第35話 冒険者カキツバタ、ナイフを振り回す
イングリッドの魔法練習に付き合い、無力感を味わってから数日後、僕は冒険者カキツバタの姿にお着替えして冒険者ギルドに来ていた。ここではいつもどおり早朝にも関わらず依頼を巡って熾烈な争いが繰り広げられている。
「ようカキツバタ!今日もナイフ講習か?」
「ああ。早く魔物共をぶった切ってやりたいぜ」
「そんときゃ一狩り行こうぜ!」
ここ1か月くらい出入りしているおかげで、何人か顔見知りの冒険者に声をかけてもらえるようになった。今は冒険者登録して日が浅く、実力もまだまだ足りないため討伐依頼を受けることはできないらしい。ナイフ講習などを経て戦闘技術を身に着けた暁には、必ず討伐依頼を受けてやる。
冒険者ギルドに常駐している教官に挨拶し、ナイフの扱いを指南してもらう。元々習って投げ出した王国騎士の剣術とは正反対で、体で覚えるのに苦戦していた。
「足を止めるな!――違う!そこは踏み込む所だ!」
対戦相手を想像して素振りしているだけだというのに、修正点が出るわ出るわ。その場にどっしり構えて真正面から打ち破る王国騎士流と被弾を避けてカウンターを叩き込む冒険者ギルド流。求められる要素がまるで異なるように感じる。
数十合と続く斬撃の応酬の果てに、教官の一撃を受け流し損ねナイフを弾き飛ばされた。意識が教官から逸れた隙に前蹴りをモロに食らい地面を転がる。痛みをこらえて立ち上がると、足元にナイフが蹴り飛ばされた。
その後も、ナイフを振るっては叩きのめされ、また立ち上がる。普段ヤタガラスにされ慣れていたおかげでダメージは軽微で済んだのは思わぬ収穫だった。手足の痣が目立ち始めた所で、講習は切り上げられてしまった。
「どうした、もう疲れちまったか?」
「吾輩相手によくそんな口が聞けるな…。それだけの傷では支障が出るだろう。神官を手配してあるから、大人しく治療されよ」
「……チッ」
教官がいなくなったタイミングてメビウスリングを使おうかと思ってたが、いきなり全回復というのも不自然だ。ここは大人しく厚意を受け取ろう。
いかにも聖職者といった見た目の壮年の男性から〈ヒール〉をかけてもらうと、打撲傷や切り傷が少しずつ治っていった。一度では完治しなかったので再度発動された。
名前:サウザー・アトラス・イーリスフロル 16歳
ジョブ:聖騎士Lv13 (3up)
生命力 95/101 (+45) (16up)
魔力 113/113(+25) (4up)
攻撃力 77 (+6) (20up)
防御力 91 (+10) (26up)
敏捷性 30 (+5) (5up)
知力 50 (+12) (3up)
【スキル】
持久力Lv1(new) 水魔法Lv3 剣術Lv2(1up) 格闘術Lv2 鉄の拳Lv2 毒耐性Lv2(1up) 守護Lv2(1up) 集中Lv3
【ユニークスキル】
メビウスリングLv1
【戦技】
グッドスリープ バーストナックル
剣術Lv2: 攻撃力+10 剣の扱いが少しだけ上手くなる
毒耐性Lv2:防御力+10 毒のダメージを軽減する
守護Lv2: 防御力+10 防御、受け流し、パリィの精度が向上する
持久力Lv1:生命力+5 長く踏ん張る力 スタミナがほんの少し増える
メビウスリングLv1:無限の輪を宿し力を循環する(生命力・魔力を1:1交換、最大値超過で超回復)
ステータスを開いた所、38まで減っていた生命力が95まで回復したようだ。ヒールの回復量は30~40ってところかな?セシリアにかけてもらった時は20前後だったのを見るに、スキルレベルと知力の差だろうか。
ステータスカードをポケットにしまうと、教官と神官が物申したそうにこちらを見ていた。
「ヒール2回で回復し切らないとは…。貴方、かなりの生命力を持つようですね」
「うむ。上からの指示がなければ実戦に放り込みたいな」
「……討伐依頼受けれないと思ったら、やっぱギルド側が止めてたか」
正直、ダンジョン演習や旧校舎探索を経てかなり戦えると自負している。にも関わらず力不足だと言われ続けていたのは、冒険者ギルドが僕の素性を知って抑えていたからだった。詳しく聞くと、スキルレベルを限界まで上げて伸びしろがなくなったら実戦でジョブレベルを上げ成長させる、というのが冒険者ギルドの方針らしい。
具体的には、
・スキルレベルを4に上げる為にジョブレベル20必要
・通常スキルの保有数は10
という情報を得た。
エクストラスキルなるものやスキルスロットが倍のジョブもあるらしいが、今は関係なさそうだ。ユニークスキルは別枠っぽいので残りスロットは3つ…いや新たに得た【持久力】を抜いて2つか。
どのスキルがいいかはヤタガラスと相談し、今は既存のスキル強化と戦技の獲得に集中するのが良さそうだ。休憩を終えた頃には二人とも解散しており、残された僕は手持ち無沙汰になった。まだ体力は残っているし、街中で受けられる依頼をこなすとしよう。
掲示板から依頼書をはぎ取り受付嬢に渡す。その内容は、現在使われていない屋敷の清掃だった。慣れない作業だったこともあり、一通り終えたのは完全に日が落ちた時間帯だった。




