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戦国タイムトンネル  作者: サクラ近衛将監
第三章 出陣

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3ー4 上月城をめぐる戦い その一

「はい、単純に申して、敵の指揮官級の人物を狙い撃ちして仕留めます。

 軍団の指揮官級を十名も殺害すれば、その軍団の統制が難しくなりましょう。

 それを延々と続ければ、軍団の組織そのものが瓦解(がかい)いたします。

 雑兵(ぞうひょう)は指揮官の命により動きまするが、その指揮官が居なければ、戦闘そのものができなくなり、そのまま放置すれば自らの判断で撤退することになるでしょう。」


 竹中半兵衛がそれに反応した。


「なれど、指揮官と言う者は軍勢の奥深くに在って、大勢の将兵に守られている者じゃ。

 混戦模様となって指揮官が戦場に出て来るなればいざ知らず、敵陣深くに居る指揮官を狙って討つは至難の業じゃぞ。」


「竹中半兵衛さまにお伺いいたしましょう。

 仮に五町離れたるところより、敵の武将を倒すことができることができるならば如何様に用いますか?」


「なっ・・・・。

 五町とな?

 先日の宮の上要害と鷹の尾砦攻略の際は、大型の固定弓を使っておった様じゃが、流石に五町も離れて特定の人物を狙うは難しかろう。」


「できるだけ我らが使う武器は隠して使ったつもりですが、半兵衛さまは、先日使った武器をご承知のようですね。

 あれは、弩弓(どきゅう)と申すもので、かつて奈良に都があった古の時代に大陸よりこの日ノ本にも渡来して来たものにございます。

 しかしながら、あの弩弓は矢が特殊な木製の矢を使わねばならず、矢を作り上げるのにかなり手間暇を要するものなのです。

 日ノ本には矢に使うにふさわしき矢竹があったがために、それを使える和弓が普及して、弩弓は(すた)れたのです。

 弩弓は矢の飛距離も伸びますが、半兵衛様ご指摘の通り、的が遠いほど細かい狙いはつききません。

 まぁ、それでも、大勢の軍勢が密集している中なれば(おど)しには使えましょうな。

 此度使用した弩弓では、目一杯遠くへ飛んで五町程度ですので、人を狙って当たるような代物ではございません。」


「ふむ、先般使った火薬のような武器を除いては、指揮官を狙い撃ちできるような武器は無いということかな?」


「いいえ、蒼龍隊にはそのような武器があり、それを扱える隊員もおります。

 ですから、誰も予想もしない遠距離から指揮官の狙い撃ちができると存じています。

 従って、御大将のお許しがあれば、我らが密かに毛利の軍勢に接近し、指揮官級の狙い撃ちをしたいと考えております。

 場合により、吉川、小早川の両将を狙えば、仕損じても相応の脅威となるでしょう。

 この策はいかが思召(おぼしめ)されますか?」


 秀吉叔父貴が尋ねた。


「その武器はいかなるものぞ?」


「敵を(あざむ)くにはまず味方からと申します。

 御大将にもお教えできませぬ。

 何となれば、この秘密が他に漏れれば、御大将は無論のこと、信長様のお命も危うくなります。

 秘密を知る者は、少なければ少ないほど宜しきかと存じます。」


「儂は、ヌシを無条件で信じねばならぬのか?」


「失礼ながら、御大将が秘密を知ったところで、ご自分ではお使いにはなれませぬ。

 また、御大将の信頼する者に託したところで、結果は同じことにございましょう。

 そうして万が一にもその者が裏切れば、五町先の遠距離から御大将は狙われましょう。

 生憎とこの武器は、滅多なことでは防ぐことができません。

 重防御の鎧、兜ですら役には立たぬものとお考え下さい。

 暗殺を恐れるならば、御大将を含め御味方の重要人物が、外には今後一切出られなくなりましょう。」


「ふん、やむを得ぬ。

 儂の甥と言う一点でヌシとその部下を信用しよう。

 その策、進めても構わぬが、成功するか?」


「策は()くまで策にござります。

 やってみなければ、成果はわかりませぬ。

 では、夕刻に蒼龍隊はこの三木城を出て西へ参りたいと存じます。

 此度の作戦は、敵方に我らの存在が知られないことが肝要。

 従って、軍監も助働きも我らの足手まといになります故不要にございますが、策がうまく行って、毛利軍が多少なりとも撤退した場合の布陣その他の計画は宜しくお願い申します。」


 おそらくは秀吉叔父貴の不完全燃焼で終わった秘密会議ではあったろうが、味方であろうと蒼龍隊の秘密を隠すのは今後も変わらない。

 此度、俺の初陣に出るにあたり、基地に残る者には明確な指示をしている。


 万が一、俺の留守中に外部から基地が襲われるような事態になれば、地下の避難所に避難し、各避難所の扉を閉めよと。

 この扉は、外部から開けることはできぬ代物であり、俺が亜空間から開けるしかできないようになっている。


 万が一にでもそのようなことがあれば、その襲撃者が秀吉叔父貴であろうと信長公であろうと敵対者として叩き潰す。

 そこまでの覚悟を決めているのだ。


 さもなければ、三木城攻略も、上月城の救援作戦も実行しない。

 如何に攻略が遅れようが、歴史に任せれば、史実から離れた異常事態にはならないだろうと見ているからだ。


 まぁ、既に地獄の釜の蓋を無理にでもこじ開けたわけだから、これからの歴史がどう変わるかは全く見えないのだがな。


 ◇◇◇◇


 俺が率いる蒼龍隊が、三木城を発したのは暮れ六つ少し前であった。

 生憎と忍びの者がついてきているので、これを()く必要もある。


 三木城から出立して、四半時も立たずに日が落ちて、灯りの無い街道はすぐに暗闇になる。

 その状態で俺は幻性陰陽術を用いて、忍びの目をかく乱する。


 本来ならば、俺に敵対する者については抹殺するところなのだが、生憎とついてきているのは、織田軍と言うよりは竹中半兵衛が使う忍びの者も含まれていたからだ。

 しかもご丁寧に毛利の草もその後をつけている。


 毛利は座頭も使うが、尾行してきているのは座頭ではないので、おそらくは「世鬼(せき)一族」だと思われる。

 数は少ないが、諜報戦や調略には中々良い働きをするらしい。


 らしいというのは俺の知識ではなく、玄海から教えられたものだからだ。

 俺には鑑定もあるから、ある程度「何処の誰兵衛」ぐらいはわかるけれど、背景情報が分からない。


 与一郎はそもそも病弱だったから、余りこのご時世の事前情報は持っていなかった。

 だが、俺に式神の残滓(ざんし)たる玄海が()いているために、この時代の史実としての情報が結構色々と教えてもらえるんだ。


 但し、史実と言っても、玄海の能力の及ぶ範囲のことであり、歴史の全てではない。

 いずれにせよ幻影魔法と闇魔法で付いてきた忍び達の追跡を(かわ)し、俺たちは西へ向かい、高砂近辺から海へ抜け、夜陰に乗じて、かねて用意の黒塗りの半潜水型双胴船(俺がインベントリに収納していたもの)に全員が乗船、一気に内海を西進して、水行約二十里を二刻で踏破した。


 備前小串城の前面海域をこっそりと通過して児島湾に侵入、井谷村付近の浜に密かに上陸して、そこから北西方へ向かった。

 ここから備中高松城までは直線で5里、道なりで8里余りなのだが、俺たちは街道を避けて山道を走ることになる。


 そこで隊員全員が俺の用意した特殊なトレール・バイクに乗車し、道なき山野を走破しておおむね半時で備中高松城付近に至った。

 トレール・バイクも、俺がインベントリに保管していたものであり、これまで人目には(さら)していないものだ。


 無論隊員たちはその秘密が重要なものと承知しているから、俺のインベントリにしろ、トレール・バイクにしろ、他所で漏らすようなことは絶対にしない。

 備中高松城は、城内及びその直近での警備は厳しいものの、時刻は丑三つ時とあって、流石に城の濠から100mも離れると警備は全くのザルになる。


 特に、三の丸や二の丸の南西側に当たる湿地帯のヨシの群生地は、誰も警戒などしないのである。

 蒼龍隊の四名がサーフィンボードに似た大型の浮体に乗って前進、浮体に固定した大型弩弓を使い、二人ずつの二隊で三の丸と二の丸に同時攻撃をかけた。


 一応二の矢も用意しておいたのだが、一発でそれぞれ三の丸と二の丸の城門を吹き飛ばし、二の矢はその必要が無かったな。

 同時に俺は、大型の式神(玄海じゃないよ、俺が新たに造った式神)を使って、多弾頭弾を運び、本丸御殿を直接叩いたのだった。


 その戦果については、後で調査できるので、その場で確認する必要も無いことから、俺たちは一斉に現場を離脱し、今度は備中高松城から北東方向約22里にある上月城方面に向かうことにした。

 秋里付近から山中に入り、そのまま山中でカモフラージュしながら一夜を過ごした。


 翌朝になってから「式神」とドローンを飛ばして高空から敵の動きを観察すると、午前中にも備中高松城からの早馬が到着、出雲街道沿いの大畠付近に布陣する吉川、小早川陣営に知らせが届いたようで、(あわ)ただしい一連の動きの後で、吉川、小早川の本隊が軍勢の半数ほどを残して一斉に西方向へ移動を始めたのである。

 御大将が狙われたと知れば、当然にそうなるだろうとは思っていたが、俺の予想通りだったな。


 それでも総勢で1万五千を超える軍勢が上月城の周囲を取り巻いている。

 ここでもう一押しだな。


 その夜、浅瀬山砦を急襲して砦内に居た全員を密かに殲滅。

 そこからさらに笹が丘を経て、飯野山砦の守備兵を殲滅、そこから山中を行軍して二位山城を陥落せしめた。


 これらの攻撃に際しては、自動小銃にサイレンサーを装着して隠密性を高めている。

 急襲した砦又は城塞に敵兵の生存者は皆無である。


 残酷ではあるが、蒼龍隊の能力を敵方に知られないための必要な布石の一つである。

 その上で二位山城塞に狙撃ポイントを複数個所設置した。


 狙撃自体は対物ライフルで行うので、射程は約2000mだが、風が強いと長距離狙撃は余り当てにはならない。

 特に、この周辺は大日山川や幕山川に削られた谷あいが多いので、風向も風力もめまぐるしく変化する場所だからだ。


 それでも千m以内の距離であれば、かなりの命中精度が期待できる。

 二位山からならば、東方は高倉山神社付近まで、北方は早瀬白山神社付近まで、西方は上月八幡神社付近までの狙撃が可能である。


 南方向には太田八幡宮辺りに布陣する毛利軍陣地が(うかが)える。



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