次期公爵教育
夕食は、お父様が元気なころに一緒に食事をしていた食堂で取ることにした。
お父様が病に倒れてからはお父様の寝室で。
亡くなってからは、一人での食事が寂しくて、自室でハンナと一緒に食事をしていた。自室だったのは、使用人が一緒に食事なんて貴族としてあり得ない行為だったから、人目のない自室で食事をしていたのですよ。もちろん、ハンナ以外の使用人も知ってたけれどね。
よく考えれば、ハンナには自分の家族と食事をとる機会を奪っていたということになるよね……。悪いことをしていたわ……。
今まで気が付かなかった。子供を持とうと思ってはじめて気が付いた。
うん、人間、子供がいると成長するっていうけれど、本当よね。
服装はハンナのアドバイス通り、袖が邪魔にならないように短い物にした。
小さな子供のように食べ物で汚すことはないだろうけれど、緊張して落としてしまう危険も考えて、親としてみっともなく動揺しないように汚れてもよいちょっと着古した茶色のドレス。少しだけ布が毛羽立ちはじめているところがあるけれど、大丈夫よね?
ちゃんとセバスにアルバートも楽な服装で大丈夫だと伝えてもらっている。
そうそう、初対面のときに護衛と間違えたのは、何も思っていたよりも大きかっただけじゃないのよ。
来ていた服装が護衛に似てたの。
それもそのはず、なんと、うちの子、……ああ、もう、うちの子って言ってみたかったからいいわよね。
まだ正式には養子に迎えてないけれど、絶対養子になってもらうし。
うちの子、あの、狭き門である親衛隊養成学校の入学が決まっているんですって!優秀だと言っていたけれど、とんでもなく優秀よ!
うちの子すごい!ふふふ。ふふふ。
あら?でも、親衛隊養成学校って確か2年。卒業したらどうするんだろう?
やっぱり親衛隊になりたいわよね?
次期公爵としての教育とか……領地運営とか……。しばらく、私が女公爵としてやっていくしかないわね。親衛隊の人たちはだいたい10年から20年ほどで退くと聞くし。その後は軍部で司令官などの任についたり、貴族の私兵ならぬ私騎士になったり、家業を継いだりと、色々のようだけれど。20年くらいは、私が頑張れば済むことよね。
ああ、でも20年の間に、アルバートが結婚して子供が生まれれば、私の、孫!孫に領主教育をして、父上を助けるのですよと言うのもありか。……ぐふ。ぐふ。こうなってくると、18歳だったことはありがたいわね。早ければ5年くらいで孫の顔が見られるかも!
やばい、楽しすぎる!ぷにぷにほっぺの赤ちゃんをわが手に!
親より祖母の方が、甘やかす権利があるって、偉い人も言ってた!甘やかしたいだけ甘やかしていいかわいい孫!夢が広がる!
この時のリーリアは、孫の顔を見るのに20年近くの時間を要するとは思っても見なかったのである(天の声、意味深)。
ご覧いただきありがとうございます。
つい、漏れだす天の声。
あ、察し……でお願いいたします。




