第8話 社畜男、謁見する
国王陛下からの呼び出しということで、俺たち3人は王都へ向かっていた。
「急に国王陛下様からお呼び出しなんて……ソウジさん、一体何枚盗んだんですか?」
「俺は下着ドロか!」
「アリシアさん、もしもの時はソウジさんの首を差し出して、私たちは潔白を証明しましょうね!」
「お前はどうあっても俺を罪人にしたいようだな?!」
こいつは俺に仕える為にいるはずなのだが...
「ははは、さすがに招待状という形だからそれはないと思うが……」
「でも油断させておびき寄せる作戦かもしれません!アリシアさん、私たちは気をつけましょう!」
「それはそうと……その、サバオなんだが…」
「ピィ!」と俺のカバンからヒョコっと顔を出すサバオ。
「本当に連れていくのか?なんと言うか……心配なのだが?」
「うーん、でも一人で留守番ってのもなぁと思ってさ」
「そうですよ!サバオを一人残すなんてできませんよ!」
「サバオのこととなるとそっち寄りなのだな、リリム...」
「とにかく、サバオはちゃんと周りにわかんないようにするからさ!」
「ああ、子供とはいえドラゴンが街の中に...なんて言ったら大変なことになるからな」
しばらく歩くと王都が見えてきた。
俺はカバンを閉め、サバオを隠すようにした。
「相変わらずすげー賑わってるなぁ」
「では早速城へ行こう!」
「ソウジさん、遂に裁きの時ですね!サバオ、もしソウジさんが塀の中に入れられて帰って来れなくなっても私がいますからね!」
「ピィ?」
サバオはカバンの中で首を傾げる。
「お前なぁ...」
「お待ちしておりました!こちらへどうぞ!」
城に着くと兵士に案内されたのは、大きなテーブルのある広間であった。
「皆様、本日はご足労ありがとうございます。こちらで少々お待ちください」
「あ、ああ、ありがとう」
「ここで裁判をするんですかね?」
「お前はまだ言うとんのか!!」
「はは、さすがにこうも丁重に扱われてるんだ、それはないだろう(笑)」
「なーんだ、つまんな...」
「おい…」
くだらない話をしていると、威厳のある風格ではあるがどこか優しそうな男性が現れる。
「待たせたな、わざわざ呼びつけてしまってすまない」
「国王陛下、お久しぶりでございます」
アリシアは立ち上がり敬礼のような動作をする。
俺とリリムも続けて立ち上がる。
どうやらこの人がこの王都ゼニスの国王陛下のようだ。
「アリシア、久しぶりだな。そんなに気を使わずともよい」
「はっ!」
アリシアの緊張が伝わってくると、俺も緊張してきた。
「...ソウジさん、緊張しても仕方ないですよ?もうやってしまったことは…(小声)」
(まだ言うか...こいつ)
すると後から見覚えのある義足の大男が後から入ってくる。
「ダンテさん?」
「よう!」
「ひとまず座ろうではないか。ダンテ、早速だが...」
「かしこまりました」
ダンテが合図をすると複数人の女性が様々な料理を運んできた。
「はわわわ...どれも美味しそうです!」
「すげぇ...」
「そなたは...ソウジといったかな?」
「はい!置田蒼司です」
「この料理は“まよねーず”を使ったものだ」
「そ、そうなんですか?」
「先日ダンテの店にお忍びで食事をしに行ったのだが...」
「国王陛下がお忍びでダンテ殿の店に?」
「ああ、たまに来られるんだ」
「私はダンテの腕は世界一だと思っておるからな。その時今まで食べた事のない素晴らしい味に衝撃を受けたのだが...それがこの“まよねーず”だったのだ」
「是非国王陛下にも食べていただきたくてな、提供させてもらったんだ」
「ソウジよ、この“まよねーず”はそなたが作ったものだそうじゃないか?」
「あ、ああ、はい...そうです...」
俺が開発したわけではないので何となく申し訳ない気持ちになる。
その時だった。今まで大人しくしていたサバオが料理の匂いに反応し、カバンから飛び出そうとする。
(ダメだ、サバオ!大人しくしててくれ!!)
俺はカバンの中のサバオを押さえつけた。
「どうした?ソウジ?」
「あ、大丈夫です!何でもありません」
さすがにここでサバオのお披露目はまずい。
「今日そなたらをここに呼んだのは交渉をさせてほしいからなのだ」
「交渉...ですか?」
「うむ、このまよねーずを王都ゼニスの特産品として扱いたいのだ」
「特産品に?」
「…ということは、レシピを共有してほしいと?」
アリシアが国王陛下に問いかけた。
「そうだ。そしてそのレシピは門外不出、王都の中でも信頼のおける者にのみ作らせよう」
「なるほど、しかし門外不出のマヨネーズを大量に作るとなると...この王都の中では...」
「アリシア、そなたの集落を使わせてはもらえぬか?警備の兵士も派遣し、輸送の警護の体制も整えよう」
「集落をですか?」
「必要な道具や材料も全てこちらで揃えよう。あとそなたら報酬なのだが...」
国王陛下は一枚の紙を俺たちに差し出してきた。
俺は文字は読めないので、アリシアに内容を確認してもらう。
「ッ!?」
アリシアは内容を確認すると絶句した。
「こ、国王陛下!この額はいくら何でも...」
「...不満かの?」
「え?そんなに安かったのか??」
「私にも見せてもらえますか?」
リリムも内容を確認、するとリリムの目が$になり、
「ご契約ありがとうございまぁぁす!」
「いや、だからどうなってんだって!!」
「ソウジ、ここに書かれている報酬だけで一生遊んで暮らせるような額だ」
「え、えーと...この作品のタイトルって、異世界セレブ生活だっけ?」
「作品?異世界?」
国王陛下は不思議そうな顔をしている。
「ど、どちらにしてもソウジ、どうするかは君が決めるといい。まよねーずを作ったのは君だからな!」
「そうですよ!ソウジさんが決める事なので、私も口を出す気はありません!」
(目に$は出てるけどな...)
「このマヨネーズをそこまで評価して下さったなら...是非これでお願いします!」
リリムが小さくガッツポーズをしたのが見えたが...とりあえずは気にしないでおこう。
「おお、そうか!感謝するぞ、ソウジ!!では早速諸々の準備にとりかかるとしよう」
「しかし...そんな大量の金貨、どうやって持って帰るんだ?」
「報酬ならばここへ預けておいてくれて構わない。好きな時に好きな分だけ持っていくがいい」
「国王陛下、ありがとうございます!しかし本当によろしいのですか?このような大金...」
「それだけの価値があるということだ。気にせずともよい」
「はっ!」
「アリシアよ、これで集落に人が増え、護る者もできる。安心してそなたの念願も叶えられよう。王都としても支援を約束しよう」
「ッ!?」
(ん?念願?何のことだろう...)
そういえば俺はアリシアの知らない部分は多い。
もちろん人格者で俺の恩人、この世界においては家族同然であることに変わりはないが。
「それに関しては……もう少し考えてみます」
「そうか、決心がついたらいつでも私に言ってくるといい」
「ありがとうございます」
「さて、せっかく豪華な料理もあることだ、会食といこうじゃないか!」
国王陛下の声に今まで我慢していたサバオが飛び出してきた。
「ピィィィ!!」
「あ...」
「はわわわ…」
「こ、これは……」
サバオはテーブルの料理を嬉しそうに食べている。
「ドラゴ……」
「こ、これは…その、ワンちゃん!そう、ワンちゃんなんです!!」
「そうそう!ドラゴニックプードルって犬種で...」
「…さすがに無理があるぞ?2人とも」
慌てふためく俺たちをよそに、国王陛下はサバオをじっくり観察していた。
「…これはセラフドラゴンの幼竜ではないか!」
「セラフドラゴン?」
「神に仕える竜と呼ばれるドラゴンだ...ソウジ、そなたが使役しているのか?」
「使役というか...卵から飛び出してきて、そのまま俺に懐いたというかなんと言うか...」
「なんと!そなたが孵化させたというのか!?」
「う、うーん……」
(陽当たりのいい窓元に置いといただけなんだけど……言いづらい)
「ソウジよ、何はともあれセラフドラゴンを使役しているのだ。そなたはもしかすると世界を変える存在になりうるかもしれぬな」
「え...世界を?」
俺はその言葉にシビれた。ここまで色々あったが運良く富を得て、更にはセラフドラゴン(サバオ)という大きな力も手に入れ、遂に俺は世界を救うヒーローになれr...
「でもソウジさん自体は雑魚ですよ?」
「おぉい!!」
こうして俺は国王陛下より、世界初の『ドラゴンブリーダー』として認められ、これに関しても、研究に協力する代わりに様々な支援をすると約束してくれた。
寛大な王様で良かった...
そして会食が終わり、マヨネーズ作りに必要な道具や材料は後日全て集落に用意し、そこでレシピ等細かな事を提供するということで話がまとまり、俺たちは王都を後にする。
「サバオが神に仕える竜だったとは...驚いたな」
「こんなに可愛いんですもの!神様だってメロメロにしちゃいますよ!!」
サバオが成長してでっかくなっても同じ事が言えるのだろうか...
「しかし集落に魔物が近寄らないのはサバオのおかげだったなんてな...以前から不思議に思っていたのだが」
どうやら国王陛下云く、集落のある地は元々セラフドラゴンが棲家にしていたことから魔物が今でも近寄らないのでは?とのこと。
俺も集落に魔物が一切寄り付かないことに疑問は感じていたが…納得。
(こんな小さいサバオでも魔物をえらい勢いで食っちゃうんだもんな...)
夕方近く、俺たちは集落に帰ってきたのだが...
俺たちは目の前に広がる光景を見て言葉を失う。
畑は酷く荒らされ、いくつかの家も破壊されていた。
ニワトリ小屋は少し離れた場所だったからか、何とか無事なようだ。
「ひでぇ…」
「誰がこんなことを!?もしかしてサバオが私たちと一緒に来ちゃったから魔物が?」
「...いや、これは魔物ではなく人間の仕業だろう」
確かによく見ると人間の足跡だ。
「まだいるんだろう?コソコソしてないで出てきたらどうだ?」
俺たちはわからなかったが、その招かざる客の影にアリシアは気づいていたようだ。
「お待ちしてましたよぉ、アリシア少佐ぁ!いや、元少佐ですかねぇ、裏切り者のアリシア元少佐!!」
「お前は…」




