41・冷酷な王子が私にだけ甘々です
あとがきに、大切なお知らせがあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
結婚式が開演──。
城内の大広間は、私たちの結婚を祝うために華やかに彩られている。
国中から貴族が集められ、彼・彼女らは各々、会話や食事を楽しんでいた。
前回の一件があったというのに、もうその影響はほとんど見られない。
参列者のみなさんの表情も柔らかかった。
……もう一度集めるとなったら、予定がつかずに、参加率が低くなると思ったんだけどね。
でも予想に反して、こんなに人が集まってくれたのは、素直に感謝だ。
「アリシア……俺は怖かったんだ」
そんな大広間の様子を眺めて。
不意に、隣に立つライナス殿下がそう口を開く。
「君の“中和”の力によって、魔神は完全に消滅してしまった。だから、俺の君への気持ちが、同時になくなってしまうんじゃないかと怖かったんだ」
「……? なんでですか?」
魔神が消滅してしまったからといって、ライナス殿下の気持ちが変わるとは思えない。
しかし、ライナス殿下は真っ直ぐと前を見つめ。
「八年前……俺はたった一度、君に手を握ってもらった。そして、『選定の儀』で、少し触れただけで君が八年前、俺が救ってくれた人物だということを直感したんだ」
「そうでしたね。でも、それが何故……」
「俺がアリシアに惹かれているのは、君の“中和”の力に起因しているのではないか──と」
ライナス殿下の言葉を聞いて、ハッとする。
前回の一件が終わり、落ち着いてから彼とある疑問について話をした。
それはずばり、『ルネヴァン家が光の聖女の末裔なら、どうして今さらアリシアに“中和”の力が発現したのか』についてだ。
魔神に力を借りたシルヴィアが言っていることが本当なら、何千年も時が経ち、いつしかルネヴァン家はその使命を忘れ、力を失った。
それなのに、どうして今さら──しかも、ライナス殿下に魔神が宿ったタイミングで、私が生まれたのか。
私たちは考えた。
『ただ、運が良かったわけではない。魔神が復活しようとしていたからこそ、“中和”の力目覚めたのではないか』
……つまり、魔神復活の危機に呼応するように、“中和”の力が再び私に宿ったとする説だ。
だとしたら、私は──無意識下ではあるが──魔神を消滅させる使命を受けて、生まれてきたということになる。
とはいえ、魔神も消滅してしまった今となっては、確かめようもない。仮説は仮説で終わったわけだけど……。
「……つまり、私とライナス殿下は元より、惹かれ合う運命だった。私は魔神を消すために、ライナス殿下は苦しみから逃れるために」
「そうだ。シルヴィアが魔神に惹かれた、共鳴という形に似ているかもしれないな」
「だから、私の“中和”の力があるから、ライナス殿下は自然と私を好きになったんじゃないか……ということですか?」
「その通りだ」
頷くライナス殿下。
「ゆえに、魔神が消滅してしまったとなっては、俺が君に惹かれる理由がなくなる。俺のこの気持ちも、消えてなくなってしまうんじゃないか……と」
「なら、なくなってしまったんですか?」
ライナス殿下を見上げて、そう問いかける。
だけど、彼は笑顔になって。
「──違う。あれから月日が経って、確信したよ。魔神がいなくなろうとも、俺は君に惹かれている。それどころか、前より増して俺の心は君を求めている。“中和”の力がなくとも、俺は君を好きになる運命だったんだ」
「──っ!」
感極まって、言葉を失う。
彼が意外とロマンチストだということは、分かっていた。
だけど、あらためてこんなことを言われると……。
自然と涙が込み上げてくるのであった。
「私も……あなたのことが大好きです」
声を絞り出すようにして答える。
すると、ライナス殿下は私の頭を撫でてから、
「皆の者、聞け!」
大広間にいる人たちに呼びかけた。
みんなの視線が、一斉に彼へ殺到する。
「魔神は消滅した! だが……魔神は、この魔法偏重社会の歪みによって生まれた存在だ。もし、また皆の心が歪んだ時、魔神は牙を剥くことになるだろう!」
魔力で全てが決まる世界──。
魔力を持たない貴族というだけで、虐げられ。
仮に魔法の才があったとしても、私の両親やシルヴィアのような歪んだ考えを持つ女性が育ったりもする。
ライナス殿下の母上──王妃も、ライナス殿下の内に秘める魔力に恐れをなした。
それらは全て、魔法に重きを置きすぎた結果だからだ。
魔法なんて、個性の一つでしかないのに。
こんな世の中でなければ、私も家族から捨てられなかったかもしれない。
「ゆえに、俺は宣言する! 魔力の有無によって差別する世の中を、きっと変えてみせる! 『無能』なんて呼び方も即時撤廃だ! 人生は、魔力の有無だけで決まらない!」
ライナス殿下の声が響き渡る。
「だから……皆、俺に付いてきてくれるか? 魔法で全てが決まる世の中を、変えてくれると誓うか?」
ライナス殿下がそう言うと、会場はしばし静寂。
だが、やがて。
──パチパチパチ──ッ。
割れんばかりの拍手が会場を包んだ。
この中にはもちろん、嫌々拍手している貴族もいるだろう。
だけど、ライナス殿下は堂々と宣言した。
それは果てしない道のりのように思えるが、誰よりも努力家で強い彼なら、きっと叶えてくれるんじゃないかと思った。
やがて拍手は鳴りやみ、神父が私とライナス殿下の間に立つ。
ライナス殿下が、そっと私の肩に手を添える。
「アリシア、愛している」
「私もです」
そして──私たちは、お互いの唇を合わせた。
それは意外にも、初めてのキスだった。
頭が真っ白になってしまうほど、幸せな時間──。
長いようで短い時間が終わり、ライナス殿下が顔を離すと、先ほどよりも大きい祝福の拍手が私たちに降り注いだ。
──家族に捨てられた私。
でも、今はとっても幸せ。
それはきっと、目の前にいる愛しい彼が『恋』という素敵な魔法をかけてくれたおかげだろう──そう思うのであった。
【作者からのお願い】
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
この作品の本編は完結となります。
(続きの話や番外編を書きたくなった場合は、続けるかもです)
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