第3章☆30年前
宝くじ売り場で30枚買うようにとのことで、買ったはいいけれど、抽選日と引換開始日は先だったので、タイムマシンを微調整して2週間くらい進める。
「あー、ダメだ!私の身分証明書ここで使えないし、住所所在地証明できない!」
確かに宝くじは大当たりをひいていたが、今の私は引換ができなかった。
タイムコーポレーション、もう存在してるのかしら?あそこしか頼れる所思い付かない。
職員の人にもらっていた手紙を読み返す。情報不足だよー。
とりあえずタイムコーポレーションの所在地へ移動。
民家・・・だなぁ。
「冴子さん」
「えっ?きゃっ。浩次さん!」
40才の浩次さんがタイムマシンの隣に立って覗き込んでいた。
「なんで?」
「・・・だって声かけたら逃げたでしょ?俺、ショックでしたよ」
「ごめんなさい!」
「タイムコーポレーションに行ったら、もう冴子さん、過去に跳んでたから。俺はタイムマシン呼び戻してもらったら誰も乗ってなくて、それで、俺がそのタイムマシンに乗って今へたどり着いて」
どおりであのときタイムマシンがなかったはずだ。
「帰りましょう、30年後へ」
「ちょっと待って。ここでタイムマシンを開発者に見せないとタイムマシン自体が存在しなくなってしまうかも!」
「えっ!」
「タイムコーポレーションの創業に必要なお金も払っておかないと、タイムコーポレーションも存在しなくなってしまう」
浩次さんは天をあおいだ。
「なんてこった。会えたらそれでうまくいくってたかをくくってた」
浩次さんは宝くじの話を聞くと、自分の叔父に当たる人の助力を請うように提案した。
「生真面目な人だったから大丈夫だと思います」
「わかりました」
二人で二台のタイムマシンで浩次さんの叔父さんの元へ向かった。
「タイムコーポレーションの創業用の費用とタイムマシンがそろってるわけです」
浩次さんの説明に、叔父さんは目を白黒させていたが、落ち着くと、大学の知り合いと連絡をとって、タイムコーポレーションの特許を取った。
「こんにちはー」
小学生の男の子が滞在中の私と浩次さんに挨拶した。
「俺?」
「10才の浩次さん?」
なんてかわいいの?思わず抱きしめてほおずりしてしまう。
40才の浩次さんがじとーっと見ている。
「おばちゃん、きれいだね。誰?」
「冴子よ」
「冴子さん」
10才の浩次さんがほっぺたを赤くして走り去った。
見送っている私に、つんつん、と40才の浩次さんがつついた。
「冴子さん、なんで今の俺にはハグしてくれないんですか?」
「はいー?」
ええと、なんで、かなー?
「私、お茶入れて来ます」
そそくさと逃げる。浩次さんは一人悶えていた。