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境界線の復讐者~勇者の子に復讐を~  作者: 春間 来善


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第9話 知らせ side A

ベクト「どういうことだ!?バウンド!!」


レギス「父さん、流石に今回のは俺も無理があると思います。」


バウンド「?何をそう怒っている?そんなに隊長の座が大事だったか?」


ベクト「そっちじゃない!魔界への進軍だ!!そんなことして許されるとおもってるのか?!」


リムの転移魔法で、豪邸に戻ってすぐレギスとベクトは書斎に足を運んだ。


バウンド「…その許しというのは誰のだ?」


父の目が曇る。いつもの優しい目はそこには無かった。


バウンド「誰が許さないんだ?ベクト?」


ベクト「え?そ、それは…」


バウンド「まさか、魔族が許さないとでもいうつもりじゃないだろうな。」


父の語気は明らかに強くなっている。


ベクト「…」


バウンド「はぁ。じゃあ逆に聞こう。奴ら魔族の人間界への進軍を人間が許したか?」


ベクト「…ッチ。」


バウンド「だんまりか。レギス。お前はどう思う?」


レギス「…いいえ。許せるわけがありません。」


バウンド「だよな。で、魔族はどうした?許されないから人間界を襲うのをやめよう!となったか?」


レギス「…」


黙ることしかできなかった。


バウンド「ここで防壁を建てることは事態の解決にはならない。それはただの保留、後回しだ。それをして苦労するのは後の世代だ。」


レギス「…で、ですが。」


バウンド「魔王が別世界にいる今を絶好の好機ととらえず、いつを好機とするんだ。」


レギス「それは、復讐を生むだけではないんですか…?」


レギスは顔を伏せたまま声を発した。父の目を見るのが怖かった。


バウンド「レギス…復讐を生まないために、魔族を一掃するんだ。お前は勇者になりたいんじゃないのか?」


父の声は低く重かった。


レギス「…」


バウンド「もういい。2人ともマージの元に行け、次の作戦の指揮は前回同様マージがとる。」


ベクト「…ッチ。」


ベクトは後頭部を掻きながら部屋を後にする。


レギスはバウンドに向けて一礼をし、書斎を飛び出す。


目には涙が浮かんでいた。


*


マージ「前回同様の方法では長時間の次元転移魔法のゲート開通は不可能です。そこで、今回は魔法使いであるリムにもレギスに同行してもらい、両方からゲートを広げることで、魔力の供給を安定させます。」


リムは眼鏡をくいッと上に挙げながら自慢げな顔をしている。


マージ「ベクト。あなたはそのリムの護衛です。リムが死ねば帰って来れないものと考えなさい。」


ベクトの顔にもうあの時の怒りは無い。


任された仕事は全うする。大人の覚悟がそこにはあった。


マージ「今回少量の魔力でゲートを開通し続けるために、3人が向こうの世界に侵入後、魔力の出力を下げ、ゲートを小さくします。行き来するときだけ、魔力を注ぎ広げるということです。リム。気を付けてね。あなたがミスすればゲートが閉じ一生帰って来れなくなるかもしれないわ。」


魔王の子討伐作戦。


今彼は何をしているだろうか。


願わくは対話できる状態であることを信じている。


マージ「決行は明日以降。魔王が空間に攻撃してくれる前提の作戦なのは変わらないわ。今回は不意打ちが通用しない上、いつゲートが開くかもわからない!長期戦を覚悟しておくように。以上!」


*


『コンコン』


レギス「…ベクトさん。」


ベクト「…レギスか、なんだ?」


お酒を飲んでいたのだろう。顔を真っ赤にしてベクトは客室の椅子に深く腰掛けていた。


レギス「お話があります。」


ベクト「んあ?」


レギス「魔王の子が良い奴かもしれないんです。」


ベクト「…はあ?」


驚いたように真っ赤な顔をレギスに向ける。


レギス「一回目の襲撃の際。奴らの家は何というか、普通でした。ただの家だったんです。」


ベクト「…もしそうだとして、どうするつもりだ?」


レギス「…俺は彼と対話がしたい。話し合いで解決したい。」


レギスの顔は真剣だった。目には曇りが無かった。


ベクト「そりゃ無理だ。」


そんな彼をベクトは両断する。


レギス「それは相手が魔族だからですか?いい魔族もいるそう教えてくれたのは――」


ベクト「あー違う違う。」


大きく顔の前で手を振る。酔っぱらっているためか呂律が上手く回っていないようだった。


レギス「じゃあなんで!!」


ベクト「何でって、そりゃお前、そいつの母ちゃん殺してんだろ?無理だろ。そんな相手と対話なんて。」


ベクトは不思議そうな顔をしてレギスを見つめる。


レギス「…で、でも、あの時は俺も知らなかったし、ちゃんと話せば復讐は無くなるはず。」


ベクト「綺麗ごとだな。」


ベクトは椅子から立ち上がる。


ベクト「お前が今やろうとしてることをなんていうか教えてやろうか?卑怯っていうんだ。」


レギスのそばまで顔を寄せる。


レギス「ひ、卑怯?」


ベクト「殺すだけ殺しておいて、俺は知らなかった、こんな復讐の連鎖はやめよう!ってか?いいか?復讐を止める権利があるのは当事者だけだ。復讐される側にその権利はない。」


頭をポンポンと叩きベッドに向かう。


レギス「そ、そうかもしれないけど、俺はやってみたいんです!」


ベクト「そうかいそうかい。どうしてもやりたいってんなら、やって無残に殺されればいい。相手は復讐達成でスッキリして終わり。後はレギスの仇を討つなんて考えをする奴が現れないことを願うんだな。」


ベッドに倒れ込む。


ベクト「酒が回ってきた。もう寝る。」


数秒後には寝息だけが聞こえていた。


レギスはベクトの部屋を後にする。


卑怯かもしれない。でも少しだけでも可能性があるのなら…


レギスの足音は何かにすがるように廊下に響いた。

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