんだから~嫉妬しちゃう。

芙蓉ちゃんは人気者だからね~私たち一族が隠してることを芙蓉ちゃんに暴露して信頼を得ようとする悪いやつらがいるのよ~

それに、芙蓉ちゃんは賢いからね。怒りで自分の立場を忘れて暴走したりはしないわ~」



「それはそうですけど・・・芙蓉さんはショックをうけますよね?」


「そうね~でもショックを受けるから知りたくないって性格じゃないのよ!?族長の奥様は。」



竜礼の言うことは分からなくもないけど、豊は芙蓉さんには知られたくなかった。

知ったら彼女は何かしようと思うだろうけど、彼女はしがらみのある立場から自由には動けない。



「若様はそこまで分かっててここに?」


「違うわ~若様の目的はトモエよ。粉の毒を若様は知らないの。まだ子どもだからね。豊も言わないでね?」


「分かりました。」


どうやら龍陽は知らないらしい。

龍希と芙蓉さんの教育方針なら、豊が介入すべきじゃない。



「あ!若様たちが帰ってきたわね!」


竜礼は今度は空を指さした。

豊が見ると、2人が飛んで戻ってくるけど、龍景は誰かを抱いている。



「・・・え!?司令官!?」


龍陽たちが近づいてきて、ようやく豊は顔が見えた。

龍景が抱えているのは司令官だ。



「豊、心配かけたわね。」


龍景たちが着地して、司令官は解放された。



「え?なぜ紫竜たちと!?」


「実はね・・・」


司令官はこれまでのことを話してくれたが、まさか誘拐ではなかったとは!?


だけど、それよりも解放軍の仲間が龍陽を攻撃したのは事実らしい。


龍陽は気にしてないものの、元々、北の貴族の依頼で司令官の捜索を手伝いに来たという建前、司令官を()()()()連れてきたそうだ。



「も~人族を保護してきたなら仕方ないですわね~本家まで連れて行きましょう。」



竜礼は嬉しそうだが、何を企んでる!?



というか司令官が龍陽に毒の粉をばらしたみたいだけどいいのかな?


いや、それも含めて竜礼たちは龍希に報告するつもりだろう。

司令官を連れて帰ろうとしているのはそのためだろうけど、豊にはどうにもできない。


北才を通じて司令官の捜索を紫竜に頼んだことが、結果的に司令官を危険に晒してしまった。



「ごめんね、豊。あなたや北才まで巻き込んでしまって。」


司令官はそう言うけど、


「いえ、解放軍が動いているのは分かっていたんです。私が余計なことを・・・」


「ううん。ここが片付いたら豊にも協力をお願いするつもりだったの。」


「そうでしたか。」


豊は察した。

司令官は明言しないけど、豊にも協力を頼むということは人・・・おそらく貴族が関与しているのだ。


豊にも心当たりがあった。

毒の粉が仕込まれた金のネックレス・・・夏に北才の娘を誘拐しようとした刺客は、北要という北の貴族から金のネックレスをもらって所持していたのだ。


その時には毒の粉なんて知らなかったが、紫竜から毒の粉の解析依頼があった際、北要の金のネックレスを思い出した。

だけど、なんと金のネックレスは保管庫から盗み出された後だった。


いつ盗まれたのかは分からない。

保管庫にはほかにも北要から押収した宝物を入れていたが、盗み出されたのはネックレスだけだったので、間違いなく毒の粉の関係者による犯行だ。


北才の周辺に窃盗を手引きした間者もいるかもしれない。



「行くぞ。馬車に乗れ。」


龍景が促してきたので、豊は司令官とともに紫竜の馬車に乗った。


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