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続・紫竜の花嫁 ~檸檬の章~  作者: 秋桜
第1章 母の種族
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失くなった宝石?

疾風は呼ばれてすぐにやって来たけど、


「荒らされたのは侍女見習い6人の部屋です。見習いは当日、侍女や執事から仕事をふられるので、前日には誰がどの仕事を担当するのか決まっておりません。」


疾風の回答で、龍陽の説は否定された。



「じゃあ使用人とは無関係か。やはり別の犯人か?」


「あ!そういえば、その侍女見習いの中に、荒らされた応接室と客間の両方に出入りした者が1人だけおります。」


疾風が意外なことを言い出した。



「・・・念のため、その使用人を調べよう。連れてこい。」


「はい。」


龍算に命じられて疾風は出ていき、しばらくして連れてきたのは



「あれ?スミレ!?」



なんと侍女見習いのスミレだ。


そういえば、白鳥妻の窃盗事件の時に、ユリが客間に招き入れていた。

でも、


「スミレは龍空の時、応接室には居なかったよ。」


龍陽は覚えている。



「はい。若様たちがあの応接室をお使いになる前に掃除したのがこのスミレと別の侍女なのです。」


疾風が教えてくれた。



「そうなの?」


龍陽が尋ねると、スミレは黙って頷いた。



「一応きくが、お前の部屋や応接室、この客間を荒らした犯人に心当たりはあるか?」


龍算が尋ねると、スミレは首を横にふった。



「スミレを狙った犯行とは思えないけど、ねえ、スミレ?スミレの部屋もこんな感じで荒らされてたの?」


「はい。ソファーはありませんが、引き出しは同じように床に落とされてました。

ベッドはシーツがはがされて、枕はあのクッションみたいに切られていました。」


スミレの部屋もかなり荒らされたらしい。



「使用人の部屋が荒らされるってよくあることなの?」


「いえ、私は聞いたことがありません。見習いの部屋にお金なんてないのに、枕の中まで探すなんて・・・」


スミレは首をかしげてそう言うけど、


「え?どういうこと?枕?お金?」


龍陽には分からない。



「え?えーと、お金や宝石を隠してると思ったから、枕の中まで探したのかと・・・」


「犯人はお金を探してクッションも切り裂いたってこと?」


「私はそうかと思いましたが、違いましたか?」


スミレを困らせてしまった。



「ううん。僕らには犯人の考えは予想もつかないんだ。引き出しは、中身を物色するためだと思ったけど、でも応接室の引き出しは無事だったんだよね。なんでか予想できる?」


「え?応接室の引き出しにはお金を入れる者はいないからかと。掃除をする使用人なら何が入っているか知っていますので。」


スミレは龍陽の知りたいことをストレートに教えてくれる。

やはりその辺の使用人より知能が高い。



「だが、金目的なら壺や装飾品を盗めばいいだろう?枕やクッションの中まで探す必要はないんじゃないか?」


今度は龍算がスミレに尋ねる。



「使用人の服のポケットは小さいので壺や装飾品を隠して運べません。それに本家の物を盗んでも、族長の匂いがついているので、どこでも売れず、すぐに足がついて殺されると聞いています。」


「なるほどな。だが、小銭を探すためにわざわざこんなことをするか?」


龍算の言うとおりだ。

金目当てとしては大胆すぎない!?



「・・・小銭ではなく小さな宝石とか・・・」


スミレは自信なさげに小声で呟いた。


「え?宝石?スミレ、詳しく教えて。

参考になるから。」


龍陽は優しく問いかけた。



「侍女の中には小さな宝石やアクセサリーを枕の中に隠している者がいるそうです。

あと、昔奥様のイヤリングとかペンダントがテーブルクロスに引っ掛かっていたり、ソファーの隙間に落ちていた話は聞いたことがあります。」



「うーん、応接室や客間が荒らされたのは、白鳥妻やユリの忘れ物を期待してってこと?」


「まあ、ありえなくはないですね。本家で妻の宝飾品がなくなることは昔からあります。

たいていは使用人が見つけて届けてきますが、横領するやつもいるでしょうね。」


龍算が同意する。



「あ、あの、若様?

白鳥の奥様の宝石は見つかりましたか?」



「え?宝石?ペンダントに宝石はなかったよ。」


龍陽はスミレの質問の意味が分からない。


「はい。私が拾った時にはすでにありませんでした。」


「え?ペンダントに宝石がついてたの?」


「え?違うのですか?」


スミレは困った顔になってしまった。



「待て待て。お前が見つけた時には宝石はなかったんだろ?なんで宝石付きのペンダントだと思うのだ?」


龍算がうまく質問してくれた。



「ペンダントトップの中央に何もついていなかったので、元々は宝石がはまっていたのかと。

白鳥の奥様のアクセサリーにはどれも宝石がついているのではないのですか?」


スミレは自信がなさそうだけど、確かに龍空に見せてもらったペンダントは、三角形で真ん中には三角形の穴が開いていた。


そういうデザインかと思っていたけど、あの真ん中に宝石がはまっていても不思議はない。



「真ん中の宝石が失くなっていたら龍空の妻は今も大騒ぎしているはずです。」


龍算は否定的だけど、


「でもスミレみたいに、宝石がついていたと思って探してる可能性はない?」


龍陽はスミレの話は参考になると思った。



「ならば龍空夫婦が使った応接室が荒らされたことは説明がつきますが、それなら犯人は朝顔亭の客間ではなく蜻蛉亭の客間を探すのでは?」


「そ、そうだね。」


龍算の言うとおりだ。



「・・・私が宝石を盗んだと思われているのでしょうか?」


スミレは不安げだ。


「え?どうしてそう思うの?」


「私はあの後、朝顔亭の客間にお邪魔しましたし、6部屋の中で私の部屋が一番荒らされていたそうで・・・」


「そうなの?」


龍陽は疾風に尋ねた。



「はい。枕まで切り裂かれていたのはこのスミレの部屋だけです。他の見習いの部屋には小銭を入れた巾着もあったそうですが、手付かずでした。」



「私は宝石なんて知りません。奥様の宝石を横領なんてしてません。」


スミレは不安そうだけど、悪意は出ていない。



「スミレが盗みに無関係なことは、龍空夫婦は理解してくれたから大丈夫だよ。」


「そ、そうですか?よかったです。」


龍陽の言葉にスミレはほっとしている。



「もうこの侍女見習いは下がらせてよいですか?」


疾風が尋ねてきた。



「うーん。使用人の仕業なら、スミレがいた方がいいんだよね。今日1日借りてもいい?」


「若様のご要望とあらば。私はもうよろしいですか?」


「うん。」


龍陽は疾風を解放してやった。



「若様、次はどうされますか?」


龍算が尋ねてきた。



「まだスミレにききたいことがあるんだ。ねえ、あの鹿の侍女?はどうして妻のペンダントを盗ろうとしたの?盗まず届け出る使用人もいるんだよね?」


「え?私にも分かりません。白鳥の侍女が探しにきた時に届け出たら、妻から褒美がもらえたでしょうに。妻の物を盗むなんてそんな恐ろしいこと・・・」


スミレにも分からないらしい。



「白鳥妻は宝石のことは何も言ってなかった?」


「はい。リリー、鹿の侍女はすぐに殺されましたし、妻は私がペンダントを拾ったことはご存知ないので・・・」


「・・・ん?」


龍陽は何かひっかかる。 



「若様?」


「スミレは言ってないの?自分がペンダントを拾ったこと。」


「え?若様にはご説明しました。」


「そうじゃなくて、白鳥妻にだよ。」


「言ってないです。」


「え?じゃあなんで白鳥妻はスミレを盗人の仲間と思って殺そうとしたの?」


「私が盗みに関係ないことは、龍空様が嘘をついてないと認めて下さいました。

龍空様は悪さをしていない使用人は殺せないと仰ったのに、なぜか妻は私まで殺せと。」


「あれ?」


スミレから悪意は出ていないので嘘はついてない。


でも、先日、白鳥妻からきいた話と辻褄があわない。



「若様?龍空の妻と何か関係が?」


龍算は不思議そうだ。



「白鳥妻は、スミレがペンダントを拾ったから盗人の仲間と思って殺そうとしたって言ってたの。嘘はなかった。

でも、白鳥妻はどうやってスミレが拾ったことを知ったんだろう?」


「妻からもう一度、事情をききますか?もう蜻蛉亭に戻りましたが・・・」


「その前に、妻のペンダントのこと調べられない?宝石がついていたのかどうかも。」


「妻の担当は竜波(りゅうなみ)です。たぶん本家にいるかと。」


「行こう。スミレもついておいで。」



龍陽は竜波の部屋に向かった。


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