9話
あれから、兵士達を回復させ、亡くなった兵士の遺体を近くの森に埋めるのを手伝った。放置するわけでも連れて行くわけもいかないという。生き残った兵士達はただ黙々と墓を作り続けた。墓を作った僕に深々と頭を下げて礼を言う兵士もいた。
「貴殿にわしらを救ってくれたこと、あらためて礼をいう」
頭を下げる老人の横に、同じようにぺこり、と頭を下げる金髪の女の子。どうやら、今さっき泣き止んだらしい。目元がまだ赤い。
「いえ、気にしないでください。それより怪我の傷は治っても流れた血は、戻ってこないのであまり無理はしないでください」
頭を下げ続ける二人に僕は慌てて声をかける。身なりからしてこの二人は貴族。貴族が平民に頭を下げるのはまずいだろう。
「とりあえず、顔を上げてください」
僕は、二人に顔を上げるように頼む。
「そういえば、挨拶がまだだったな、わしはルメーア公爵家のハンス・リー・ルメーアだ、それで、この子はわしの孫娘」
「アリス・リー・ルメーアです。お爺様の命を救ってくれてありがとうございました」
やっぱり、貴族だったか、それにしても公爵といえば、たしか、爵位の一番上に属する位だったはず、しかもそれは、王族の親族のみ、与えられるくらいだったよね?
「あの、公爵って基本的、王族の親族に与えられる。爵位の一番上であってますよね」
「うむ、この国の国王は、わしの兄じゃからのう」
「そうでしたか、よかった間違ってなくて、あ、僕の名前は浅井拓也といいます。拓也が名前で浅井が家名です。でこの肩に乗っている魔物はスライムのボルトといいます」
「ほう、わしの名を聞いて、態度を変えないとは、それにそのスライム、色が違うのう」
「ボルトはスライムの突然変異で、雷魔法をつかえます」
「なに!?突然変異だと!拓也殿はめずらしい魔物を使役しているのだな」
ハンスさんはボルトをまじまじとみる。
そういえば、アリスといった金髪の女の子……いや、お嬢様だったか……の反応がないなと、思ってみると、お嬢様は僕の方をじーと見つめていた。
「あの、僕になにか?」
「い、いえ」
声をかけると、顔を赤くしてうつむいた。恥ずかしがり屋なのかな?
「そういえば、拓也殿は、冒険者なのか?」
ボルトをある程度みてまわった、ハンスさんは、僕に声をかけた
「いえ、いままで、森で暮らしていたんですが、ある人に旅をして自由に暮らせといわれ、街にいって冒険者になろうかと」
異世界から来たといったら頭のおかしなやつと思われかねないそれに、自由に、というのは、神様にいわれたから間違ってはいないはず
「そうなのか、ではわしらの馬車でいかないかわし達を街に向かうところだったんでな」
「それは、いいのですか」
「かまわん、拓也殿はわしの命の恩人なのだからな、それにアリスの方も・・・」
「?」
なんと、貴族の馬車に乗せてもらい、僕たちは街に向かって出発した。