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18. コーディアを探して

地下宮殿の魔獣たちは中央の大広間を忙しなく行き交っていた。

見たところ、この空間自体に不自然な点はない。


だが、壁沿いに螺旋状に伸びる通路の先に並ぶ部屋の方は怪しかった。

コーディアは、あの上のどこかの部屋にいる。


「時間がない。手分けして一部屋ずつ探そう。くれぐれも慎重にな!」

グレンが言った。


四人は素早く壁沿いへ散った。


エリオは最下層の部屋から順に覗き始める。グレンは四階ほどの高さから探索を開始し、ソーンとヴィクターは息を合わせたように八階、九階付近まで一気に飛び上がった。


壁を取り囲む構造は螺旋階段というより、螺旋状に続く緩やかな回廊だった。

外側には石造りの手すり。内側には壁が続いている。


三、四メートルおきに部屋の入口が現れた。

入口はすべてアーチ型で、扉はない。

そのおかげで、エリオたちは素早く部屋の中を確認できた。


回廊には五部屋ごとに小さな油灯が一つ吊るされているだけだった。

そのため全体的に薄暗く、下の大広間の明るさとは対照的だった。

しかも回廊には魔獣の姿が見当たらない。


それでもエリオたちは壁に身を寄せながら慎重に進んだ。


ソーンとヴィクターに至っては、天井へ張り付きながら移動している。


エリオは各部屋を素早く見渡した。


部屋はどれも狭い。石造りの机や椅子が置かれ、壁には収納用の窪みが掘られている程度だった。


人が隠れられる場所などほとんどなく、一目で内部を確認できる。

探索には都合が良かった。


中には二、三体の魔獣が座ったり立ったりしながら何か作業をしている部屋もあった。反対に誰もいない部屋もある。


エリオが三階付近の部屋を調べていた時だった。

微かな音が耳に届く。鋭い何かで壁を引っ掻くような音だ。

エリオは警戒して音の方を見上げた。


一秒だけ音が鳴る。その後三秒沈黙。再び一秒だけ音。そしてまた三秒の静寂。


――グレンの合図だ。


エリオは周囲を見回した。魔獣の姿はない。


彼は手すりへ飛び乗り、一気に上へ駆け上がった。六階付近でグレンと合流する。

数秒後にはソーンとヴィクターも姿を現した。


グレンは一つの部屋の入口脇に立ち、視線だけで合図する。


四人は慎重に中を覗いた。部屋には魔獣が一体もいない。

そして奥の柱には――

コーディアがいた。


両手両足を鎖で拘束され、柱へ繋がれている。彼女の剣は部屋の反対側へ取り上げられていた。


エリオの胸が痛んだ。


自分のせいだ。

左目があの時突然おかしくならなければ――。


その瞬間、コーディアと目が合った。


エリオの瞳には自責の色が浮かんでいた。


だがコーディアは責めるどころか、穏やかな微笑みを浮かべた。


――これが仲間への信頼ってやつなのか。

エリオはそう思った。


周囲をもう一度確認する。信じられないほど運が良かった。近くに魔獣は一体もいない。


ソーンとエリオは壁際を伝って静かに部屋へ侵入した。グレンとヴィクターは外で見張りを務める。


ソーンはコーディアの剣を回収し、エリオは一直線に彼女の元へ向かった。鎖へ剣を振り下ろす。


甲高い音と共に鎖が砕け、床へ落ちた。全員が反射的に入口を見る。


グレンは目だけで「問題ない」と伝えた。

「急ごう!」


ソーンが剣をコーディアへ渡す。五人は部屋を飛び出し、螺旋回廊を下へ向かった。


元来た道を戻るのが最善かは分からない。だが今のところ、それ以外の道を知らない。


この地下宮殿はあまりにも広大で複雑だ。下手に未知の通路へ入るべきではない。

全員そう判断していた。


彼らは下へ下へと進んだ。驚くほど順調だった。魔獣たちの注意を一切引いていない。


順調すぎる。


グレンは嫌な予感を覚えた。

だが首を振る。

もしかしたら本当に運が良いだけかもしれない。


やがて螺旋回廊の終点が見えてきた。最初にいた大広間へ戻ってきたのだ。

だが――

どこかがおかしい。


「俺たちが来た時、この広間ってこんなに暗かったか?」


エリオが目を細めながら尋ねた。


その瞬間だった。背後から声が響く。

「どちらへ行くおつもりですか?」


全員が飛び上がるほど驚いた。振り返る。そこには、いつの間に現れたのか、一体の魔獣が立っていた。


長身でがっしりした体格。そして肩まで伸びる緑色の髪。


「面白いですねぇ」

その魔獣は笑った

「最初はその人間の娘一人を連れてきただけだったのに。

まさか他の人間たちまで自分から来てくれるとは」


ソーンが即座に剣を抜く。


だが緑髪の魔獣は余裕の表情を崩さない。

「後ろをご覧なさい」


五人は振り向いた。そして息を呑む。


灯りの落ちた大広間には、無数の魔獣が立っていた。

闇の中からゆっくりと姿を現し、エリオたちを包囲していく。


緑髪の魔獣も一歩前へ出た。

「まずは状況を理解してください」


その目が細められる。

「ここは幻域において『人類地獄』と呼ばれる第一要塞です。そして我々が最も嫌っているものこそ――人間なのですよ」


緑髪の魔獣は低く笑った

「ですから――くれぐれも軽率な真似はなさらぬよう、忠告しておきますよ」

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● 毎週 【日・月・火・木・金】18:10 更新


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