第30話 再会
夕暮れ。領主の屋敷には、美味しそうな料理の香りが漂っていた。村人たちは一つのテーブルを囲み、賑やかに夕食を楽しんでいる。今日、未来とマリが症状を和らげた子どもたちも一緒だった。
「身体がすごく楽になったよ!」
「こんなに沢山食べてもいいの?」
子どもたちの笑顔に、村人たちも自然と笑みを浮かべる。
「ミク様、本当にありがとうございます。」
「マリさんもありがとう。」
「まだ治ったわけではないんです。」
みくは優しく首を振った。
「でも、必ず子供たちを元気にします。」
その言葉に、大きな拍手が起こった。
一方その頃――。
調理場では、エレナ、ミヤ、ルリ、セイの四人が後片付けをしていた。
「これで終わりね。」
エレナは布巾を置き、微笑む。
「それじゃあ、私たちもみんなのところへ行きましょう。」
その時だった。バンッ!勢いよく扉が開く。
「エレナ!」
ガレスが息を切らしながら飛び込んできた。
「どうしたの?」
「……レオンかもしれない。」
その一言に、エレナの表情が固まる。
「本当…なの……?」
「ああ。今すぐ来てくれ!」
エレナは駆け出した。
食堂へ入ると、一人の少年が目に入る。白髪に紫色の髪が混じった、十二歳ほどの少年。その姿を見た瞬間、エレナは震える声で呟いた。
「……レオン?」
少年はゆっくりと振り返る。エレナの顔を見つめ、口を開いた。
「……マ……。ママ……?」
その瞬間、エレナは駆け寄り、強く抱きしめた。
「レオン!生きてた……!本当に、良かった。」
涙が次々と溢れ、止まらない。突然の出来事に、村人たちは騒然となる。
「どうしたんだ?」
「知り合いなのか?」
トーマスが静かに答えた。
「この子は去年、この村へ送られてきたんだ。それから俺たちが面倒を見ることになって。」
ギースがエレナに尋ねる。
「エレナさんが、この村へ来た理由って……もしかして。」
エレナは涙を拭きながら頷いた。
「そうさ。息子に会えるかもしれないと思って来たんだ。」
村人たちは静かに耳を傾ける。
「レオンは五歳の時、教会へ連れて行かれた。その後、何度も教会へ行って会わせてほしいとお願いした。でも、一度も会わせてもらえなかった。そして、数年後には……。」
エレナは俯いた。
「『亡くなりました』って告げられたんだ。」
食堂は静まり返る。
「それでも私は信じられなかった。きっと生きてるってそう思っていたくて…。」
「そしたら去年、『馬車に乗っている姿を見かけたかもしれない』という話を聞いて、必死に情報を集めたんだ。それで、ガレスたち家族と一緒にこの村へ来たの。」
レオンは申し訳なさそうに俯く。
「ごめんね……。ママと別れた後のこと、何も覚えてないんだ。気づいたら、この村にいて……。それから、どんどん身体が苦しくなって……。」
エレナは首を横に振る。
「謝らなくていい。生きていてくれただけで十分だ。」
もう一度、レオンを強く抱きしめた。するとギースが笑顔で言った。
「レオンは、ここに来てからずっと体調が悪くてな、俺たちで看病してきた。でも、辛いはずなのに大丈夫って笑いかけてくれてね。優しい良い子だよ。元気になって本当に良かった。」
セスも照れくさそうに笑う。エレナは二人に深く頭を下げた。
「本当に……ありがとうございました。息子を支えてくださって。」
ギースは笑いながら手を振る。
「礼なんていらないさ。レオンは、この村の大切な家族だから。」
その言葉に、食堂は温かな空気に包まれた。
未来はその光景を見つめ、静かに微笑む。
(本当に良かった……。)
離れ離れだった親子は、ようやく再会を果たした。しかし、その喜びの裏で、未来は改めて決意する。レオンを含め、この村の子どもたち全員を必ず救うと。その想いを胸に、みくは静かに拳を握り締めた。




