表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ちのあじはこいのめいそう
98/159

94 共生

 ◯ 94 共生


 次の日、目が覚めると体中が痛くて、筋肉が張ってるのが分かった。ストレッチも頑張ったんだけど、効果があったのかは分からなかった。いつかのレイの様に階段を下りて行くと、マシュさんがコーヒーを片手に何やら書類を熱心に見ていた。


「……何だ、今度はアキの番か?」


 ちらりとこっちを見たマシュさんが、呆れた顔でそんな事を聞いて来た。


「いや、交代って訳じゃないんだけど……」


 とりあえず、このままじゃ、仕事どころじゃないので朝からお風呂に入る事にした。霊泉の効果があるから痛みも取れるし、汗も流せる。カシガナにも朝の挨拶に向かった。血を吸われたが、まずそうな感じが伝わって来た。う……植物にも調子が悪い事が分かるのかな? マシュさんにそのことを言ったら、そりゃ、毎日、血を吸ってたら違いも分かるだろうと言われた。

 まずいという事は、普段は美味しく飲んでるってことだなと何やら、ブツブツ言っていた。乳酸が嫌いなのか、糖の濃度か、嗜好があるのか、それとも今芽生えているのか、と何やら書類に書き加えていた。


「それでその葉っぱは何だ?」


「カシガナだよ」


「それは分かっている。どうするんだ?」


 ちょっぴりマシュさんの眉がぴくりと動いた。


「サラダにしようかと……」


「……その報告は無いぞ?」


 更にピクピクと眉が上がりながら動いた。


「えっ? あ、あれ?」


「で、それは何時からだ?」


 両眉が上がって、しっかりと睨まれながら聞かれた。


「ええ、と……」


 背中の汗が流れるのを感じながら、僕は必死で思い出した。


「確か、あのカシガナを調べに来た日には食べてたよ。メレディーナさん達が来た日にもサラダにしたよ。一緒に食べたし……」


「で、具体的には?」


 眉の角度が下がった。


「えーと、宙翔の所で教わった後、一、二回食べたよ……だから、これ(・・)で四回目だよ」


 僕は持ってる葉っぱを振って、マシュさんの顔を見た。


「……良いだろう。やっぱり張り付いていて正解だった」


 普通に戻ったマシュさんを見て、僕はホッとした。


「で、それを食べるのは、カシガナも承知なんだな?」


「うん、重なりすぎてる所を貰ったよ」


「なるほどな……相互に食いあってるのか」


 何やら考えながら呟いたマシュさんの言葉は、なんだか直接すぎて傷つく。


「そんな言い方はしなくても……」


「他にどう言えば良いんだ?」


「う……考えてみます」


「で、それ(・・)だが、研究に一枚提出を求める」


 僕の持っているカシガナを指差しながら、そう言われた。まあ、その為にいるのだから当然か。


「あ、うん。そうだね、分かったよ。サラダは食べる?」


 葉を渡しながら、なにげに聞いてみたら、


「当然だ」


 と、答えが返って来た。これも当然だったらしい。味の研究もするのかな?


 一応、2種類作って出してみた。朝食もまだだったので、ついでに一緒に食べる事にした。レイを起こして来て三人で食べた。


「へえ、これ、カシガナだったんだ。気が付かなかったよ。確かに紫だし、言われたら同じだね」


「三人とも食べておいて、気が付いてなかったか」


「えー、だって、言われないと分からないよ。マシュはサラダ状態でも分かるって言うの?」


「……無理だな」


 マシュさんは眉間に皺を寄せながらも認めた。


「ほらー、自分が気が付かない事を責めるのおかしいよ〜」


 フォークを片手に頬を膨らませて、マシュさんを睨んでいた。いつもの言い合いの範疇だな、と思いながら会話を聞いていた。


「悪かったよ。……こっちの方が美味いな」


「あっ、ボクもそっちが好きだな」


 どうやら、落ち着いたらしい。


「生のままだとちょっと癖があるから、そっちはお湯に少し通してあるんだ」


「ふうん、前に出てたのもこっちだよね?」


「うん、生も慣れたら美味しいけど、好き嫌いがあるから食べやすい方にしたんだ。味も知っておきたいのかと思って、一応は生も用意したんだけど」


 一口食べた後は、食べやすいお湯を通した物ばかり減っていた。まあ、生は僕が食べるからいいけど。


「まあ、食用としてもいけるな。葉も実も食べれるってことか」


 マシュさんがサラダを頬張りながらそう言った。


「そうだね」


 僕はその様子を見て気に入ったのかなと、思いつつ見ていた。


「アキの血を吸ってるから、アキも食べてる気分だ」


 隣で、レイが食べながらそんなことを言った。途端に、


「その言い方は止めろ」


 と、マシュさんが嫌そうな顔をした。


「何でー」


 口を尖らせて、レイが訳が分からない、といった顔をして聞き返した。マシュさんは方眉を上げて言い返した。


「気持ち悪くなるだろうが」


「そう?」


 確かに。……それに言い方は二人とも良い勝負だと思うよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ