116 追跡劇の終幕
GWなので投稿。2日目です。
side 風華
「……別に、そんなこと、ないけど」
じわり、じわりと頬が熱を持っていくのが分かる。
「可愛い〜」
美華が私の頬をツンツンと突く。
「痛いって」
「大丈夫?」
「……そんなに痛くなかったけど」
「なら良かった」
いつも通りふわふわ笑う美華。
「お待たせしました。ハートパフェでございます」
ウェイトレスさんが運んできたその巨大なパフェを見て名前そのまんまじゃん……って思う。
「わぁ……すご」
食べたいと言っていた美華自身も若干引き気味だ。
だって、イラストよりか・な・り物理的にも比喩的にも甘そうだったから。美味しそうではあるんだけどね。
「どうぞごゆっくり」
そぉ〜っとカウンターの上にパフェを置くと戻って行った。
「……食べる?」
「むしろ食べる以外にどうするの?」
「だよね〜」
この巨大なパフェをどうにか私達二人の胃のなかに収めなければならない。
「……頑張ろうね?」
「え〜。風華が3分の2ぐらい食べてくれていいんだけど」
「無理だよ。半分ずつね」
というか、美華が3分の2食べてもいいぐらいだと思うんだけどなぁ。
「冬なのにアイス……」
そんな美華の呟きは聞かなかったことにしたいけど……。
「これ、アイスを食べないと他のところ、食べれなくない……?」
「風華、私、このクッキー食べていい?」
「だめ。私も食べたい」
「じゃあ半分こ」
「……それなら」
美華はなんの現実逃避か、添えてあったクッキーに手を伸ばしている。
「アイスかけたらきっとアイスも消費されるよ」
「それだとクッキーのサクサク感が……」
「何言ってんの。早くしないと溶けるよ。ドロドロになるよ。いいの?」
「う〜やだ……」
こうしてみると美華ってまだまだお子様だなって感じる。
「アイスは先に食べておくべきだって」
というか、今更だけど稜華達を追っているんだから稜華達に合わせないと置いていかれる。
「あは。ミア、何やってるんですか」
「だって……」
「ブレッザも早く食べないとアイスが溶けますよ」
……どうやら向こうも同じような状態らしい。
「稜華。あ〜ん」
紫の髪をした女性……ミアと呼ばれた人が小さく切ったパンケーキを稜華に差し出す。
「み、ミア?」
「ほら。早く。ぱんけーき、落ちちゃうわよ」
「は、はい」
曇りガラスの向こうでパクリ、と稜華がフォークに食いつく。
「……風華、どうしたの?」
……いいかな。
「美華」
「なぁに?」
「あ〜ん」
アイスをたっぷりと乗せたスプーンを美華の口の前に差し出す。
「いいの?ありがと」
ラッキー。美華がたくさんアイス食べてくれた。きっとこれで私のアイスを食べる割合はほんの少しだけ減っているだろう。
「ほら、次」
今度はホイップクリームとアイスを合わせて美華の前に。
パクリ。
ぱく。
パクッ。
見ている方が気持ちいいぐらいに食いついてくる。……餌付けしている気分だ。
「はい」
パクリ……としようとした美華。だけど、口の中は空っぽだ。
「……風華?」
「食べないの?」
「食べる」
パクリ。
だけど今回も虚しく、宙を切るだけに終わる。
「風華」
「ほら、早く食べな。アイス溶けるよ」
「分かってるって」
パクッ。
今度は問題なくしっかり食べれたみたいだ。
「はい、次」
パクリ。
はたまた、美華の口は宙を切る。
パクリ。
また。
パクリ。
また。
パクッ。
「あはは」
可愛い。
食べれないから必死に食いついてくるのが。しかも美華の手にはスプーンが握られているのに。
自分で食べれるのにわざわざ私が差し出した方しか食べないなんて。
「もうっ!いじわるしないで!」
「してないって。美華が勝手にパクパクしてるだけでしょ」
「パクパクって……魚じゃないんだけど」
まぁ、それはそうなんだけど。
「……ほら。食べな?」
「……分かってる」
むすっとした美華がスプーンに口を近づける。髪の毛がパフェにくっつかないようにして、抑えながら。
パクリ。
「あ……」
しまった。
スプーンをずらすのを一瞬遅れて美華に食べられちゃった。
「やっぱ、私にいじわるしてた」
「……そんなことないよ」
スプーンをずらして美華の反応を見てたのは間違いじゃないけど。
「私も。私もやる!」
……できるかなぁ。
美華、結構不器用っていうか大雑把なんだよね。
「はい、あ〜ん」
目の前に伸びてくるスプーン。
「えっ!?」
私はがしりと美華の手首を掴むと固定してスプーンを口に入れた。
「うん、美味しい」
アイスは冷たいけど。
「ふ、ふふ……」
「静かにしなよ」
稜華が近くにいるんだから。
「どうしたん?」
「……破壊力が強すぎる」
「そんなことないよ」
むしろ、稜華は飛華の破壊力がやばいって、めっちゃ叫んでいたけどなぁ。冬休みの初日?だっけ。姉妹での『愛してるゲーム』の時に。
「食べないの?」
「食べる」
時間がかかっちゃうから、もう流石にあ〜んはしすぎないけどね。
美華もアイスをちゃんと食べていた。
「えらいえらい」
「……子供じゃないんだけど」
「子供扱いをしたつもりないけど」
「ならいいよ」
いいんだ。
アイスをある程度食べると今度現れたのはいかにも水分を取りまくります、というスポンジ。しかも地味〜に湿っていて重そうだ。
「アイスかける?」
「重くない?」
「あんまり変わんないでしょ」
だって、アイスも冷たいし、溶けると液体になるし。
「美華、はい」
「ん、ありがと」
パクリ、と私の差し出したスプーンに食らいつく。
「時間かかっちゃうから自分のスプーンでも食べなよ」
「ふぁ〜い」
口一杯にパフェを詰め込めていてリスみたいだ。
「はい」
パクッ。
自分のスプーンで、パクッ。
美華は恐るべきスピードでパフェを胃に収めていく。
「も、ちょっと!風華も食べなよ」
……バレたか。
私が美華に食べさせていれば私の食べる量が減るんじゃないかなーっていう目論見が。
「……食べるよ?」
バレたらしょうがない。
美華が全体の半分ぐらいは食べてくれたし。この半分ぐらいは美華が食べるだろう。
つまり、私の食べる量は実質4分の1。……完璧かもしれない。
そうして巨大なパフェを食べ終わったのは稜華達がお店を出て数分後。慌ただしくお会計をし、店を出る。
「いた。いたよ」
「……美華って目がいいね」
「そんなことないと思うけど」
絶対いいでしょ。
観察眼、っていうのかなぁ。人を見つけるのが上手い。
「ほら、追うよ」
「分かってるよ」
その後の稜華達は色々な店を見て回っている。
特にミアっていう人は雑貨に興味を示しているらしく、雑貨店に入れば目を輝かせて眺めている。ブレッザはおちこちうろちょろしていて危なっかしい、というのが私の感想だ。
そして3人とも魔法の本には結構興味を持っているらしく、歴史本だったりを立ち読みしていた。
……稜華に関しては本当に読んでいるの!?っていうぐらいパラパラパラパラ読み進めていて数を稼いでいたけど。
「それじゃあ、帰りましょうか」
稜華がそういうと、3人の姿は消える。きっと、稜華お得意の転移魔法で帰ったのだろう。……どこかは、わからないけど。あの2人も一緒みたいだし、きっと家じゃない。学園でもない。……第3の、場所……?
稜華は、そこを知っているのだろうか。いや、知ったのだろう。どこかのタイミングで。
「風華、稜華達、行っちゃった」
「そうだね」
「宿行こ。私、歩いて疲れた」
「はいはい」
「風華〜」
「何?」
顔は前を向いていて、私の方を見ていない。前だけを、見ている。
「可愛い」
私の方を、振り返る。
「大好きだよ」
美華は夕日に目を向けることになって、眩しいだろうに。
「ホントだよ」
だけど、そんな眩しさも利用しているみたいで。
私はそんな美華を、すごいって思ってる。
「知ってる」
だって、ずっと一緒にいたじゃない。
「私も、美華のそういうとこ、好きだよ」
私が美華のことを1番知っているもの。
お読みくださり、ありがとうございました。




