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練習  作者: 凉月
5/5

呉竹朝顔(1)

 真新しい畳の匂いが立ち込める純和風の部屋の中に、背の低い木製の机を挟んで二人の少女が座っていた。

 一人は、足を完全に崩して机に上半身を載せ、完全にだらけきっていた。顔の右半分をべったりとつけて、目の前に垂れ下がってきた自分の長い栗色の髪を、口をとがらせて吹いたり、指先で弄んだりしている。

 もう一人は、栗色の髪の少女とは対照的にきちんと正座を組み、意義を正して座っている。凛、とした黒髪のポニーテールが頭から肩甲骨のあたりまで真っ直ぐに延びていて、顔には真面目な、悪く言えば少し硬い、表情を浮かべている。その全身には、まるで金属のような硬い美しさを纏っていた。

「三八さん、ほらシャキッとして下さい。今回はあなたが進行役なのでしょう?」

 目の前でだらけきっている少女こと、鹿島三八の態度を見かねたのか、ポニーテールの少女が、どこか慣れた様子で注意を促す。

「え~、やだよ」

 しかし、三八は髪の毛をいじりながら、ポニーテールの少女の方を見もせずに、言う。

「いやじゃなくて、いい加減に真面目に進めてください。私だって、忙しいのですから」

 三八の態度の、ポニーテールの少女は溜息を堪えるようにして言う。

「忙しいって、どうせあれだろ? この部屋の畳の目を数えるとか、蝶々の羽をもいで、蝶が苦しんでるの眺めて悦に入るとか、六法全書を一ページずつ破いてくとかだろ?」

「違います! あなたは私のことを一体何だと思ってるんですか!」

「んー、友達のいないクソまじめ少女?」

「な、な、なんてことを……」

 相変わらず髪の毛をいじりながら、とんでもないことを言う三八に対して、ついに少女の怒りが沸点を超える。あまりの怒りに言葉が出ないのか、何かを言いたそうに口をパクパクさせる。

 だが、しばらくすると、ポニーテールの少女は、自らを落ち着かせるようにして溜息を吐くと、冷静さを取り戻した。

「ふぅ。なるほど。三八さんが前に言っていたことの意味が分かりました」

 そして、何か嫌なことを認めざるを得ない、とでも言うような感じで三八に話しかける。そこで三八は、ようやく身を起こしてポニーテールの少女に応じる。

「だろ? 本当にいい迷惑だよな? でも恐ろしいことにこれは強制参加なんだよ。てことで、いい加減に自己紹介しようぜ? 取りあえず今日はそこまでらしいから」

 さっさと終わらせたい、三八は全身で主張しながら言う。

「そうですね。自分で自分のことを言うのは少し恥ずかしい気もしますが、お互いのためにもここは早めに終わらせておきましょう」

 やれやれという感じで、ポニーテールの少女も同意を示す。

「これ傘咲の人間関係にひびが入りそうですし」

「あ、言っとくけど、今日あたしが喋ったことの9割は、あたしの本心じゃなくて、地の文書いてる奴があたしに言わせてることだからな?」

「ええ。ここはそういうことにしておきましょう」

「何がお互いのためだよ」

 そこで、今日初めて笑顔を浮かべる三八とポニーテールの少女。そして、少女は、一呼吸置き、改めて話し出す。

「初めまして。私の名前は呉竹朝顔くれたけあさがおです。三八さんの友人です。そうですね、容姿的な特徴は、これと言ってないですかね。しいて言えばポニーテールくらいですか。あ、胸は同じBでも、AよりのBカップの三八よりは少し大きいです。三八は残念ながら私たちの中で最貧です」

「うおい!」


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