第42話 田中vs武藤②
――“能力”を使わせてもらうとしよう
武藤「能力だぁ??」
次の瞬間。
ドンッ!!!
床が軋む。
武藤が、先ほど以上の勢いで突進した。
まるで砲弾。
一直線。
武藤「この突進を――どうするぅ!!」
常人なら、防御すら間に合わない。
だが。
田中は逃げなかった。
むしろ――前へ出た。
銀次「……!」
鷲峰「なっ……!?」
真正面。
激突寸前。
田中は一歩踏み込み、武藤の胸ぐらを強引に掴む。
その瞬間――
ギリッ!!
田中の腕に凄まじい負荷が走る。
筋が軋む。
骨が悲鳴を上げる。
だが、止まらない。
田中は武藤の推進力を利用するように、自らの身体を反転。
流す。
引く。
崩す。
そして――
ドォォンッ!!!
武藤の巨体が、勢いそのまま地面へ豪快に叩きつけられた。
床が震える。
武藤「グハッ!!」
店内が静まり返った。
銀次「わぁ〜♪」
鷲峰「投げた…だと」
武藤が咳き込みながら起き上がる。
対する田中は、静かに右腕を押さえていた。
ズキズキと痺れている。
かなり無茶をした。
あの突進を真正面から掴んだせいで、下手をすれば腕が折れていた。
武藤は血を吐き捨てながら笑う。
武藤「今のは効いた……」
ゆっくり立ち上がる。
武藤「だが、そう何度も出せる技ではなさそうだな」
ゴキッ。
首を鳴らす。
次の瞬間。
ブォンッ!!
武藤がラリアットの形で突っ込んできた。
丸太のような腕。
掠っただけでも終わる。
田中は即座に腕を掴み、再び技へ入ろうとする。
だが――
武藤「ぬぅんッ!!」
バギッ!!
圧倒的な筋力。
強引に振り解かれる。
田中「……!」
数歩後退。
武藤は肩を回しながら笑った。
武藤「……たしか、お前は」
武藤「他人の技をコピーするのが得意らしいな」
ニヤリ。
武藤「俺のも取って構わねぇぜ」
田中は静かに息を吐く。
田中「……パワータイプやスピードタイプの技は、コピーしても使いこなせない」
武藤「ほぉ?」
田中「殆どが身体能力に依存してるからな」
その言葉に、武藤は少し感心したように笑った。
武藤「……なるほどな」
拳を握る。
武藤「仮に俺の突進をコピーしても、標準体型のお前じゃ簡単に弾かれちまう」
武藤「スピード系も同じだ」
視線を銀次へ向ける。
武藤「ありゃ、天性のバネが必須だろうな」
銀次「えへへ〜♪」
田中は構え直す。
田中「別に万能ってわけじゃないんだ」
静かな声。
だが、その目は鋭かった。
田中「だから――」
床を蹴る。
ドンッ!!
田中「相性の悪いあんたには――」
一気に加速。
田中「手数でいかせてもらう!!」
一瞬で懐へ。
武藤「!!」
まず放ったのは――
『顎門昇天掌』
バシィッ!!
鋭い掌底が、武藤の顎を真上へ跳ね上げる。
武藤「ぐっ!」
視界が浮く。
その瞬間。
田中の拳が鳩尾へ突き刺さった。
『鳩尾貫通突』
ドゴッ!!
武藤「がはっ――!!」
巨体が揺れる。
呼吸が乱れる。
だが、終わらない。
田中「まだだ!!」
拳が消える。
『テンペスト・ガトリング』
ババババババッ!!!
顔面。
ボディ。
肋骨。
超高速の連打。
嵐みたいな拳。
武藤「ぐぅ……!!」
後退。
耐える。
だが、身体がついていかない。
そして最後。
田中の身体が半回転した。
肘が振り抜かれる。
『首狩りエルボー』
バギィッ!!!
頸動脈へ、容赦ない一撃。
武藤「ッ――!!」
ついに。
武藤の膝が床へついた。
ドサッ。
静寂。
誰も声を出せない。
武藤は荒い息を吐きながら、田中を睨む。
武藤「……ぐ、ぬぅ……」
田中は静かに拳を下ろした。
田中「今まで戦ってきた強敵たちの技だ」
息を整える。
田中「効くだろ?」
武藤は数秒黙ったあと――
ニヤリと笑った。
武藤「……あぁ」
ゆっくり立ち上がる。
その目は、まだ死んでいない。
武藤「だが――」
拳を握る。
筋肉が再び膨れ上がる。
武藤「全て力でねじ伏せるまでよォ!!」
ドンッ!!!
再び突進。
田中も迎え撃つ。
ドゴォッ!!
バギィッ!!
拳と拳。
技と暴力。
技巧と怪力。
ボウリング場が揺れる。
棚が崩れる。
レーンが軋む。
互いに血を流しながら、それでも止まらない。
銀次「……たっくん」
鷲峰「……ボス」
誰も割って入れない。
完全な一騎打ち。
そして――
長い激闘の末。
武藤の拳が空を切った。
その瞬間。
田中の一撃が、真正面から武藤の顎を撃ち抜く。
バギィッ!!!
武藤「――ッ!!」
巨体が揺れる。
ぐらり。
一歩。
二歩。
そして――
バターン。
武藤の身体が、ゆっくりと前のめりに倒れた。
沈黙。
誰も動かない。
やがて。
銀次が、ぱぁっと顔を輝かせた。
銀次「たっくんの勝ちだぁ〜〜〜♪」




