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勇者は、後のマツリ!  作者: くるす
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第四話‐①



『勇者と一緒に魔王を倒したい方、大募集!この広い世界、貴方の力で守りたいと思いませんか?私達はそんな勇気ある仲間を募集中です!希望する方は下記の欄に名前を記入してください!!」


一日中賑わう酒場の奥。大量にある依頼表が貼られて掲示板の丁度中心に、その依頼表が他の依頼表の上から無理やり貼られていた。


「………、」

けれど名前の欄には誰の名前も書かれていない。というより誰も見向きもしない。興味がないのだ。

ただ、一人を除いて。


●●●

「で、出来た!凄い!連続十連続だよ!!」


場所は昨日と変わらず『職の街 アステリ』。賑わう中心街から少し外れた宿屋の二階にある角部屋で私は回復薬を『合成』し、成功十連続を記録した。

あまりの嬉しさに私は思わずベッドに寝転ぶリリィに話しかけた。


「昨日の夜は失敗続きで成功するのは五回に一回だったけど……段々としていくうちに成功する回数が増えていって、とうとう十連続で回復薬を合成出来る様になったよ。」

「……そー。」

「これが経験値が増えてレベルが上がったっていう事なのかな?成功した回復薬も結構な数になってきたし、そろそろ売りに出そうかな。そうすればお金も稼げるし、稼いだお金でマルサにレベルも聞けるよね?」

「……そー。」

「にしても宿屋の人も親切だよね。合成に必要な空き瓶もゴミだからって沢山譲ってくれたし、裏手にある森に行けば沢山薬草が生えてるっていう事も教えてくれたし……そのおかげで沢山『合成』する事が出来るよ。いい練習になるわ~。」

「……そー。」

「………今朝からどうしたの?ずっと暗いし、ボーっとしてるし……何かあった?」

「何か……あるに……あるに決まってるじゃないー!!」


瞬間、大声を上げながらベッドから勢いよく立ち上がるリリィ。さっきまで干からびた様にベッドに寝転んでは生返事しかしなかったのに……元気があるのかないのか分からない。


「もう…本当ありえない。ありなさすぎる…。」

「い、一体何があったの?」

「……昨日、宿屋に行く前にご飯にしようって酒場に行ったじゃない。」

「え?あぁ……そうだね。」

「その時、依頼掲示板に依頼表を貼ったじゃない。」

「依頼掲示板…依頼表……。」


リリィの言葉に私は昨日の酒場での出来事を思い出した。


●●●

『依頼表?』


賑わう酒場。そこで出された料理を食べている最中、リリィの言葉を復唱した。


『そうよ。こういう大きな街には依頼掲示板っていうのがあって……ほら、あそこ見て。』


リリィが指さす方に視線を向けると酒場の奥に大きな掲示板らしきものがあった。その掲示板には小さな紙が大量に貼られいるのが遠くから見ても確認出来る。


『「魔物を倒してほしい」「必要なアイテムを納品してほしい」「傭兵を頼みたい」とか色々な依頼を依頼表に書いて、それを掲示板に貼るの。その依頼を見た人が依頼をこなして、成功すれば依頼主から報奨金が貰えるの。』

『へぇ…そうなんだ。』

『前言ってた魔物狩りもこういう依頼をこなして、お金を貰ってるのよ。それにレベルが高ければ高い程、報奨金が高く設定された依頼をこなす事が出来るの。私もやってたわ。』

『リリィも?』

『魔物を倒してもお金にならないからね。依頼さられた魔物を倒す、経験値が稼げる、それに加えて依頼主からお金も貰える。普通に倒すより、こっちの方が得でしょ?』

『まぁ、確かにそうだね。そっちの方が得かも。』

『でしょ?…で、話を戻して……これを見てほしいんだけど。』


そう言いながら机に一枚の紙を差し出すリリィ。その白い紙に視線を移すとそこには丸文字でこう、書かれてあった。


『勇者と一緒に魔王を倒したい方、大募集!この広い世界、貴方の力で守りたいと思いませんか?私達はそんな勇気ある仲間を募集中です!希望する方は下記の欄に名前を記入してください!!』

『……これって…?』

『私が書いた依頼表よ。』

『…つ、つまり仲間が欲しいと…?』

『そりゃそうでしょ!私とマツリだけでこれからの道中、やっていけると思う!?魔術師レベル3の私とひよっこ商人のマツリだけで、やっていけると思う!?』

『そ、それは……む、難しいよね…。』

『そりゃあレベルが上がれば私とマツリだけでもやっていけると思うわ。けど世の中そんなに甘くない。仲間がいれば心強いし、何かあっても対処出来る。そう思わない!?』

『そ、そうだね。いるか、いないかで考えたら一人でも多くいてくれたら助かるかも?私はまだこの世界の事よく分かっていないし……、』

『ま、そういう訳で手っ取り早く仲間を集める為に、この依頼表をあの掲示板に貼るわ。ふふふ。勇者からの依頼表なんだから、すぐに仲間は集まる筈よ。』

『そ、そんな簡単にいく?大丈夫なの?』

『大丈夫よ!目立つ様にあの掲示板の中心に貼り付けてやるんだから。明日の朝になればきっと仲間になりたいっていう奴が現れるわ!楽しみにしてなさい!マツリ!』

『……大丈夫かなぁ…。』


●●●

そもそも勇者の話は千年毎の話で占い師であるマルサでさえ、半分冗談だと思っていた位だ。勇者からの依頼だなんて信じる人が果たしているのだろうか。

それにあんな書き出し……まるでどこぞの宗教の勧誘みたいだ。掲示板に貼る際他の依頼表を見たけど……どれも具体的な内容な上、ちゃんと報奨金の額書いてあったし……それに加えて私達が出した依頼表には報奨金の事は書かれていない。

心の底から心配だったけど……リリィのこの暗い様子から見て、恐らく……。


「…仲間、集まらなかった?」

「……名前を書いてくれたら宿屋に連絡するって酒場の主人が言ってたけど、今だに全然連絡来てないし……おかしい…おかしすぎる!!」

「そ、そりゃあ…あの内容だったらなぁ…。」

「なんでよ!?間違った事書いてないわよ!?それに勇者からの依頼なのよ!?女王からの依頼と同等レベルで凄いのよ!?なのに…何故!?わからない!ありえなさすぎる!!」

「そう言われてもなぁ……なかったんだから仕方ないでしょ?」

「なんで……なんでなのよ……。」


ふにゃあと崩れる様に膝をつき、枕に顔を埋めるリリィ。あの自信家で強引さが売りのリリィがここまで落ち込むなんて……余程ショックだったみたいだ。


「ま、まぁまぁ。依頼表を出してまだ半日しか経ってないじゃない。これから来るかもしれないでしょ?それに…一枚しか書いてないし、何枚も依頼表書いて貼ればもっと目立っていいかもしれないよ?」

「マツリ……。」

「まぁ、書くならもっと考えて書いた方がいいかもしれないけど……と、とりあえず、そこまで落ち込まないで前向きに考えよ?ね?」

「……そうね。落ち込んでてもしょうがないわよね。こんな事をしても仲間なんて集まらないわ。」

「リリィ…!」

「だから……私が直接交渉する!!」

「リリィ!?」

「準備なさい、マツリ!今から酒場に行って、強そうな奴に片っ端から声掛けるわ!さぁ、行くわよ!マツリ!!」

「え?な、なんでそんな話に!?ちょ、ちょっと待って!リリィ!!」


さっきまでの落ち込み様が嘘の様に勢いよく立ち上がるリリィはそのままの勢いで部屋から出ていく。そんなリリィに私は慌てて広げていた回復薬を片付けると追いかける様にして部屋を後にした。















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