新入生オリエンテーリング(1/2)
入学して一週間。
初日こそ王子暗殺未遂事件がちょっと起きたものの、その後はわりと平穏に過ごしていた。
朝、伯爵夫人は言いました。
「この調子で平和に過ごせるかもしれないわ!」
エリックは嫌な予感がした。
今日は学園に隣接する森で新入生オリエンテーリング!
五人グループに別れて、指定の薬草や果物を採取したり、課題の初級魔法を使ったりしながらチェックポイントを通過するの!
なんの因果か王子や巻き毛様と一緒のグループになりかけたものの、クロワッサンみたいな渦巻きを何本も生やしてるご令嬢、ジャネット・イゴール侯爵令嬢と替わってあげたの。
甲高い声過ぎて聞き取れなかったけど、替わって欲しかったみたいだからね。キラキラ男子のいない女子だけグループ嬉しい!
友達でっきっるっかっな~♪
オリエンテーリングは順調だった。
仲良く協力しあい、おしゃべりしながら楽しく過ごしていた。
チェックポイントを三つ通過し、あと一つというところでそれは起きた。
森の雰囲気が、空気が、温度が変わったのだ。
見えていたはずの学園の塔も消えた。
「ここ…どこ…?」
現在地を示す魔道具の地図は反応がなくなった。
つまりここは学園に隣接する森ではないということになる。
グループの女の子達が不安に震えだした。
マリッサもうつむきプルプルと肩を揺らしている。
ふ…ふふ…ふふふふ…
冒険キターーーー!
こんなこともあろうかと!と備えた物資が大活躍の予感!
はい皆さんご一緒に!備えあれば憂いなし!
ーーーーーー
「マリッサの位置情報が消えた!」
チェックポイントで手伝いをしていたエリックが真っ青な顔で叫ぶ。
すぐ父と母に連絡を取るが、やはり位置情報は消失していた。
「迷子になっただけじゃないのか?」
「地図があるからありえないだろ。」
「もう少し待ってみたほうが…」
「学生達に何かあったら大変だ!今すぐ捜索を…」
父兄バカがと小馬鹿にしていた教師達も、一グループが忽然と消えてしまったことに慌て出す。
「迷いの森にはいってしまったのかもしれない。」
年配の教師が戸惑いながら告げた。
この森は精霊のいたずらで、稀に精霊の森に繋がってしまうのだと。
ただもう50年くらい起きてなかったので、すっかり忘れられていたと。
エリックは確信した。間違いない。それだ。
だってマリッサだもの。
「ど、どうしたら戻ってこられるんですか!?」
「精霊の気分次第だと聞いている。」
「そんな!」
ひとまず生徒達は帰し、教師達で捜索をしつつ学園長の判断を仰ぐことになった。
ーーーーー
「体力の消耗を防ぐために、ここにテントをはりましょう!」
「マリッサさん?テントなんて誰も…えっ!?」
森の中の少しひらけた場所で、愛用のマジックバッグであるウサギちゃんポシェットからワンタッチ式のテントをだす。
土魔法でササッと地面をならし、ポンッと軽快な音と共に五人が入れるサイズのテントを設営する。
もちろんマリッサ発案、父開発のノービターク印テントである。
テント自体がマジックバッグになっていて、テーブルや食器、寝袋などが中にセットされている。
今日のオリエンテーリングが五人グループとのことで、しっかり五人用を持ってきている。変なところで気のまわるマリッサであった。
魔物避けも忘れず設置し、固まってるメンバーに声をかける。
「まあまあ。とりあえず中にはいって。
空腹だと悲観的になりやすいから何か食べよ?」
薄暗くなってきていたのでランプをつけ、お湯を沸かしお茶を淹れる。
「ご飯前だから軽くおやつね。」
皆にお茶とフィナンシェを配る。
「え?え?テント?お茶?ご飯?」
マリッサの瞳がギラーンと光った。
「ふふふ…。ご説明いたしましょう!」
そこから始まる怒涛の「備えあれば憂いなし」の心構えと装備についてのトーク。熱い夜の始まりだった。ご飯はどうした。
「私は夜営セットが欲しいな!」と、騎士志望のイザベラ嬢。
「私はお茶会セットがいいわ!」と、可愛い都会派のニーナ嬢。
「全部入りウサギちゃんポシェットくださいませ!」と、豪商の娘のミーフェ嬢。
「まって!ねえ皆待って!?」と、田舎出身しっかり娘のシーラ嬢。
語りたいだけ語ってどや顔のマリッサが返事をする前に、マリッサのお腹が盛大に鳴った。
「………」
マリッサの羞恥とひきかえに皆ちょっと冷静になれた。
「とりあえず、ご飯にしよっか…。」
エリック「ちなみに三年帰ってこなかったら卒業ということには…」
学園長「なりませんな。」




