↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/79

第1話 名前を捨てた隻眼の少年

1992年 アメリカ合衆国 5月某日 


【ロスアンゼルス暴動】


『人種差別を巡り、民衆が暴動を起こす。

死者63名、負傷者2383名、逮捕者1万2千名

建物の倒壊1100件 火災3600件 4500件の店舗で略奪、打ち壊し』


同年1992年 日本 10月某日 


【某政令指令都市で暴動】


『苛め、DVの報復行為により1名のもうすぐ14歳になる少年が暴動を起こす。

死者32名、負傷者5538名、逮捕者 未成年の男子中学生1名のみ

建物の倒壊1508件、火災282件 6件の店舗で略奪(暴力団組織、自衛隊基地含む)』


彼は片眼を奪われた。陰湿な周囲の人間達により。そして全ての罪を周囲の大人達に被せられそうになった。彼は死刑を望んだが、世間がそれを許さなかった。その判決は、特別少年院禁固1年という措置だった。最後の裁判で、


「少年の行いは死罪に値するが、それ以上に周囲の人間達に反省の色が見られず、少年をこのまま死罪にする事は出来ない。彼らは互いに責任を押し付け合い、少年1人に今尚罪を擦り付けている。実際に彼は右眼を失明し、障害を持つ身体となった。よって特別少年院禁固1年という形で当人には反省の余地あり。また、服役中の間、彼の家庭、学校、地域に長期間の聞き取り調査、厳重注意に処す。もし、これらに不具合が見られた場合、彼らを処罰する。」


というものだった。この判決を機に、カタメの育った街は「死んだ街」となった。


 少年は直ちに特別少年院に移送される。警察官に囲まれた少年は、更に抑圧的なメディアの餌食となった。カメラを向けられ、何も知らない大人達の書きたいように書かれる餌食となった。少年はこの出来事から後年


「カメラを向けられると激しい憎悪を覚える。」


と話す。少年は特別少年院入所時から「カタメ」と呼ばれるようになる。だが、少年は特に気にしていない。片眼なのは見ての通りだし、何より実名で呼ばれるのを嫌った。少年院では「カタメ」の他「139番」と呼ばれる。


 以降、このストーリーではしばらく彼をカタメと呼ぶ。カタメは食事を摂ろうとしない。しばし貧血で倒れる。監守数名が押さえつけて食べさせようとすると、カタメは食べ物ではなく、監守の指を食いちぎろうとする。頭が悪い訳ではない。カタメは死のうとしている。結局点滴で栄養補給し、元から痩せていた身体が更に痩せ細っていった。道具や紐を渡せばそれで死のうとするため、作業は任せられない。舌を噛みちぎろうとする事もある。カタメは同じ囚人達から「ゾンビ」と呼ばれるようになる。面会には家族や弁護士が来るが会おうとしない。彼らを信用していないからである。家族が来ると暴れ出す。弁護士が来ると唾を吐き立ち去る。そうこうしている間に刑期の1年が過ぎていった。


 刑期が過ぎようとしている時、会った事もない人物がカタメを訪ねてきた。保護観察処分中に世話をする事になる男性


【浪川龍司】

年齢は30代後半。彼は横浜・八景島でラーメン店を営んでいる。


保護観察処分中はそこで住み、働くよう勧められる。だが、カタメは別口で他の人物とも会って面会している。彼は暴力団で、カタメをスカウトしに来ていた。カタメはその話に乗ろうとしており、出所1週間程は食事も摂るようになった。


(どうせ死ぬんだから。)


と思っていた。


 出所後、龍司が迎えに来る


「こっち!こっち!」


と笑顔で迎えるが、カタメは聞き入れず、暴力団の待つ公園へ走っていく。龍司はそっと追いかける。しばらくして公園に辿り着いたカタメは、迎えに来ていた暴力団組員30名程と共にベンツに乗ろうとした瞬間、龍司が声をかけた。


「悪いな、そいつは俺が引き取る事になってんだ。手引いてくんねーか?」


何だこいつ?と構成員の1人が龍司に因縁を付けたが、パンチ1発、僅か1秒で倒される。ドスを抜いた構成員達は、一斉に龍司に襲いかかったが、5分と経たないうちに全員地面に転がっていた。更に龍司は、路上駐車していたベンツ10台を両手で掴み、次々と逆さに引っくり返していった。その後、警察に通報した龍司はカタメに


「行くぞ。」


と声をかけ、その場を去った。カタメはもう付いていくしか選択肢はなかったのである。


 しばらく車に揺られる。その間龍司は気さくに話しかけるがカタメはうつむき何も喋らない。6時間くらい乗っていただろうか?龍司の家に到着した。


 「なみや」という名のラーメン屋。今日のような日曜日は定休日だが、連日行列の出来るラーメン屋として有名らしい。待っていたのは「女将さん」こと千春、そして、テディベアを片手に大事に抱いている4歳くらいの女の子「菜っちゃん」こと菜月。


 カタメは店に着き、部屋をあてがわれる。今日はゆっくりするようにと言われていた。夜になり、菜月が夕ご飯が出来たと呼びに来る。カタメはいつも通り「いらねー。」と一言。次に千春が呼びに行くも「いらねー。」とだけ呟く。夜が更けていく。カタメはこれまでの過去を振り返っていた。


 カタメは幼少期、母を亡くした。その後、仕事が多忙な父が働いている間、2人の姉達と親戚中をたらい回しにされる。特に祖母は陰険で、食事を出す以外は口も利いてくれない。学校から帰った姉2人に来る日も来る日も苛められていた。そして父が帰ると意味もわからず鉄拳をお見舞いされた。


「泣くんじゃねー!」

「情けねー!」

「男らしくねー!」

「みっともねー!」

「ギャーギャーうるせー!」


等と。そしてそんな家族から否定的な言葉を次々と浴びせられて育った。カタメの自信は日に日に削がれ、塞ぎ込むような少年に育っていった。それは小学校に上がっても変わらず、友達など1人も出来なかった。上記のような言葉をクラスメイトや教師に毎日散々浴びせられた。


 そして中学2年の秋、事件は起こった。クラスの不良達に身体を押さえつけられ、ダーツの矢で右眼を刺され、失明した。クラスは沈黙と微笑が折り混ざっていた。救急車が呼ばれ、一時騒然とした。搬送先の病院でカタメは思った。


「俺がやらなきゃ絶対いつかやられる。」


 退院すると、カタメは一時行方不明となった。数日後、カタメは学校の授業中にふと現れた。全身に大量の兵器を持ちながら。ナイフにドス、日本刀、手榴弾に拳銃、ダイナマイトに鈍器。カタメが教室に入ると、クラスの連中は一斉にカタメを見る。教師が声をかけようとした瞬間、カタメは修羅の扉を開く・・・


《ザシュッ!グググ・・・ヒュン!ドン!ゴロン・・・》


教室手前に座っていた不良1人の首をドスで刎ね、足下に転がす。


《ガシャン!ガシャン!バリン!ガシャン》


《ドーン!ドーンドサッ!ドン》


勢いに乗って窓際に座っていた者達を、窓などお構いなく3階から次々と放り投げる。


《グサッ!ドヒュッ!ビュッ!》


《ザクッ!ググググッ!ビチャッ!ドロンビチャッ・・・》


止めに入った教師と学級委員の腹を刺し、そして苛めの当事者達を捕まえマウントを取り、彼らのはらわたをかっさばいていき、その内臓を教室にばら撒きまくった。教室では悲鳴が飛び交う。だが、カタメの復讐はこれからである。


《ピーン。ひょい。・・・・・ボカーン!!!!!!》


教室に手榴弾を投げ、爆発させる。


《斬!斬!斬!斬!斬!》


学校全体が騒然とする中、カタメは残りの今まで苛めてきた者達を無言で捕まえ、日本刀で首を次々と刎ねていった。


カタメはその日姿を消すが、これからが本番である。


《シュボッ。ボッ!メラメラメラ!ボワアッ!ゴオッ!ボワアッ!》


家族全員が帰宅したのを見計らい、家を放火する。ここをスタートにあちこちに放火する。大きな森があるこの街はまるごと放火され、山火事となった。逃げる街の住人達、追い回すカタメ、そうする内に朝となり、避難した住民と共に全校集会が行われた。カタメはこれを狙っていた。皆が一度に集まる機会を伺っていたのだ。全員が体育館に集合する。


《シュッ。ポイ・・・・ボンッ!ドガーン!!!!!》


校長が話している間、カタメはダイナマイトの束を体育館に放り投げた。体育館は大爆発を起こす。カタメを苛め抜いてきた息のある残りの者達はここで成敗される。次第に警察、消防、自衛隊、暴力団が続々と学校に来る。自衛隊と暴力団は、カタメが退院した夜、武器を盗まれていた。報復に来たのである。噴煙と血で汚れ、真っ赤に染まったこの町の生き残った住民達は、一斉にカタメを悪者と認識した。炎に燃える街と火災と鮮血で赤く染まったシルエットに佇む無表情で街と住民を睨み付けるカタメ。


そして3日後、カタメは逮捕された。


 カタメは犯行時、一言も言葉を発しなかった。その代わり、録音テープを大量に持っていた。それらには、カタメが退院した夜から犯行に及んでいる間に周囲の人間達が発した言葉が録音されていた。警察はそれを押収し、捜査をやり直す。


クラスメイトが

『こいつ弱いから苛めてて楽しいわ。』


クラスの女生徒が

『キモいから寄ってこないで!』


先輩や後輩達が

『こんな変な奴いないよね。』


教師達が

『こいつなにやってもダメだから。』


街の住民達が

『無口で何考えてるかわからねー。』


そして家族達が

『情けない!それでも同じ血が流れてんのか?』


そこには、いつものようにカタメを否定する言葉が沢山収まっていた。誰1人として、カタメの味方になる者等いなかった。大人達でさえも。そして、犯行後も同様に。カタメは決してやりたくてやっているのではなかった。自分がやらなきゃいつか殺されるからと主張した。カタメなりの防衛本能から犯行に及んだのだ。結果、特別少年院禁固1年という措置だった。この判決を聞いたカタメは思った。

 

「今すぐ死にたい・・・」


カタメは薄暗い夜に部屋で絶望に暮れていた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。