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第十話 お礼しないと。

【一週間後】


 ヒュン! ヒュン! ヒュン!


「てあっ!」


 避けて避けて次は盾で受け流す!


「よっ!」


「……」


 どーだ、チョーハさん。

 避けきったぞ!


 ヒュン!

 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!


「チョーハさん! それは避けきれないですって!!」


 グサッ!

 グサグサグサグサグサグサッ!!!

 

 ……チョーハさんって意外と負けず嫌いなのね。


【その一週間後】


「『炎呪文フレイム』、 『炎呪文フレイム』、 『炎呪文フレイム』、 『炎呪文フレイム』、 『炎呪文フレイム』、『炎呪文フレイム』、 『炎呪文フレイム』」


 ぜー、ぜー。

 こ、これで『炎呪文フレイム』百回撃ち達成。


「はい、後二十回です。その次は『速度強化呪文アクセル』の練習ですよ。今日は『速度強化呪文アクセル』を習得するまで帰しませんよ?」


「ひぇー! 厳しいですサージョさん! 」


 ……明日の朝までに習得出来るといいな『速度強化呪文アクセル』。


【そのまた一週間後】


「『疾風斬り』!」


 大分意識しなくても使えるようになったな。

 これなら咄嗟にカウンターで斬り返したりも出来るかな?


「ヘイヘイ、大分使いこなせるようになったじゃん? 」


「はい、今日こそクーゴさんから一本取ってみせますよ!」


「ヘイヘイ、それはちょと甘すぎるぜ。『疾風斬り』!」


「やっぱ大人げないよこの人!?」


 ……いくら俺が『不死身』でも躊躇なく首切り落とすかな普通。


【一ヶ月後】


 ふー、落ち着け。

 訓練を思い出すんだ。


「来いサーベルウルフ共! 」


「「「ガァー! 」」」


 先ずは、


「『速度強化呪文アクセル』! 」


 そしてそのまま先頭のサーベルウルフに。


「『疾風斬り』! 」


「ガッ! 」


 からの頭部に一撃!


「うりゃ!」


 まず一匹撃破。


「「ガァーァ! 」」


「遅い! 」


 俺は盾と相棒でサーベルウルフ共の攻撃を流しながら二匹の間を抜けた。

 右足でブレーキしながら振り向いて。

 

 お次は!


「『炎呪文フレイム』、『炎呪文フレイム』」


「「!!! 」」


 まだまだ! 右のサーベルウルフの首をはねる!


 二匹目撃破!

 最後だ、いくぞ相棒!


「『疾風斬り』だ! 」


「ッッガァ! 」


 三匹目撃破っと。

 周りを確認、他に敵影無し。

 よし終わったな。


 パチパチパチパチ。


 クーゴさんが拍手してくれた。


「ヘイヘイ、キット。成長したじゃん、上出来だぜ! 」


「へへへっ、ありがとうございます」


 クーゴさんが誉めてくれたよ。

 やっぱ褒められると嬉しいね。


「ヘイヘイ、最初はこんな雑魚スケルトンが魔界騎士で大丈夫かよって思ったが見違えたぜ!」


「それ酷いっ! 」


 確かに最初は酷かったですよ!

 だって仕方ないじゃん。

 俺は一般人だったんだからな!


「……ヘイヘイ、これでオレらがユートピアに帰っても大丈夫だぜ」


「えっ!? 」


 ……今なん……て?

 クーゴさん達が帰る!?


【一週間後】


 ……クーゴさん達のレーニングでの任務は今日まで。

 明日……三人は……ユートピアに帰る……。

 みんな……厳しかったな……。

 三人との……訓練……無茶苦茶……キツかった……。

 でも……楽し……かった……。

 三人……と……訓練……の……毎日……た……の……し……かっ……た……。


 ……嫌だよ!

 離れたくない!

 まだまだ俺はあの人達に学びたい事がいっぱいあるんだ!

 ……嫌だよ。


 !!!


 涙出るな!

 こんな顔クーゴさん達に見られたくないよ。

 止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!

 ……止まれよ涙……


 ……泣いてる場合じゃぞ俺。

 俺はあの人達に何のお礼もしてない。

 まだ、時間はある!

 まだ、アレなら出来る!

 急げ俺!


【その日の夜、宿舎食堂】


「……! 」


「ヘイヘイ、キット!? 」


「これは!? 」


 よし三人共驚いてるな。 

 食堂の厨房を無理言って使わしてもらって正解だったな。


「これは俺が感謝の気持ちを込めて作りました! 」


 俺の唯一の特技、エルから教わった料理で三人を見送る、これが今の俺が出来る最大のお礼。


 急遽作ったからメニューはハンバーグ、野菜とベーコンのスープ、温野菜のサラダ、スクランブルエッグ、それに果物のゼリー。

 どこにでもある普通の料理。

 でも今の俺に出来る最高の料理だ。


「さぁ冷めないうちに食べて下さい」


「あっ、あぁ」


「いただきます」


「……」


 口に合ったかな?

 美味しいって言ってくれるかな?

 喜んでくれるかな?


「ウマイ! ヘイヘイ、ウマイぜキット! 」


「本当に美味しいですよ! これ本当にキットさんが作ったんですか? 」


「……美味い……」


 良かった喜んでくれた。

 はぁー、すっごい緊張した。


「ヘイヘイ、キットよ。お前は魔界騎士辞めてコックになれよ。そしたら毎日通ってやるぜ!」


 ……クーゴさん。


「クーゴ! それはダメでしょう! でも本当に美味しいですキットさん」


 ……サージョさん。


「……美味い、美味い……」


 ……チョーハさん。


「喜んでもらえて嬉しいです。クーゴさん、サージョさん、チョーハさん。今まで本当にありがとうございました!」


 ありきたりな、お礼の言葉。

 でも俺にとっては精一杯の言葉。

 ちゃんと三人に伝わったかな?


「ヘイヘイ、自信持てよ魔界騎士。お前はオレらが鍛えた歴代最高の魔界騎士だぜ、オレが保証してやるぜ」


「……グス、キットさん基本を忘れないで立派な魔界騎士になって下さいね」


「ヘイヘイ、……グス。サージョ泣いてるのか? 」


「クーゴこそ泣いてるじゃないですか」


 やばい俺も涙が。

 泣かないって決めてたのに。


「……お前の腕はまだまだ未熟だ。だが鍛え続ければ良い魔界騎士なるだろう。精進しろキット……」


 ……チョーハさんが!!


「……ヘイヘイ、チョーハがこんなに長く喋るの初めて聞いたぜ」


「……私もです」


 駄目だ、涙が。


「……グスッ……グスッ……」


 クーゴさん、サージョさん、チョーハさん。

 貴方達は俺の最高の師匠です。

 貴方達に教わって本当に良かったです。

 今は言葉が出ないから心でもう一度言います。


 本当にありがとうございました。


【次の日】


 ……三人の師匠は早朝にレーニングの町を出発した。

 昨日とは違い笑顔で別れることが出来た。

 最後に今回の調査任務で分かった人間の出現場所を纏めた書類を俺に渡してくれた。


 ……よし、やるか。

 メンドイとか言ってられないもんな。

 師匠達に貰った書類を無駄には出来ないもんな。

 やるぞ俺!


 オマケ

 

 『レーニング』


 ユートピアから東に行った所にある。


 交易で発展した街でセントラル地方の物資の移動の拠点として栄えた。

 現在、旧住宅地は再開発してる。その為に旧住宅地は立ち入り禁止となってる。

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