第2章☆タイムマシンの行方
浩次さんが歌うのをうっとりして聞いていた。バンドのメンバーも浩次さんも時々音が外れるんだけど、それがかえって味になっていた。
情熱的な歌。バラード。オリジナルの曲を数曲。
パチパチパチパチ・・・。
拍手する。
普段は観客がいないらしくて、青年たちは嬉しそうだった。
「お姉さん、浩次のなに?」
「気を使わないで。おばちゃんは、20年後からタイムスリップしてきた浩次さんのファンです」
「へぇー」
「おい、浩次。お前筆下ろしさせてもらったら?」
「なにいってやがる」
「チャンスだろー」
やいのやいの。
誰が筆下ろし?とんでもない!
「私、もうおいとまするね」
慌てて、長居は無用とばかりに音研の部室を出た。
「冴子さん」
浩次さんがすぐ後を追ってきた。
「あいつら悪気ないから。怒んないでやって」
「怒ってないよ。ただビックリしたの」
「うん」
「私もう行かないと」
「・・・今別れたら、二度と会えない気がする」
「大丈夫。20年後、あなたの方が私を見つけて声かけるから」
「そうかな・・・」
「それじゃあ」
「うん」
浩次さんはずっと私を見送っていた。
タイムマシンがない!
夕方近くなっていて、タイムマシンを置いている林は別名「除霊の森」って呼ばれていたのを思い出した。大学近くに除霊の会という宗教団体があって、学生勧誘の一環で「祈らせてください」と近づいてくる。
今はその人たちの姿は無いが、タイムマシンが忽然と姿を消していた。
「私、帰れないのかな?」
心細くなる。
「そうだ!タイムコーポレーション。あそこにいけば」
暗くなる前にタイムコーポレーションにたどり着いた。
見覚えのある職員が、若い姿で出迎えた。
「冴子さん?」
「本当に現れた」
「10年前にタイムマシンを開発した博士から封書を預かってます」
職員の彼らは私に初めて会うといった。
私は封書をあけて、中の手紙に目を通した。
「・・・タイムマシンが無くて困っていることだろう?今タイムコーポレーションにある緑のタイムマシンに乗り換えてこちらへきたまえ・・・」
「タイムマシン、用意できてますよ」
緑のガラスで覆われたマシーン。でも、この時間へ乗ってきた青いガラスに覆われたマシーンはどこへいってしまったの?私は混乱していた。
「冴子さん。10年前に行ったら、駅前の宝くじ売り場で30枚買うように、って言伝て」
ああ!タイムマシンの費用とかはそこから捻出するんだっけ!
ドミノ倒しみたいに出来事が連なっている。自分の意思とは別次元の力が働いているみたい!
今度はさらに10年前へ向かって私は出発した。




