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外せない予定

玄関の方から、ガチャという音が部屋に響いた。


優花が返ってきたのだろう。


確か今日はいつもの場所で、レッスンがあったはずだ。

そろそろ武道館公演が近いということで本人もかなりはりきっている様子だった。


もちろんチケットは確保している。


あ、このチケットは優花からもらったんじゃなくてちゃんと公式サイトから購入している。


優花からは「チケットあげるのにー」とよく言われるが、やはり自分で獲得したチケットからのみ得られる高揚感というものがあるのだ。


そこは譲れない。


そんな事を考えているうちに、衣を纏った鶏肉が油と交わりパチパチと音を奏でている。


今日は優花からのリクエストで唐揚げを作っている。


優花のリクエストは大抵、肉物、大抵脂っこいものが多い。

その上好き嫌いが多く「野菜食べたくないー」とよく喚いているが、最終的には食べてくれる。


普通のアイドルは食事管理に顔使って、少しでも自分を魅力的に見せるものだと思うのだが優花はその例には当てはまらず、優花いわく「健康な食事をとって痩せるの!」と主張している。


野菜嫌いでなのに健康的な食事とはこれいかに


こんなアイドル優花以外にいないだろう


「ただいまー。おっ!キッチンからいい匂いが!」


「リクエスト通り唐揚げ作ってあるから、手を洗ってから机に来ること」


「りょーかーい」


手を額の前につけて、敬礼のポーズをとったのち、鼻歌を歌いながら、手を洗いに洗面台に向かった。


ちょうど唐揚げが揚がったので、、優花が来る前にささっと二人分の盛り付けを完了させて机まで運ぶと、ちょうど手を洗い終えた優花が目をキラキラとさせていた。


「ね!早く食べよ!あったかいうちに食べたほうが鳥さんも喜ぶから」


「そうだねじゃぁ食べようか」


こうやって子供みたいにはしゃぐところも彼氏特権で見れているんだと思うと、少し優越感があるな。


世間一般テレビや雑誌、ライブ会場での優花は、大人で綺麗なイメージを持っているが、この一面を知っているのは俺と優花の親御さんくらいだろう。


いやもう一人いるか。


まぁそんな話は置いといて、まずは目の前にある唐揚げを口一杯に頬張ろう。


至福の時間だったことは言うまでもない。



――――――――――――――――



二人して夕食をぺろりと平らげて、食器を片付けた後、ソファーに腰掛けバラエティー番組を眺めていた。


笑ったり、驚いたり、いろんな表情を見せる優花もとても可愛らしかった。


漆黒のまるでどこまでも吸い込まれそうな目、腰付近まで伸びる光沢のある髪、余分な肉を排除した完璧な肉体。


毎日スキンケアをして、お風呂では髪の毛のケアを欠かさない。こう言うひたむきな努力の結晶がこの美しさを実現しているのだろう。


でもこのスタイルの良さだけは説明つかないけど……


そんな事を考えながら、チラチラと横を見ていると優花が口を開いた。


「なぇ来週の日曜日って暇かな?せっかくならデート行こうよ!室内で遊べるとこいいとこあったんだー。

ちょうどその日レッスンなくて暇なんだよね」


その言葉に心が躍るのを感じると同時に、来週の日曜日という単語に反応する。

その日は……どうしても開けられない予定があった。


できるだけ優花を傷つけずに断る言葉を探して、回答する。

こんな時に自分の貧相な語彙力を恨む。


「来週の日曜か……ごめんその日は外せない予定があって……埋め合わせするからまた予定開いた日があったら誘ってほしい」


「そっか、ごめんね!急に誘っちゃってまた誘うね」


言葉ではそう言ってくれているが、優花の表情が少し暗くなっている事を感じた。


そのあとは特に何もなかった。

いつも通りお風呂に入って、歯を磨き布団に潜る。


強いていつもとの相違点を挙げるとしたら、少しいつもより寝る時の優花の距離が近い気がした事くらいである。






お読みくださりありがとうございます。

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