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世界を繋ぐお仕事 〜非日常へ編〜  作者: na-ho
ちのあじはこいのめいそう
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96 急襲

 ◯ 96 急襲


 外はアストリューには珍しく嵐だ。雷がバリバリと鳴って雨風が窓を叩き付けていた。僕は動けなくてよく分からなかったけど、どうやら、アストリューが襲われたらしい。

 被害者が出た事に、メレディーナさんは心を傷め、そしてかなり怒っていた。僕がアストリューに来る事になったあの瘴気の固まりがばらまかれたのだ。人々を飲みこみ、物質を瘴気に変えて広がり、あっという間にアストリューの世界を混乱に陥れた。でも、メレディーナさんを先頭に、神殿の人達の活躍ですぐに事態は収拾された。どうやら、あのハンシュートさん達三人組の仕業だったようで、警戒していたからこの程度ですんだ、とレイが言っていた。

 物流に何かを混入させていた事を突き止めていたので、回収の為にその行き先を調べていた事も事態が早く解決した要因の一つだ。それに、その混入させた本人がそんな大層な物だとは知らずにしたことだったので、ショックを受けているというのも聞いた。どうやら誰かにお膳立てされて事に及んだという事はわかったが、それが誰だかは分からずじまいだった。


「アストリューを狙ってくるなんて、連中はかなりおかしいよ」


 少し呆れを含んだレイの声がした。


 [そうなの?]


 どう、おかしいんだろう。


「そうだな、霊泉で瘴気はかなり押さえられるからな。それに、住人も霊力が高いから飲み込まれても魂までは破壊されてなかったみたいで、再生がおこなわれているし……」


「霊泉に逃げ込んで助かった人が多いしね」


 そっか、浄化の効果のおかげで、いい逃げ場になったんだ。


 [そっか、良かった]


「まあ、アキの騒動のおかげで、早めにあいつらの動きを追えてたのも良かったんだけどね」


 [なんかそれは……喜んで良いのかよく分からないよ]


 レイの言葉にどう答えて良いか分からなかった。


「確かにな。ところでスフォラとの具合はどうだ?」


 さっき、マシュさんが修理の終えたスフォラを僕の中にいれて、何やら調整してくれている。おかげで僕の思った事を、スフォラ経由で声に変換して話す事が出来る様になった。自分の声じゃ無いみたいだけど、これは仕方がない。他人が聞く声と、自分で聞く声にズレがあるっていう現象は、聞いた事がある。


「それで見えるようになるの?」


 答えようと思ったら、先にレイがマシュさんに質問していた。


「そうだ、と言ってもスフォラの見ているものを意識を通してみるから、そのままだとちょっとずれがおきる。その調整だな……」


 体の中からどうやって見えるんだろう。僕の目から見てるんじゃないってことかな?


 [体内に入っていても見えるんだ?]


「嗚呼。で、今までとは違って、体内に入っているのが本体で、外のは分体だ」


 [う、うん]


 説明に想像が追いつかない。本体は余程の事が無い限りは出すな、と今回の襲撃での結果からマシュさんにさっき言われたのを思い出す。地球であんな馬鹿みたいに身体強化したままあれだけ殴るのは難しいから、スフォラの防護は過剰だと思ってたのにとレイが言ってたのも思い出した。皆、色々考えてくれてるけど、中々うまくいってないな。


「本体の方で見ている物を脳内で再現している。最初はやっぱり自分の目と同じ感じ、と言う訳にいかないからな……」


「声の方は問題ないみたいだね」


「嗚呼、割り方うまくいったよ、そっちは。目も口も役に立たないんじゃ、辛いからな」


 後半は少し暗く低いトーンでのマシュさんの声が聞こえた。


 [うん、ありがとうマシュさん]


 心配してくれてこんな機能をつけてくれたんだなと思うと、ちょっと嬉しかった。


「早く治ると良いけど、メレディーナも忙しいから……」


 心配そうなレイの声が聞こえた。確かに早く治って欲しいけど、外もかなり酷い事になってるみたいだし、あの瘴気がどんなのだかは僕自身も受けたから何となく察するよ。しかも、大幅に進化してたと聞いた。僕の時とは違って、飲み込んだ物を取り込みながら増殖して、次々と襲ってくる感じだったみたいだ。


 [こんな事態だから仕方ないよ。復興に動けないなんてちょっと悲しいけど、大人しくしとくよ]


 僕も一応は神殿で働いているのだから、後始末を手伝いたいのだけど、こんな調子じゃ何も出来ない。結局ハンシュートさん三人組は異世界間管理組合の方に引き取られて行く事になり、メレディーナさんの治療はお預けになったと聞いた。


「よし、繋がったはずだ」


 レイとマシュさんが見えた。


 [本当だ見えるよ]


「何本?」


 レイが嬉しそうに手を見せて聞いて来た。


 [二本]


「それがやりたかっただけじゃないのか?」


 マシュさんが苦笑いでレイに聞いている。


「えー、お約束でしょ〜」


「まあいい、これを()で追って……」


 [うん]


 何やら機械の先を()で追いかけた。モニターを見ながらマシュさんが確認している。


「ちょっとずれてるか……これでどうだ?」


 そんな事を何度か繰り返して、なんとか僕は感覚を取り戻した。


 [うわ、なんか酷いな]


 自分の姿を見ての感想だ。前歯がない。……両手とも折れてるし、肋骨もどこだか折れてて、内出血はあったものの、内蔵には刺さってなかったらしい。頬骨に頭蓋骨もどこかヒビが入り、少し欠けてる場所もあると言われた。鼻も……うーん盛大にやられた感が今、湧いて来た。


「顔の傷は真っ先に治して貰うからね?」


 レイがいつもの通りに顔を心配した。


 [うん、百分は一見に如かずか……良く生きてたね]


 これじゃ、動けないはずだ……。


「そうだな、たっぷり感謝してくれ」


 うん、あれ以上見えないままだと、耐えれなかったよ。


 [うん、スフォラもマシュさんもレイもありがとう]


 笑いかけたが、包帯で見えてるのか怪しかった。まあいいか。


「はっきり言って殺人未遂だし、スフォラがいなかったら、あの一発目のパンチで昇天してただろう」


 [そうなんだ……すごく怖かったよ。あれで僕、気絶したみたいなんだけど]


 言われてみれば、あのパンチはかなり気迫が籠っていたと思う。どうやってあんなに力が込めれるんだろう。


「そうだとは思ってたよ、火事の後からはスフォラが意識の無い間のアキの体を乗っ取って、移動出来る仕様にしてたんだが、防護が足りないのをその体を乗っ取ったときから、腕を使って受け止めてたから両腕ともいかれてるんだ」


 [ああ、何か言ってたあれだね。あの丸焼けはこりごりだからサインしたやつ]


 僕はあの判決の後の事を思い出していた。そういえばそんな事があったけど、スフォラはそんな事までしてくれたんだ?


「そうだ。この事件も映像があるから後で見とけよ?」


「あれは、ちょっとアキには刺激が強すぎだよ……」


 レイが指摘して止めていた。


 [そんな気がする、グロそうだ]


 そのレイの様子と自分の怪我の具合を見てそう判断した。


「確かに、R指定は入るな」


 ちょっと考えてマシュさんはグロさを認めた。


 [やっぱり]


「もうちょっと良くなってから、見た方が良いよ」


 レイが今度は見るように言って来た。どっちなんだ……。


 [やっぱり見るんだ?]


「被害情況の確認は必要だよ?」


「スフォラの活躍を見ないのか?」


 マシュさんがためらってる僕を咎める目線で見た。


 [う、頑張るよ]


 見る事になったようだ。それまでに心の準備をしておかないと……。


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