第16話 久しぶりに帰ったら
7日間にわたる依頼を終え、冒険者ギルドから帰還した。
報酬は銀貨十数枚と、日本円換算で20万程の金額を受け取る。後で知ったが、ダンジョン探索以外の依頼が割高になっているようだ。
ホクホク顔で帰宅し、メイフラワー公爵の元へ挨拶しに向かう。執務室の扉をノックし、返答を待つ。
「第二王子サウザー、ただいま帰還しました」
「婿殿か……入りなさい」
扉を開けた先には、どこかくたびれた様子のメイフラワー公爵が腕を組んで待っていた。もしかして、僕がやらかした後始末のせいで疲れてしまっているのだろうか。だとしたら申し訳ない気持ちになってきた。
僕が学園をサボっている間、学園では禁制品の取り締まりが見直され、探知の魔道具を新調された。どうも危険物検知の魔道具が故障していたようで、配置し直した結果、隠された危険物がゴロゴロ出てきてしまった。
魔銃に爆発物、精神に作用する魔道具等、今までの警備が何だったのかというレベルだったようで、発覚時は阿鼻叫喚の様相を呈していたとのことだ。
「ずいぶん大事になっていたのですね。お疲れさまです。」
「学園運営はヴァ―ルハイト公爵が担っているから私は何もしてないが…ああそうだ、セシリアには会ったか?」
「まだです。…一体何が?」
「その目で確かめてみるといい。地下室へ行きなさい」
メイフラワー公爵が心労を抱く原因は僕のせいではないみたいで安心。それはそうと、セシリアに何があったのだろう?
彼女がいるであろう地下へ移動する。明かりが着いている部屋に入ると、そこには、白い液体をがぶ飲みするセシリアと、怪しげな大釜をかき混ぜるヤタガラスの姿があった。
「……あ、サウザー様、帰ってきたのですね」
「ああうん、ただいま。…で、これは一体どういう状況だい?」
「うふふ、よくぞ聞いてくれましたの。では、こちらをどうぞ」
そう言って、白い液体の入ったビンを手渡してくる。フタを開けていざ!
「……⁉何だこれ、牛乳、なのか?」
口に含んだ瞬間、牛乳独特の味が広がっていく。だが驚いたのはその濃度だ。日本で飲んだものの数倍濃厚な味だったのだ。
一瓶で胃もたれしそうだ…
何とか飲み干したその時、大釜からボンッ!と爆発音が響き渡った。
「よーっし、完成!セシリア、新しいの出来たぞ……ってサウザー、おかえり」
「ただいま。これ、君が作ったのか」
「いやあ、近代の錬金術って凄いぞ。何せ錬金釜に素材をぶち込んで混ぜるだけで道具が作れるんだからな」
この濃厚牛乳はヤタガラスが錬金術で作ったものらしい。
学園を案内したときは錬金術に対して消極的だったはずだが、試しにやってみたらドはまりしたようだ。彼女の知る錬金術はだいぶ古いタイプで、儀式みたいに複雑な工程が必要だったとのこと。
ではなぜ牛乳をチョイスしたのかというと、「牛乳飲むと背が伸びる」とセシリアに吹き込んだ結果、とびきりのものが欲しいと思ったのが発端だった。
そうして出来たものが、常識はずれの濃さの牛乳が生み出されたというわけだ。
「しっかし、こんなの飲み続けたら腹壊すだろ。セシリア、大丈夫かい?」
「ご心配には及びませんわ。わたくし、【聖女】ですので!」
どういうことだよと思ったが、どうも【聖女】は病気にならない体質のようで、腹痛や胃もたれ等なく飽きるまで飲み続けているとのこと。
そう聞くと、何だかずるいな。
余談だが、ヤタガラスは二日で腹を下したらしい。後でメビウスリングで腹整えておこう。




