第十一話 血統主義
※ 今回の話には残忍、残酷な表現が含まれます。
※ 「第二章 第九話 伝聞過去」にて玲菜が優里菜に使わなかったような表現です。
紅の三人に連行された優里菜たちは、大樹が落ち着きを取り戻したところで影の拘束を解かれ、その後は美怜の後ろを三人は大人しく付いて行った。逃亡を図ろうとしても後ろには白蓮と勝炎が控えており、三人別々の方向に散開しても一瞬で捕まりそうだった。ちなみに光の槍は白蓮に没収されている。
ホテリエが客を案内するかのように上品に、そして美しく振る舞う美怜に連れてこられたのは、試験官たちが寝泊りに使っていた豪勢な洋館ーーの地下空間。
そこは太い石造りの柱が整然と立ち並び、館の面積と同等程度でかなり広く、見上げる天井も高い。外の熱から隔絶されていて、エアコンの効いた部屋のように涼しい。
ここには、昇格試験の受験者と試験官が無色透明のガラスのような結界で何十個もの区画に分けられており、数人ごとに幽閉されていた。その彼らは、特に受験者は月永と瀬戸が連れて来られたのを見て消沈した。受験者随一の実力者でも歯が立たないのだと。どう足掻こうがこの状況は打開できないのだと。
光はその絶望を感じ取りつつ、結界の外にいる二人の男の内、メガネの男を見て黒幕の正体にうんざりしかけた。
(ちっ、やっぱり黒幕は永瀬んとこの……?)
昇格試験の運営委員長、永瀬義朋を結界の一区画に見つける。片膝を立てて床に座り、敵を射抜くような鋭い視線を彼の側近であるはずのメガネの男・細川頼人に向けていた。加えて、義朋の隣の区画で斯波康臣が仰向けに倒れている。
その光景は光に仲間割れを臭わせた。頭の片隅にあった、また職権乱用した義朋が特務隊を使って何かしでかそうとしている、という予想が外れた。
光たちは美怜に他の人質と同じように一区画に入るように促され、それに従う。そして入った瞬間に、あの特有の気持ち悪さに見舞われた。真夏の太陽を浴び続けた車の中のような、あるいは放置され続けたサビ・カビ臭い廃墟のような、我慢すれば居続けられるが居続けたくない空間。
魔力だ。この結界は天術ではなく、魔術に依って構成されていた。
入り口を振り返るも、既に脱出不可能な状態であり、美怜は背を向けていた。
頼人が美怜たちに労をねぎらう。
「ご苦労様でした」
声は結界を素通りするようだ。光たちにも普通に聞こえる。
「これから始めるのかしら?」
「いいえ。既に始まっています」
「あらそう」
「一応、全員連れてきてくれたことですし、状況説明でもして差し上げましょうかね」
頼人が右の中指でメガネを直しながら、横目に勝炎を見る。
どう聞いても殺害を咎めていた。
「へいへい、悪うござんした。俺は上にいるぜ」
勝炎は肩をすくめると、出口に足を向ける。
白蓮も義朋を氷のような視線で一瞥し、勝炎の後に続いた。
「おや、居なくていいのですか?」
「終わるまで手は出さない。そういう契約だ」
白蓮は頼人を振り返ることなく答え、美怜と共に結界だらけの地下室から出ていった。
紅三人が居なくなると、一段と畏怖を覚える圧が結界越しに全員へ伝わっていく。勝炎や白蓮のプレッシャーとは違う、心の奥底にずしんと動かすことの出来ない重い錘を置かれたような感覚が。
その主である男は両腕を組んで柱に寄り掛かり、一人目が連れてこられてから一言も発さずにじっと時を待っていた。
初老に見える白髪の男。その顔つきは、かつての男を知っている者も彼と判別付かないほどに変わっている。厳しくも優しい面影はなく、混沌のように黒く濁った眼の一瞥は誰をも恐怖させた。
その白髪の男に、頼人は目的の披露を促す。本名を乗せて。
「それではどうぞ、櫻守正樹殿」
一瞬、場がざわついた。「え」という声も漏れる。
しかし、正樹が意図した訳ではないが、彼の声で静かになった。
「貴様に任せる。補足があればする」
「承知しました」
頼人は執事のように右手を腰に、左手を胸に当てて正樹に一礼した後、受験者と試験官に語りだした。
「さて、ではまず簡潔に目的から」
全員に聞こえるようにボリュームを上げた。反響し、すこしばかりエコーがかかる。
「我々の目的は、血統主義の撤廃。皆さんはその為の人質です」
頼人は人質の三種類の反応を見てニヤリと口角を上げた。頼人たちの思った通りだからだ。
そんなことの為に? と憤慨・悲しむ者
ふざけるな、と反抗の意思を持つ者。
そして、頼人に賛同する者。
「今現在、各地の天宿で私たちの賛同者が各々の天守に選択を迫っています。このクソったれの因習を止めるか否かを」
因習ーー古くからの伝統、風習や習わし。天子協会に定められた制度でも、本部からの命令でもない。決別を覚悟すれば止められる"為来り"。それが血統主義、血による力の継承と血統に依る権力が決まる。
「ですので、今ここにいる『止めない』と選択した天守の天宿所属の人に死んでもらいます」
頼人たちの思想に心の中で賛同した者の顔色が変わる。彼らは自分のところの天守が血統主義か否かなんて嫌というほど知っている。血筋であからさまに態度を変える天守、口では差別していないと言いながら行動が伴わない天守、天宿の血筋優遇の空気に従わざるを得ない天守……その天守たちが彼らの命で態度を変えるとは思えなかった。
頼人は、未だに凝視し続けてくる義朋にも釘を刺す。
「義朋様、貴方も例外ではありませんよ」
義朋の顔色が変わることはない。一挙一動を見逃すまいとするように頼人を観察している。
その実、義朋は裏切った頼人の目的とそれを達成する手段について思考していた。自分の懐刀の一人が真逆の思想を持っていたことに少なからず動揺したが、その手段については、まだまだお粗末で落胆しそうだった。"撤廃"など、口ではなんとでも言えるからだ。
「……貴様らしくないな、そんな穴だらけの計画は。誑かされたのか? 今ならまだーー」
「言い忘れてましたが、黒の議決以外は『止めない』と同義ですので」
ざわつく周りとは反対に、義朋の考えは変わらない。
全国に七人しかいない最高天位:黒。確かに彼らの議決は支部連合の意思決定だが、それもまた覆すことも可能。黒の過半数は血統主義であり、今回"撤廃"を議決したとしても、それを覆すことは不可能ではない。
何故なら、義朋自身がその黒の一人でもあるのだから。
そんなことを頼人が理解していないはずがない。
「……」
「刻限は零時。中々ゾクゾクしてきましたでしょう?」
義朋は懐疑的な視線で頼人を射抜くかのように睨み続ける。
義朋のもう一人の懐刀である康臣が突然、あっさりと倒された。紫に匹敵し、朱の中でも指折りに実力者が、である。義朋が無理に脱出したとしても、面従腹背だった頼人の裏側を見破らなければ、その脱出すら手の平の上の可能性があった。
刃物のような視線を受け続ける頼人は、安全地帯で意にも介さずに肩をすくめる。
「これでも六時間も延したのですから感謝してほしいですね?」
義朋が人をも殺せそうな視線で頼人を睨もうとも、所詮は檻の中の虎。
義朋を始め、囚えた天子を閉じ込めている結界は、天力の発生を打ち消す効果を施されていて、そうそう簡単に出られる代物ではない。頼人が協力者の紅を使って実証していた。
その二人の掛け合いに優里菜が割って入る。
「それだけですか?」
ぎょっとしたのは傍に居た大樹と光だけではない。頼人も声を詰まらせる。
圧倒的劣位の状況下で強気の返し。優里菜の目に絶望はなかった。
「これは驚きました。まさか"月永"からそんな言葉が出てくるなんて」
それはきっと、捕虜になっている者たちも同じ思いだ。星永ならいざ知らず、血統主義の親玉のような月永がそんなことを言うなんて。
頼人は一つ息を吐いてさっきまでの調子に戻る。そして、かつて月永と同じ場所に居た正樹に話を振った。
「お聞きになりましたか、正樹殿。何もしなかった"月永"が『それだけ』だそうですよ」
正樹は面倒そうに仕方なく口を開く。
「……"月永"は、本筋の血と権力がほしい分家が躍起になっているだけで、直系自体は血統主義の中でも穏健派だ。だからこそ、平気で見て見ぬ振りもする」
「どういう意味ですか」
優里菜が訊く。優里菜が知っている兄も両親も祖父も見て見ぬ振りなんてしないから。
「やはり知らないか」
「教えてください」
優里菜は食い下がる。
「知らないまま、無理解のまま、貴方がたの行為だけで貴方がたを敵だと決めつけたくありません。この手段を取らざるを得なかった理由があるはずです」
これは今までの事件から、優里菜が至っていた考えだった。
ギレーヌ・ラインの転換点は、夫と子供を殺されたことだったーー復讐後に目的を見失う。
クルス・マルティネスの起点は、自分たちの境遇の理由だったーー学びの過程で天子全てが敵に見える。
堕天子の欺瞞は、一人の女の子に生きていて欲しかったからーー止め時を逸し、事件に繋がる。
優里菜には正樹も彼らと同じように見えた。
自分の欲望が正しく、その行いが正義だと謳い、平気で悪を為す強行派と成り果てたソリアス強硬派とは違う。
それが許されざる事であり、誰かを害することだと分かっていても、それでも成さねければならないから為す。
その根底を知らなければ、ただの敵のままだ。
「だからそれを教えてください」
捕われているとは思えないほど、強い意思を宿した碧い瞳。
それは正樹の口を開けさせかけたが、正樹は瞼を閉じ、対話を振り切った。
「すべて終わったらな」
「正樹さん! ーーっ?」
急に力が抜けたかのように足がふらつき、両手と膝を付いてしまった。
「優里菜さん!」
「大丈夫か」
「うん……?」
大樹と光は隣にしゃがみこんで寄り添い、優里菜は体の異常を確認するも、結界の気持ち悪さ以外に特段異常が感じられない。自分の身に起こったことに首を傾げると、頼人が忠告してくる。
「あまり無理しない方が良いですよ、月永のお嬢さん」
皮肉付きで。
「その結界は漏洩している天力も打ち消すようにできています。体の使い方にご注意を」
天子は天力を、一般人と魔術師は魔力を微量ながら無意識レベルで体外に漏れ出ており、意識的に漏洩する力を遮断しなければ、一挙一動に至るまで天力を使っている。この結界はその天力をも打ち消す為、一○○%筋肉で動かさなければ、うまく力が入らないような感覚に陥る。
「それにそんなに慌てなくても、我々が何故血統主義なんぞを止めさせたいかは、そこのご老人から話を聞けば理解してもらえると思いますよ……ねえ、義朋様?」
義朋の眉間のシワが深くなる。頼人を厳しく睨み続けるだけだった義朋にもついに苛立ちが浮かび始めた。
「血を残す意味を、繋ぎ行く意義を理解していないから、撤廃など軽々しく言えるのだ、貴様らは」
「意味? 意義? クク……ハハハ…………支配欲を満たす権力が欲しいだけでしょう! 貴方は!!」
閉ざされた地下の空間に頼人の叫びはよく響いた。しんと場が静まり返る。
頼人はすぐに「失礼」と咳払し、切り替え、人質の身になっても強気のままの義朋に問う。
「では伺いましょう、永瀬家前当主に。血統主義、無理にでも血を残す意味とは、子を作る意義とは」
義朋は突っぱねようとした。頼人には散々伝えてきて、裏切った敵に答える義理はないから。
しかし、同じ囚われの身となった多くの若い天子の視線を受けて考えを変える。
これも教導の一つだと。
深く息を吸って全員を一瞥すると、呪言のように、または祝詞のように、己の信念を語り出した。
「我ら天子の絶対数は少ない。少ないが故に、我らは強く在らねばならぬのだ」
低い声。口も大きく開いている訳ではない。だというのに、その声はよく通り、誰もが耳を傾けてしまう。
「少なく、弱く、気味悪い異端種は絶対的多数によって排斥・淘汰され、いずれ消えゆく。それが自然の理」
義朋の話は自然界のみならず人間社会をも指していた。個性の範疇に当てはまらない"普通ではない"は、それだけでその集団の中で生きるにはハードルが格段に上がる。
それを知っているのは優里菜だけではない。思い当たる節のある者の顔が少し陰る。この天子たちは、無能だから、源子だから、ではないことを知っている。一般人として生きるには、天子であること自体が足枷になることを知っている。
義朋は力強く断言する。
「だから必要なのだ。そこに在り、揺らがず、折れず、何ものにも犯されない強き大木が」
天子が天子である為に、排斥され細々と行き繋ぐのではなく、堂々と胸を張れる誇りある集団である為に。その為の天子協会という組織があり、宿り木の天宿がある。
義朋の言論は、ここまでは主義主張関係なく、あらゆる天子が認める意見だった。しかし、ここから徐々に逸れていく。
「これは一代では意味がない。連綿と末永く後世に続いていかなければならない。その強さを保ったまま……いや、より強く」
天子の絶対数の少なさを補うには、その数に対抗できるだけの最低限の数と力を保持しなければならない。
人口が増えるのならば、それに比例して天子の数も増やさなければ、いずれ淘汰が待っている。
そして、天子同士の子供はより強い天力を持つ傾向にあり、逆は天力すら持たなくなる。これは周知の事実。
「その為には、無駄な血を交えている余裕など無い。我らがこの世界で排斥を逃れ、普通に紛れて生きていくには、血によって頑強に成熟した大木が、強き血の一族が必要なのだ」
全ては天子の為。同朋の為。一つの血統が断絶した時、拠り所となっていた一本の大木を失うことを意味する。
それを守り、育み続けることこそ血統に拘る意義。
この為ならば、いかなる犠牲も厭わないようなニュアンスも含まれるように聞こえもしたが、義朋の説明に感じ入る者もいた。やはり血統に裏付けされた統制も必要なのではないかと。支えとなる幹があるからこそ枝葉は風に揺られることができるのだと。その幹こそ五大支部であり、その天守を代々務める一族だった。
こうした今まで残ってきた実績こそ、多くの天子は血統主義を否定しきれない。
頼人が乾いた拍手を贈る。
「御高説ありがとうございました、義朋様。確かに我ら天子、天宿という拠り所がなければ一般社会から弾き出され、生きていくことすら一苦労でしょう」
天会が存在する今でさえ、その網から取り零される天子は存在し、彼らの生活は苦難の連続だ。逆に言えば、天会に引っかかりさえすれば、そんな彼らを助けることができる。
「しかし、だからといってーー」
眼鏡にのブリッジに指を当て、頼人が本題を投下した。
「時代遅れの望まぬ婚姻の強制、従わなければ拉致監禁、脅迫に暗殺、連日の集団レイプっていうのは、許されないですよね」
男は息を呑み、女の血の気が引く。
信じられないものを見るような目が頼人と義朋に向く。
「ほら、みんな引いてますよ、特に女性の方々」
「……知らぬな」
「そんなはず無いでしょう。被害者の僕が言うのだから間違いありません」
「……何?」
「僕の本当の名は永辻信彦。妻を奪われ、僕自身が種馬にされた哀れな男ですよ」
頼人が口にした名を聞いた義朋の目が、僅かに大きく開き、すぐに戻った。
「ーー知らぬ。誰だ貴様」
「ふふ、僕のことは、まあいいでしょう……けれど、その成果の一人がお孫さん、特務隊No.9[青狼]の永瀬蓮王、ではありませんか」
「……」
「息子さんのお嫁にと、既に心に決めた男性が居た冬城家のお嬢さんを指名して、彼女に駆け落ちされた後に執拗に追いかけて、拉致したんですよね? 白蓮君共々。父親を殺してまで」
誰かが息を呑む音が聞こえた。
「知らぬな」
「従わなかった腹いせに、輪姦までさせて?」
驚きを通り越し、恐怖を覚える者多数。
命を奪うだけに留まらず、その魂まで殺してみせるその残虐性。同じ人間として見れなくなってくる。
「別の女性と結婚していた息子さんにも参加させて、偶々息子さんの種が当たったからって、その子供を息子夫婦に育てさせるって中々の狂気ですよ」
「知らぬ」
「まあ、そこまでして生まれた蓮王君よりも白蓮君の方が天力に恵まれているところは、皮肉が効いていますがね」
頼人は話し相手を義朋から人質の天子、少年少女へと変える。
仮に自分たちの要求が通った時、この人質は解放しなければならない。その後、血統主義に傾けさせなない為に、闇の側面を見せつける。
「こういうことをたくさんやってきた訳ですね、この男は」
青少年の気分がとことん落ち込んでいく。
頭が痛い。脳みその内側に人間の醜悪と悪辣が塗り込まれる感覚だった。どこかで起こった事件として知っていた犯行と犯罪を、今、自分事として叩きつけられている。同じ人間を、どうしてそこまでできるのか。ある意味、命を奪うよりも残忍だ。
その所業から目を逸らすかのように、視線を頼人から床に移す者、俯く者があった。
それを許さないとばかりに、頼人は唐突に手を大きく叩く。その音は全員の鼓膜を直接叩いたように大きく、彼らの全神経を頼人に向けさせる。
そして頼人は、優里菜を指差し、高らかに・にこやかに告げる。
「『はい、受験者の少年青年の皆さん。そこの月永を孕ませたら一族の厚遇を約束しましょう!』」
音無きざわめきが起こり、残響する。『この男は何を言っているんだ?』と。
頼人は今までの主張と真逆のことを頼人は言ったのだ。
何を言ったのかすぐには理解できなかった者も、周りの異様な雰囲気に聞き間違いではなかったと『欲』の部分が理解する。
「『少なくとも一回出せば、昇格の確約、そしてここから出してあげます、人質の役目から解放してあげます。けど、何もしなかったら……わかりますよね』」
優里菜は守るように自分の肩を抱き、光と大樹は優里菜を守るように前に出て、頼人を睨みつける。
他の男の天子に対して明快な飴と鞭。
絶望的な状況から垂らされた一本の糸。
はったりの可能性を消すように頼人が補強する。
「西の者なら我らの根がどこにでもあることを知っているはず。さあ、どうしますか?」
頼人の、永瀬の管理下の支部に所属している者はその意味を嫌というほど理解できる。
故に、家族を守る為に畜生の咎を負うのか、自分は人道を守ったまま家族が彼女と同じ目に合うかの選択に迫られる。
頼人の思惑を各々推し量りながら、天秤が揺れ動く。自分さえ畜生に落ち、起こった事を隠し通せれば……隠し通せずに自分だけが後ろ指を差されさえすれば、家族は無事であり、気品あるあの月永をーー
「などと、事前に別室で伝えておく訳です。彼女たちを犯した男も人間ですから、欲はあれど理性もあります。その理性を『仕方なく』という言い訳を用意してあげることで外して来たんですね。……あ、もしかして手を挙げそうになりました? 良かったですね〜。もし挙げてたら、今すぐに、僕が、殺してあげてましたよ」
いくらか高い声色とは反対に頼人の目は笑っていない。手が床や膝から離れた天子を見る目は侮蔑だ。彼らを蔑み、経験者として脅迫の如く警告する。
「ちなみに男性諸君、逆、もあるんですよ。出し続けるだけの種馬がどれだけ辛いか、解りますね?」
最年少組や性に疎い少年以外は、干からびても尚絞り出される自分を想像し、はるか遠くを白目で見た。が、それでは不足だと頼人が危機感の薄い男共を震え上がらせる。
「テクノブレイクで死ぬっていうのは都市伝説ですが、僕ら天子の場合は都市伝説ではなく本当に死にますからね。深刻な天力切れで」
青少年はようやく女性の半分くらいには恐怖心を抱き、助けを待つのだった。




