第1章:6話 俺と疑心ともう一人
あの黒い塊は、俺の友人だッ!!!
そう考えるのが最も理にかなっている。
あいつが悟の名に反応したのは、
あいつが悟本人で、正体を見破られたと思ったのだろう。
そして、俺が悟の情報を売ろうとしたときの
「やっぱりわかっていないじゃないか」
という発言。
本人ならば本人の情報なんて必要ない。
そして同時に、
俺が奴の正体を見破っていたとしたら、
その本人に情報を売ろうとするはずがない。
だからあいつは自分の正体を見破られてないと確信し、
あの発言をしたのだろう。
実際、俺は奴の正体を見破っていなかった。
しかし、あいつはあの発言によって自ら自分の正体をばらしたようだ。
あの発言が出たのは、恐らくやつの油断だ。
パソコンの充電が切れなければ、俺は死んでいた。
少し口を滑らせても問題ないと思ったのだろう。
...そうなのか...?
「悟...」
一体どうなってしまったんだ、あいつ...。
...
...ふと、思い出したのはもう一人の友人。
そうだ!!優希!!
USBは俺と優希に渡された。
あいつも同じような被害にあったはずだ!
スマートフォンを取り出し、連絡しようと試みる。
先に、画面に映るのは通知画面。
あのUSBを差し込む直前、俺はメールを受け取っていた。
優希からだ。
ーーさすなーー
直前にこの連絡が来たから、
俺はUSBを差し込んですぐに引き抜いた。
どうやら間に合わなかったようだが。
...あいつ!!
USBは危険。そのことを知っているということは、
あいつはもうすでにUSBを差し込んだ、ということだ!
...しかし、連絡をよこせた、ということは
一応、奴は無事...ということなのだろう。
俺は急いであいつに電話をかける。
ーープルルルル...
...
...
...留守番電話サービスに...
...しかし、繋がらない。
「...まさか...」
再び電話をかける。
ーープルルルル...
ーープルルルル...
...
...
...留守番電話サービスに...
しかし、やつと連絡が取れない。
「クソッ!!」
俺はテーブルを拳で殴りつける。
...優希...!
...
...ブーッ
通知が届く。
ーー理亜!!!無事か!??ーー
メールが届く。
...優希だ!!
よかった...あいつも無事だったのか...
俺はアプリを立ち上げ、やつと連絡を取る。
ーーああ、なんとかな...ーー
おれは優希に、USBを差し込んでからの出来事を、1から10まで話した。
ーーそうか、連絡、間に合わなかったか...ーー
優希から連絡が届く。
続けて、優希は
ーー今日、俺の家に来ないか?話したいことは山ほどあるだろうし、一人よりは安心できんだろ?ーー
...確かに。
だが、本音を言えば、あまり今はあまりPCには近づきたくない。
あいつの家だって、あの黒塊が出現した現場だ。
ーーなあ、通話にしないか?--
これが俺にとっての最適解。
これならPCに近づくことなく、あいつと会話がスムーズにできる。
...だが。
ーーあー、今スマホのマイク、イカれててなー。連絡出来ないんだわー。-ー
なるほどな。
それでさっき、電話に出れなかったわけか。
...ん?
電話に出れない理由がマイクの故障だとしたら、
おかしい点があるよな...
まあ、取り敢えず置いとくか...。
なんにせよ優希は今電話が使えないらしい。
...それなら、
ーー優希、今お前がこっち来てくれるか?正直、いまPCに近寄りたくないんだよ--
送ってみる。
...しばらく返信に時間がかかる。
...
...ブーッ
優希から返事が来る。
ーー悪い、あいつに襲わっれたときに足くじいちゃってさーー
...仕方ないな...
俺はコーヒーを飲み干し、店を後にした。
「優希...」
...言いたいことは山ほどあるが、
同時に優希に聞きたいことが山ほど出来てしまったッ...
今のやり取りを終え、
優希に対し、疑問に思う点が、実は..いくつか、ある。
「...」
1つ目。
あいつ、黒塊の侵略、どう対処したのだろうか。
俺と同じ方法をとったのか?だが、あれができたのは、
俺がパニックになった結果、
電源を消そうと無意味に充電ケーブルを抜いたからだ。
果たしてあいつも同様に充電ケーブルを抜いて、
さらに俺と同じ戦略を思いついた?
あり得るのだろうか。
まあ、優希が別の対処方法をとったならば、
是非聞きたいところだ。
2つ目。
...これは異常に不審な点なのだが...。
最も不自然なことは、これ。
留守番電話。
俺がさっき電話をかけたとき、
2回も留守番電話に繋がった。
電話が出来ない理由がマイクの故障だとすれば、
スマホの電話がかかりっぱなしの状態にしておくなんて、
普通あり得るだろうか。
キャンセルし、すぐにDMを送ってくればいいはずだ。
スマートフォンを失くした、
とかいう訳であれば、
この状態にも納得はいく。
アプリはPCと連携できる。
さっきまで連絡していたのはPCを使っての操作だったと。
優希。俺に嘘をついているのか...?
...なにか訳がありそうだ。
そして、その理由は、
俺に嘘をつく程のことだ!
...しかも、その後の「足をくじいた」報告。
まるであいつ、俺を家に呼び込みたいかのよう...
...何だ?それって...。
もう既に1人の友人に裏切られ、
疑心暗鬼になっているのは間違いないだろう。
しかし、それを差し引いても、この点は不自然だ。
しかし...
グルグルと思考が混乱する。
...と、その時。
ブウゥゥゥゥッーー
突如目の前を鉄の塊が通り過ぎる。
我に返る。
ああ、赤信号か...
足を止める。
...
ふと、スマホのアプリを起動し、
優希との連絡の履歴を見る。
...
...!!!???
やつが電話が出来ない理由を確信する。
マイクが使えないんじゃない、
スマートフォンが使えないんだッ!
俺は、やつが嘘をついていたことを確信した。
「くそッ...なんなんだよ...ッ」
死線を超えた後、もう一人の友人にも嘘をつかれた。
やはり、このまま優希の家に誘導に乗るのは危険だ...。
俺は方向を変え、漫画喫茶に泊まることにした。




