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第4話 社畜男、異世界で日常生活を送る

アリシアとの出会いから1ヶ月は経っただろうか。

俺とリリムはとある集落の中で過ごしていた。

集落といってもここには俺とリリム、そしてアリシアの3人しかいない。

10軒にも満たないが家があり、畑があり、森へ行けば水がある。ニワトリもいて自給自足には申し分ない環境だ。

俺達は空き家をそれぞれ借りてここで生活をしていたのだ。

あの時、アリシアと出会った後のことだ。



アリシアと握手を交わしながらお互い自己紹介をした時のことだ。

「ところで君達は…見慣れない服装をしているがどこから来てここで何をしていたんだ?」とアリシアに聞かれると俺は、「あ、こいつはリリムっていうんだけどさっき異世界からここに飛ばさ…ぐふぁ」途中でリリムから強烈なボディブロー。

「何すん…」「まだ彼女が何者かもわからないし、それにいきなりそんな異世界やら何やら言われたら混乱するでしょう!?」と、小声だが激しい口調で止められ、

「あ、アリシアさん、私はリリムです。実は彼とこの世界を旅してまして、どこかそろそろ長く暮らせるいい所はないかって思ってたところなんです」と咄嗟にアリシアに説明しだすリリムだが、「ちょっと待て!お前ギリシャ語喋れんのかよ!?」と即座につっこむ。

「そりゃあ、この世界の女神様の巫女だもの。当たり前でしょ?」と真顔で答える。

(だったらさっきお前から話しかければよかったじゃねーか)と思ったが、もうそれ以上はつっこむのをやめた。

「そうか!なら私の集落へ来てはどうだろうか?まあ集落と言っても今そこに住んでいるのは私だけだが」とアリシアは俺達に提案する。

「いいんですか!?でもアリシアさん1人って?」

「君達も知っていると思うが、ここ最近の魔物の異常発生で身の危険を感じ皆この集落を離れていってしまったんだ」とアリシアは寂しそうに語る。

「まあ今のところ集落が襲われることはないが、どうしても必要な物資を買いに行く時はこの森を抜けて王都へ行かねばならなくてな…その時に魔物に襲われる危険があったから皆王都の方へ移住してしまったんだ」

「なるほど、アリシアさんは何故まだその集落に?」

「…祖父との思い出の場所だからな。それに私はこの辺りに出る魔物程度ならいくらでも駆逐できるし」

「そうだったんですね、それでは私達もアリシアさんがいれば安心しですね!」

「ああ!奇妙な格好をしているが君達は悪い者には見えないからな!歓迎するよ」

「ありがとうございます!ではこれからよろしくお願いしますね!」とリリムがお礼を言うと、「では集落へ行こう」とアリシアが声をかける。俺はアリシアの後をついていく。

(奇妙な格好ってリリムのことだよな?)

リリムもフワフワと俺達の後をついてくる。

(奇妙な格好ってソウジさんのことよね?)

少し歩くと集落が見えてきた。集落に着くとアリシアは

「家は好きな所を使ってくれ。中にある衣服や道具も好きに使ってくれて構わない」と言い、俺達はそれぞれ気に入った家を使わせてもらうことにした。


そして、集落での生活が始まり今に至るのである。


畑仕事やニワトリの世話を手伝うという条件でここにある食物は自由に使っていいとのこと。アリシアには本当に感謝である。リリムも何だかんだ楽しそうだ。

畑には小麦や色々な野菜があり、とてもアリシア1人では食べきれないであろう数の広大な畑であった。俺は畑で作物の収穫作業を黙々とこなしていた。アリシアは見事な作物の出来に嬉しそうな顔をしている。

そんな彼女の顔を見て俺はふと呟く。

「…不便だ」

令和という世の中、文明の利器に囲まれて生活をしていた俺の本音である。

「電気もない、ガスもない、水道もない。おまけに収穫も全て手作業…俺はこの世界に何をしに来たんだ?」とブツブツと言いながら作業をしていた。文句を言いながらも作業の手が止まらないのは社畜であった俺の特技であろうか、、

するとアリシアが俺に声をかけてきた。

「どうした?ソウジ、疲れたなら休んでも構わないんだぞ?」と優しい言葉。俺が仕事中にこんなに優しい声をかけてもらえるなんて、元の世界では考えられなかったことだ。

パワハラ部長に是非見習ってもらいたいものだ。

「いや、疲れてはないよ。タフだけが取り柄だからな!」とアリシアに返す。

「そうか」とクスっと笑うアリシア。

「ところでさ、何でこんなにたくさんの作物を作ってるんだ?アリシア1人だったんだろ?」とアリシアに尋ねた。

「何でって…そりゃ生活していくには金が必要だからな」

「ん?金?」

「ああ。私は王都へ買い物へ行く際、この作物や卵を持って露店に卸しているんだ。私の作物は美味だと評判が良くてな」

「待って?金って魔物をたくさん倒して自分も強くなりつつ金も貯めてみたいなことじゃないのか!?」

「魔物が金を持ってるわけなかろう」とアリシアは当たり前のように言う。

「あ、じゃあさ、倒した魔物が素材になったり食材になったりみたいなのは?」

「…君は先日見たあのドロドロしたあの魔物を食したいと思うか?」

「え、えっと、、無理です」想像しただけで吐き気がする。

「だろう?魔物なんていたって何の得もないんだ」

「確かに…」

「それに人間の味を覚えた魔物はどこまでも追いかけてくるから厄介でな?被害が出る前に私もできる限り駆逐しているんだ」

「熊みたいなもんなんだな…」

しかし不思議に感じることもある。この集落は森を出てすぐの所にあり、特に外壁等があるわけではない。もちろん警備する兵士もいない。

畑やニワトリ小屋なんてあれば魔物に狙われてもおかしくなさそうなんだが…なんて考えていると、

「ご飯できましたよー!」とリリムの声が聞こえてきた。

今日の食事当番はリリムである。

食堂代わりに使っている民家で3人揃って食事をする。

アリシアはずっと1人だった為、3人で食卓を囲むのは楽しいらしく食事も1人で食べるよりも美味しいとのことだ。

「リリムの作るスープは美味だな」とアリシアが言うとリリムはとても満足そうに、「お口に合うようで良かったです」と返した。

俺も食事はずっと1人だった。だからいつも3人揃って食事をするということが新鮮ではあった。

「ソウジさんもお味の方は大丈夫ですか?」と何か期待を込めた眼差しで問いかけてくる。

「あ、あぁ!美味しいよ」と返すと、またリリムは満足そうな顔をする。

「…………」

(すっげぇ味気ねぇぇぇ!!!)

もちろんそんなことは口が裂けても言えないが、元の世界での食事が当たり前だった俺にとって、この世界の食事は病院食か!とつっこみたくなる程味気なかったのだ。それもそのはず。調味料らしい調味料はアリシアが王都で買ってくる塩と酢と油くらいだろうか。なのでいつも俺にとっては意識高い系なヘルシー料理となっているのだ。

(あぁ、ソースが恋しい…醤油、味噌、、はぁぁ)

今更ながら、当たり前のようにあった調味料がとても有難いものに思えてきた。もしまた口にする機会があるならしっかり感謝して一滴も残さず食べないとなと静かに誓った。

(このアリシアの野菜は確かに美味い、美味いんだけど)

俺の元いた世界ではまずお目にかかれないであろうというくらい見事な野菜だ。でもやはり俺にとっては味気ない。

何かないかと考えながら回りを見渡し、俺はハッと気づいた。

「これだ!」と大声を上げて俺は思わず立ち上がる。

2人はどうした?という表情で俺を見ていた。

「アリシア!明日の食事当番俺にやらせてもらっていいかな?」

「あ、ああ、構わないが?」

「ありがとう!よしこれで明日、、フフフ・・・二へへ」と俺は不気味に笑いだした。

「ソウジどうしたんだ?」とリリムに小声で話しかけるアリシア。

「たまに出る発作です。放っておけば大人しくなりますから」と冷たい視線で俺を見ながら答えるリリム。

そして俺は翌日、早速朝から作業に取りかかるのであった。



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