呉竹朝顔(1)
真新しい畳の匂いが立ち込める純和風の部屋の中に、背の低い木製の机を挟んで二人の少女が座っていた。
一人は、足を完全に崩して机に上半身を載せ、完全にだらけきっていた。顔の右半分をべったりとつけて、目の前に垂れ下がってきた自分の長い栗色の髪を、口をとがらせて吹いたり、指先で弄んだりしている。
もう一人は、栗色の髪の少女とは対照的にきちんと正座を組み、意義を正して座っている。凛、とした黒髪のポニーテールが頭から肩甲骨のあたりまで真っ直ぐに延びていて、顔には真面目な、悪く言えば少し硬い、表情を浮かべている。その全身には、まるで金属のような硬い美しさを纏っていた。
「三八さん、ほらシャキッとして下さい。今回はあなたが進行役なのでしょう?」
目の前でだらけきっている少女こと、鹿島三八の態度を見かねたのか、ポニーテールの少女が、どこか慣れた様子で注意を促す。
「え~、やだよ」
しかし、三八は髪の毛をいじりながら、ポニーテールの少女の方を見もせずに、言う。
「いやじゃなくて、いい加減に真面目に進めてください。私だって、忙しいのですから」
三八の態度の、ポニーテールの少女は溜息を堪えるようにして言う。
「忙しいって、どうせあれだろ? この部屋の畳の目を数えるとか、蝶々の羽をもいで、蝶が苦しんでるの眺めて悦に入るとか、六法全書を一ページずつ破いてくとかだろ?」
「違います! あなたは私のことを一体何だと思ってるんですか!」
「んー、友達のいないクソまじめ少女?」
「な、な、なんてことを……」
相変わらず髪の毛をいじりながら、とんでもないことを言う三八に対して、ついに少女の怒りが沸点を超える。あまりの怒りに言葉が出ないのか、何かを言いたそうに口をパクパクさせる。
だが、しばらくすると、ポニーテールの少女は、自らを落ち着かせるようにして溜息を吐くと、冷静さを取り戻した。
「ふぅ。なるほど。三八さんが前に言っていたことの意味が分かりました」
そして、何か嫌なことを認めざるを得ない、とでも言うような感じで三八に話しかける。そこで三八は、ようやく身を起こしてポニーテールの少女に応じる。
「だろ? 本当にいい迷惑だよな? でも恐ろしいことにこれは強制参加なんだよ。てことで、いい加減に自己紹介しようぜ? 取りあえず今日はそこまでらしいから」
さっさと終わらせたい、三八は全身で主張しながら言う。
「そうですね。自分で自分のことを言うのは少し恥ずかしい気もしますが、お互いのためにもここは早めに終わらせておきましょう」
やれやれという感じで、ポニーテールの少女も同意を示す。
「これ傘咲の人間関係にひびが入りそうですし」
「あ、言っとくけど、今日あたしが喋ったことの9割は、あたしの本心じゃなくて、地の文書いてる奴があたしに言わせてることだからな?」
「ええ。ここはそういうことにしておきましょう」
「何がお互いのためだよ」
そこで、今日初めて笑顔を浮かべる三八とポニーテールの少女。そして、少女は、一呼吸置き、改めて話し出す。
「初めまして。私の名前は呉竹朝顔です。三八さんの友人です。そうですね、容姿的な特徴は、これと言ってないですかね。しいて言えばポニーテールくらいですか。あ、胸は同じBでも、AよりのBカップの三八よりは少し大きいです。三八は残念ながら私たちの中で最貧です」
「うおい!」




