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その19の2


 何も起きない休日が終わると、また平日がやって来た。



 いつものように、レグはドライバーの業務をこなした。



 放課後、オーウェイル邸の猫小屋で、レイスがレグに話しかけてきた。



「リカールさま。少しお時間をよろしいですか?」



「良いですけど」



「何事ですか?」



 アムが疑問を見せた。



「お仕事の話です。


 退屈な話になると思いますので、


 アムさまは先に戻っていてください」



「わかりました」



 アムは素直に、猫小屋から去っていった。



 残されたレグは、レイスと向き合った。



「それで話というのは?」



「カヤックのことです」



「カヤック……ああ。サメですね」



「舟です」



「それでそのカヤックがどうしたんですか?」



「できあがったと、業者から連絡がありました。


 受け取りついでにテストをしたいのですが、


 付き合っていただけますか?」



「お安い御用です。行きましょう」



 二人で専門店に向かうことになった。



 今まで働いていたシルクの代わりに、レグはカゲトラに鞍をつけた。



「乗ってください」



 レグはそう言って、二人乗りの鞍の前方を示した。



「私は……」



「遠慮しないで、さあ」



「……わかりました」



 いつもはアムが座る位置に、レイスが腰をおろした。



 特注品の鞍は、スカート姿のアムでも楽に座れるようになっている。



 だがアムの軽快な制服と比べて、レイスのメイド服はスカートが長い。



 それで彼女は、やや居心地が悪そうなしぐさを見せた。



 そんな状況に新鮮さを感じながら、レグは手綱を手に取った。



 役目を貰えたカゲトラが、楽しげに道を駆けていった。



 レイスの指示を受け、レグたちは目当ての専門店にたどり着いた。



 レイスが店員と話をすると、すぐにカヤックが運ばれてきた。



 台にカヤックを置いて、店員がこう言った。



「素材には最高級のものを使い、


 可能な限り注文どおりに仕上げたつもりですが、


 何か問題があれば、すぐに仰ってください。


 出来る限りの対応をさせていただきます」



(最高級……ねぇ)



 細かい説明を聞き流しながら、レグはカヤックを観察した。



 何やらチカラの入った逸品らしいが、レグにはよくわからなかった。



 よく考えると、普通のカヤックもまともに見たことがない。



「はい。ありがとうございます。


 リカールさま。『収納』をお願いします」



「わかりました」



 レイスに言われて、レグはカヤックを『収納』した。



 おまけにパドルもついてきたので、それも『収納』した。



 これで今日の仕事は終わり……というわけにはいかない。



 アムをカヤックに乗せる前に、問題がないか調べる必要がある。



「どこでテストしますか?」



「近くに湖があります。そこで試してみましょう」



 カゲトラに乗って、二人は湖に移動した。



 いつもそうなのか、それとも時間帯のせいか、湖の周囲は静かだった。


 

 レグはスキルでカヤックを取り出し、水面に浮かべてみた。



 とりあえず、浮かぶだけなら問題がないようだ。



 もちろん、それでオーケーとするわけにはいかない。



 レグは試しに、カヤックに乗ってみることにした。



 特注品のカヤックは、アムの体に合うように作られているのか。



 レグには少し狭いように感じられた。



「俺にはちょっと小さいですね。


 ナーガエールさん、お願いします」



 レグはカヤックから降りた。



「はい」



 入れ替わりにレイスが、特注カヤックの座席に座った。



 どうやらサイズは問題なさそうだ。



 レグはスキルでパドルを取り出し、レイスへと差し出した。



 パドルを受け取ったレイスは、少々の気合を見せた。



 気楽にやれば良いと思うが、彼女にとっては大切なことなのだろう。



「それでは行きます」



 レイスはパドルを使い始めた。



 舟ひとつ漕ぐにしても、レイスの所作は上品に見えた。



 何をするにも品性というものは現れるものだな。



 レグは感心し、レイスの動きを見守った。



 あまり遠出はせず、レイスはレグの所に戻ってきた。



 席に座ったまま、レイスが話しかけてきた。



「普通に使用する分には問題なさそうですね。


 次は、アムさまが使うときと同様に、


 ベルトをしっかりと締めてください」



「はい」



 レグは複数あるベルトをきっちりと締め、レイスを拘束していった。



「苦しくないですか?」



「だいじょうぶですが……。


 思っていたより怖く感じますね」



「安心してください。


 何かあったら俺たちが助けますから」



 レグはそう言って、カゲトラの頭を撫でた。



 カゲトラは胸を張って答えた。



「みゃあ」



「頼りにしています」



 レイスは笑みを浮かべ、カヤックを漕ぎ出した。



 しばらく湖面を動き回ると、彼女はレグの所に戻ってきた。



「ぎこちなくはありますが、


 進めなくはないですね」



「テストはここまでですか?」



 レグが尋ねると、レイスは硬い表情でこう言った。



「……いえ。最後のテストが残っています」


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