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第十一話 (believe)≠(??????)

「噂は所詮、噂だろ? だから、パス」


 そんな身も蓋もない言葉を木窯(こかま)から投げられた俺だが、今日の俺はここで引き下がるわけにはいかなかった。


 昼休み。廊下にて、俺は昨日、火七海(ひなみ)さんから聞いた風羅(ふうら)さんと上園(かみその)が同棲しているという噂を三人の友人に話し、更にその真偽を確かめるために二人を放課後尾行しようと持ちかけていた。


「まあまあ。面白そうだしいいんじゃねえの?」

「そうですな。正当な理由で異性を尾行できる機会なんてそうそうないですし」

「いや、正当ではないけどな」


 霧茅(きりがや)の言うとおり、正当な理由でもなんでもない。

 訴えられたら負け確定だ。しかし、やらねばならぬ。やらなければならない尾行が、そこにはある。


「……しゃあねえなあ。暇だし、やってやるよ」

「さすがは木窯! そう言ってくれると思ってた!」


 よし、これで人数は揃った。といっても、最悪一人協力してくれたら良かったんだけどね。風羅さんと上園の二人を尾行するわけだから、俺含めて二人いたら十分だし。

 でもまあ、居て困ることはないし。むしろ、木窯の頭のキレはいざって時に使えるからな。


「で、(りん)、振り分けはどうするんだ?」

「そうだな。俺と蹴珠(けだま)が風羅さん。霧茅と木窯が上園っていうのはどうだ?」

「うん、いいんじゃね?」

「私も異論はねえよ」

「我輩もですぞ」

「よし、じゃあ放課後それぞれターゲットを尾行するということで」


 解散!!


 …………と前々から言ってみたかったことを言ってみたが、この上なく恥ずかしくて穴があったら入りたい心境になった今の俺。











 放課後。

 例によって、終礼が終わると同時に一番最初に教室を出た風羅さんを追うため、俺も少し遅れて教室を出た。


「よし」


 毎日、早く出ると行っても、別に急いでいるわけではないらしい。普通の速度で廊下を歩いていた彼女と一定の間隔を取りつつ、俺は風羅さんの尾行を開始した。

 廊下に人はいない。ということは、蹴珠のクラスは、まだ終わってないのだろうか? まあ、後でメールすればいいから待つ必要はないな。


 それにしても、スタスタと歩く彼女の美しさといったら直視できないほどである。

 これが、風羅小夜(さや)。文学少女で他者との関係をあまり作らない女子の姿。

 何者にもならない、堂々とした歩き。一人で、まだ誰もいない廊下を進む。

 その内には、何を想っている? 何を考えている?

 何も考えていない? 楽しい? 寂しい?


 気づけば、外に出ていた。

 ここからは、自転車移動だからな。より、慎重に動かねば。

 と思った矢先、風羅さんは自転車置き場とは別の方向へと歩き出した。

 まさか、何か用事が? ――いや、そうじゃない。この方向は、間違いなく校門に向かっている。とすると、徒歩通学か! いや、だとすれば地元民になるはず。でも、地元の中学に通っていた俺の記憶の中に彼女はいない。この辺に中学は一つしかないから、俺と同じ中学に通っていない地元民なんていないはずだが。

 でも、だとするとどういうことだ? 電車通学だとしても、ここから駅まで歩くとなると三十分以上かかるし。もしかして、バスか? だとしたら、バス停まで歩いていくということになるか。

 ……とにかく、俺は自転車を取りに行くとしよう。











 彼女の歩くスピードは普通。一般的なものであり、速くも遅くもない。

 そんな、彼女から数メートル離れた位置で、俺は自転車を押しつつ歩いていた。


「いやあ、尾行ってドキドキしますな」


 横で同じく自転車を押しているのは蹴珠だ。正直、こいつを選んだのは失敗だっただろうか。でも、木窯は木窯で、めんどくさいとか言って途中でいなくなりそうだしな。かといって、霧茅と俺が組んで、残った木窯と蹴珠がペアになると絶対に二人でしょうもなく騒いで、相手にバレる気がするんだよなあ。


「いやあ、我輩、もしかしたら尾行すると興奮する人間かもしれないですぞ」


 まあ、蹴珠は誰と組んでもこうなるか。

 今回は、何もツッコまないでおこう。

 にしても、今日は時折強風が吹くな……。


「見えた!」

「えっ?」

「白っ!」

「マジっ!?」

「いや、黒?」

「はあ!?」

「いや、明るい色?」

「そりゃそうだろ! 風羅さんだぞ!」

「ぐふふふ」

「くっそ! 見逃した!!」


 超ショック! って、そんなこと言ってる場合じゃねえ!

 俺たちは、尾行してるんだよ! なのに尾行相手のパンチラに喜ぶとかダメじゃん!!


「もう少し真面目にやろうぜ!」

「そうですな。さて、カメラの用意を」

「……お前、最近スマホ買い換えたいって言ってたよな」

「心配しなくとも、ちゃんと送りますぞ」

「そういう問題じゃねえ! マジで壊すぞ!」

「そ、それは、困りますぞ」

「じゃあ、通報する」

「そ、そんな事したら、我輩の美少女フォルダが不特定多数の目に」

「触れねえよ! 見んのは警察の人だけだよ!」

「不特定多数の警察の人に!」

「それは仕方ねえよ! 警察だって、そんなもん見たくねえけど仕事なんだよ!!」

「そんなもんとは酷いですぞ! 我輩の宝物なのに!」

「それは、悪かったよ! ……あれ?」


 風羅さんいねえ!!

 馬鹿みたいに言い合ってたら見失った!!


「あらら、風羅殿いないですな」

「呑気だな! でも、そんなに長い時間馬鹿やってたわけじゃないし、多分何処かで曲がったんだろ」

「さすが、九賀羽殿! 冷静な分析、お見事ですぞ」

「そりゃどうも!」


 とにかく進もう。角を曲がって、更に直ぐその先の角を曲がるみたいなことをしてないなら、まだ十分見つけられるはずだ。

 俺と蹴珠は、早速再捜索を始めた。


 ……見つけた。どうやら、パンチラ地点から直ぐの所の角を曲がったらしい。

 こっちは、確か住宅街方面だったか? とすると、もうすぐ目的地に着きそうだな――。


「……アパートか」


 一言で言えば、質素なアパート。その二階に上がって行った風羅さんは、そのまま鍵を開け部屋へと入って行った。

 もし、例の噂が本当なら、この後上園もここにやってくるはずだが、どうだろうか?

 と、その前に移動せねば。もし、上園がここにやってくるとしたら、さっき通ってきた道と同じルートを通るはず。なら、そのルートと反対方向で、かつ何処か隠れられそうなところは……。


「公園か」


 ベンチはあれど、遊具はない。そんな、寂しい雰囲気を持つ公園があったので、俺たちはそこへと入って行った。

 さて、上園は来るだろうか。


「霧茅と木窯は、ちゃんと尾行出来てるかな?」

「うーむ、電話しますか」

「いや、メールだな」

「了解」


 言った矢先、先ほど通ってきた道から上園がこちらに向かって歩いてきた。

 まさか、噂は本当に……。


 鼓動を高鳴らせ、俺は必死にそうでないことを祈る。しかし、それを裏切るように上園は風羅さんが住んでいる質素なアパートへと向かって歩いて行く。

 現実を直視したくない気持ちに駆られながらも、俺は上園がアパートの二階に上がって行く姿から目を放せなかった。


「……あっ」


 上園は立ち止まった。それは、風羅さんが住んでいる部屋の隣の部屋の前だった。

 そして、彼は鍵を開け部屋の中へと入って行った。


「な、なあ、風羅さんは一つ隣の部屋だよな?」

「そうですな。我輩の記憶が正しければ」

「そうなのか?」


 不意な声に、俺は思わず身体を震わせる。声の主は霧茅だった。


「悪い、驚かしたか?」

「い、いや」

「それよりよ。風羅は、上園が入って行った部屋の隣に住んでるのか?」

「多分、俺の記憶が正しければ」

「我輩も同意見ですぞ」

「ったく、分かった。お前らは、そこで待ってろ」


 言って、木窯はアパートに向かって歩き出した。

 とにかく、一安心といったところだろうか。つい先ほど見た出来事である以上、俺の記憶が間違っている可能性は限りなく低い。まして、蹴珠もそうだと言っているんだ。多分、そうなのだろう。


「見てきたけど、合ってたぜ」


 早っ! あれ? さっき見に行って、もう見てきたの??


「これで、火七海が聞いた噂は間違ってたってことになるな」

「そうなるな。で、この事は皆には言った方がいいのかな?」

「いや、少なくとも水元(みなもと)には言ったらダメだろ。間違いなく襲撃に来るぞ」

「確かに」


 間違いなく、襲撃に来るな。


「情報を提供してくれた火七海には伝えた方がいいと思うけどな」

「ふむ。これにて一件落着――」

「いや、まだだ」


 そう、まだ。というか、一番最悪のパターンを回避しただけで、その次に最悪なパターンになってしまっていることには変わりない。

 風羅さんと上園は同じアパート、かつ隣同士の部屋に住んでいる。

 正直、なら何で今になって上園が風羅さんにアタックを始めたのか分かった気がする。


「なあ、霧茅。上園って最近一人暮らしを始めたんだよな?」

「ああ、らしいな」

「ん? なんで、お前がそんな事知ってんだ?」

「霧茅が、俺たちに上園の名前を教えてくれたついでに言ってただろ?」

「ああ……忘れた」

「俺も。(りん)が言わなきゃ気づかなかったよ」

「どうでもよすぎて、逆に憶えてたってパターンだよ」


 一人暮らしを始めた上園は、隣に住む風羅さんに一目惚れをした。だから、三年になって彼女にアタックを始めたんだ。時期的なことを考え、これが正解だろう。


「なあ、風羅さんは一人暮らしかな?」

「さあ? つか、それがどうかしたのかよ」

「いやさ、もし――」

「はっ! 分かりましたぞ! 一人暮らし同士なら、もしかしたら過ちが起きる可能性も!?」

「まあ、気軽に部屋に呼べるという点でな」


 過ちが起きる前に止めてやるが、さすがにここに張り込むわけにはいかないしな。

 しかし、これは予想以上にハンデになってきそうだ。


「取り敢えず、移動しようか。これ以上、ここに居ても怪しまれるだけだろ?」


 確かに、風羅さん、もしくは上園のどちらかが部屋からこちらを見ている可能性も否定出来ない。尾行がバレていたなら、警戒されても仕方ないからな。


 しかし、この展開は結構ダメージくるなあ……。


あとがき


True?


=Vlookup(”Wind”,$school:$home,1,0)


=A


=Vlookup(”Doragon”,$school:$home,1,0)


=B


=If(A*B=”True”,”mourn”,”doubt”)

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