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わすれな草  作者: 紅朱
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33/38

次の日、僕はほとんど寝れていない状態で起きた。

目をこすると洗面台に向かった。

目にクマができている。

死んだような顔つきだ。

最近は綾瀬に言われて髪を切ったらと言われて

人が苦手なんだっ言って結局切らずにいた髪が邪魔をしていたが

少しずつ人並みの顔になってきたのに

また冴えないような顔つきになっている。

僕は顔を洗うと身支度をして泉に向かった。

自転車に乗れば早いのに、そんなこと忘れて走って泉に向かう。

はやく綾瀬に会って、嘘だよっていつもみたいに笑ってくれて全てを笑い飛ばして欲しいと祈った。

同姓同名だねってなんて言って欲しい。

お願いだ。神様初めてあなたにお願いします。嘘ですよね。嘘ですよね?

汗をかいて息を切らせ泉に着くと周りを見渡す。

綾瀬は居なかった。

綾瀬が気に入ってる花畑に行く。

そして、そこに《綾瀬》がいた。

「綾瀬!!!」

今まで出したこともないような馬鹿でかい声で綾瀬の名前を呼んだ。

「え?藤井君どうしたの?」

綾瀬は驚いた顔で僕を見た。

目をパチクリとさせながら。

「僕に隠し事してなよな!!」

大声をだした。

僕は震えながら手をギュッと拳にして答えを待った。

「何を?」

綾瀬は僕に近づくと僕の拳を握って、あやすように優しい声で答える

「綾瀬は・・・。綾瀬は、もうこの世に居ないの?」

僕は否定することを願いながら恐る恐る聞く。

「・・・どこで、それを?」

綾瀬は残念そうに僕から手をはなした。

確かに、綾瀬から温もりを感じなかった。

綾瀬の顔を見れない。

見たくない。

「叔父から・・・。ねぇ、綾瀬。それでも今まで通り僕の隣に居てくれるよね?」

僕の声は震えていた。

うん、と返してくれるはずだ。

今までと変わらない日常が今日も明日も明後日も明々後日もずっとずっと永遠に続くはずだ。

「それは・・・。もう無理でしょ?。だって知ってしまったから。私ヘの見方変わったでしょ?」

綾瀬はため息をついて、さっぱりとした声で僕から少し離れた。

「行かないでくれ!」

僕は前を向いて綾瀬に近づいた。

綾瀬は横に首を振った。

「違うんだ。綾瀬。僕は、綾瀬と居たい。ずっと一緒にこのまま居たいと思ったんだ。この先もずっと。綾瀬と居ると心が温かくなって、たくさんのことが楽しく見えるようになったんだ。居なくなるなんて考えられない。僕と一緒に居てほしいんだ。」

僕はまくし立てるように綾瀬を抱きしめようとした。

綾瀬はそれを拒んだ。

僕の目頭が熱くなった。

頬に冷たいものが流れる。

鼻をすすった。

あぁ、これが涙か。なんて思ったのは視界が少しぼやけ始めた頃だ。

「それをきっと人は『恋』っていうんだと思う。ねぇ、藤井君私が幽霊でも好きなの?」

「そうか。これが『恋』なんだね綾瀬。綾瀬僕はキミが幽霊でも何でも好きなんだ。」

拒む綾瀬を無理矢理抱きしめた。

温もりなんて関係ない。

僕は、綾瀬自身が好きなんだ。

「私も・・・」

綾瀬はポツリと呟く。

綾瀬の顔を覗きこむと切なそうな顔をしていた。

歪んだ顔。

あぁ、こんな顔をさせたいわけじゃない。

笑って欲しい。

笑って隣にずっと居て欲しい。

「私も藤井君のこと好きになってた。でも、ごめんね。これで2つ目のしたいこと完了しちゃったよ。」

綾瀬は涙を流し、それを拭うと笑った。

笑った顔から、また涙が流れていく。

綾瀬は僕から離れようとするが僕は逃がさない。

絶対離すもんか、と更に強く抱きしめる。

「2つめって何?」

耳元で綾瀬に聞いた。

「・・・・・・お互いが好きな関係ができて、恋人みたいなものかな。あと、楽しい日々を過ごして笑うことよ。できなかった楽しい日々を過ごすこと。ほら、叶っちゃったじゃない。」

綾瀬は少し嬉しそうな声で言った。

でも、ちっとも僕は嬉しくない。

もっと、この先楽しい日々を綾瀬と過ごしたいから。

綾瀬は見上げて僕の顔を見た。

もう涙は流していなかった。

「だから、さようなら瓜生うりゅう・・・」

綾瀬は初めて僕の下の名前を呼んだ。

「・・・嫌だ。・・・嫌だ嫌だ嫌だ」

僕は首を横に振った。

「ありがとう・・・。」

綾瀬が少しずつ薄くなっていく。

「嫌だ。消えないでくれ綾瀬。初めて、僕の下の名前呼んだばかりじゃないか!!」

僕は少しずつ消えていく綾瀬をもっと強く抱きしめた。

瓜生うりゅう、私を忘れないで・・・。」

綾瀬の精一杯のワガママのように聞こえた。

そんなこと言わなくても忘れないのに。

「いくなぁ彩!!!!!」

抱きしめている感覚がなくなり自分を抱きしめるような形になり

僕は泣き叫んだ。

もっと早く下の名前を言ってあげれば良かった、と首を横に何度も振った。

消えてしまった。

もう会えない。

僕は、もう彩に永遠に会えなくなってしまった。

その場に僕は泣き崩れた。

彩の声はもう聞こえない。

さっきまで聞こえていた声が、もう聞こえない。

散々泣き、もう声が枯れた頃、僕は涙を拭いて立ち上がった。

すると、僕の足元に封筒が落ちていた。

宛先は僕の名前になっている。

女の人の字だ。

彩の字だ。

僕は封筒を持って急いで家に戻った。

その場で開けるには封筒にはきっちりとノリで塗られて止めてあったから

破けてしまうかもしれないからだ。

彩のものは少しでも残しておきたい。

綺麗に封筒をあけるモノで封筒をあけると手紙が入っていた。

彩からの手紙だ。

僕はティッシュで鼻をかむと、そっと手紙をひらいた。


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