第11話 ソウジ、修羅場を迎える!?
『ズゾゾゾー!』
「ッ!?」
俺は部屋に戻ると、腹を空かせていた2人にカップ麺を作って出していた。
「これはっ…小麦の香り豊かな麺とコクのあるスープがお口の中で熱々のハグを!これはまさに…麺とスープの運命共同体や~!」
「だから彦〇呂やめい!」
カップ麺なんて俺からすると当たり前のようにあるものであるが、異世界でのあの食事が当たり前のこの2人にとっては今まで味わったこともない、とてつもないご馳走になったのだろう。サバオもものすごい勢いで食べている。
「本当に信じられません!お湯を入れただけでこんなご馳走ができるなんて!」
「ウマウマ!」
「あぁ、カップ麺っていって、この世界では誰もが知ってる簡単料理?みたいな感じかな」
「すごいです!ソウジさん、もしかしてこの世界にはもっと美味しいものがたくさんあるんですか?」
「そりゃ他にも色々あるさ」
「それにソウジさんの作ったマヨネーズもありますし…」
「あー…それなんだけどな?マヨネーズは俺が作ったものじゃないんだ」
「へ?どういうことです?」
「この世界ではマヨネーズなんで当たり前のようにあるものなんだ。あっちの世界にあるもので作れそうだったから作っただけで…まさかあんなことになるとは…」
「うーん…まああちらの世界では誰も知らないわけですし…あの世界ではマヨネーズはソウジさんの発明ですよ!」
「何か心苦しいけどな…」
2人の満足そうな顔を見てすっかり説教をする気の失せた俺は早速色々聞き出すことにした。
「色々聞きたいことはあるんだけどさ、まず2人がここにいるってことは…あの世界ことは夢じゃないんだよな?」
「はい、もちろん夢ではないですよ?」
「2人はもちろん、みんなは?アリシアも無事なんだな?」
「はい!皆さん元気ですよ!あの後色々ありましたが…」
リリムが語り出そうとすると、俺は思わず2人に抱きついた。
「ちょっ、ソウジさん?」
「ソウジ、クルシイ」
「…良かった…良かった…無事で」
とにかく俺は安堵の気持ちでいっぱいだった。
「よし、それじゃ話の続きだ!何から聞けばいいんだろう?」
「そうですね、まずはソウジさんのことですが…」
「あー、何かいきなり仮面のヤツが俺の目の前に来たと思ったら…その後がわかんねーんだよな。気が付いたらこっちの世界に戻ってたんだ」
「はい、まず結論から言うと、ソウジさんはこの世界で亡くなっていませんでした」
「あ、あぁ、まあ俺今こうやって生きてるしな?」
「そして私達が本来呼び寄せたかったオキタソウジさんはあなたではありませんでした」
「うん、それもわかってるぞ?新撰組の沖田総司と間違えたんだろ?」
「いえ、間違えたのではありません。そもそも死んでいない人間があちらの世界に転送されるのは本来不可能なんです。偶然ソウジさんがこちらで死に直面するような何かがあった日時や諸々が本来私たちが呼び寄せようとしたオキタソウジさんと同じようだったことはありますが…」
「んじゃあ何で俺は向こうの世界に?」
「それがわからないのです。女神様もこのような事は今までないと。しかもソウジさん、あなたは今こちらと向こうと肉体が2つある状態なんですよ?」
「え?どういうこと?」
「向こうの世界でもソウジさんはいます。でも魂の入っていない抜け殻とでもいいましょうか…死んではいないんです」
「言われてみれば…俺もこっちで目を覚ました時ずっと眠ってたとか」
「恐らくそれと同じですね」
「何かよくわかんねーな…」
「今はっきり言えることは、ソウジさんはこちらの世界とあちらの世界を魂で行き来出来るということです」
「え!?俺また向こうの世界に行けるのか?」
「そういうことになります。女神様も色々考えた末、ソウジさんのこの不思議な力に賭けることにすると…」
「賭ける?」
「はい。今向こうの世界はかつてない危機に直面しようとしています。もしかするとこの危機を救えるのはソウジさんかもしれないと。セラフドラゴンであるサバオも使役してますしね」
「ソウジ、タスケル!」
「う、うーん…急にそんな事言われてもなぁ」
「あれ?こういうセリフ聞くとブチ上がりませんでしたっけ?」
「いや、それは俺が異世界転移したからだと思って…」
「まあ同じようなもんじゃないですか?」
「…こっちでの生活もあるしな?それに俺が向こうでもし死んだらどうなるんだ?」
「うーん…試してみます?」
リリムはどこからかハンマーを取り出した。
「いや!今ここで死んだらダメだろ!!」
「とにかく、あの時黒い仮面の者に何をされたのかも気になりますし、色々知るための旅が待ってますよ!」
「まあ…あの時黒い仮面のヤツに何されたのか気にはなるけど…」
「…まさかソウジさん、護るべき女性が出来たからあちらには行けないとかさぶいこと言っちゃいます?」
「と、とりあえずその件は保留だ!ところでお前らは何でここに来たんだ?」
「何でって…ソウジさんを迎えに来たんですよ?」
「それはそうだと思ったけどさ、さっきの話だと死んでないヤツは転送できないんだろ?」
「女神様に特別に門を開いていただきました」
「ゲート?」
「えーとですねぇ…」
ここから色々説明されたが、女神様にゲートを作ってもらって異空間へ。そこから俺のいるこの世界へ向かうわけだが、異世界と呼ばれる世界は無数にあるらしく、普通ならその異空間に入ると向かうべき世界がわからず、ヘタすると永遠に彷徨ってしまうらしい。
「ほへぇ…それでここに辿り着けたってのは女神様の力のおかげってことか?」
「もちろん女神様の神力を使えば可能ですが、この無数に広がる世界を異空間から探すとなるととてつもない力を使うことになるので現実的ではないですね」
「そんじゃあ…どうやって?」
「サバオですよ!」
「ソウジ、スグワカル」
どうやらセラフドラゴンは、自分が仕える者はたとえそこが異世界であってもどこにいるかわかるらしく、異空間に入ってからもサバオは俺に向かって一直線だったらしい。さすがは神に仕える竜といったところか。
「そうなんだ!?サバオ、お前すげーヤツなんだな!」
と言いながら俺はサバオの頭を撫でる。
「ボクエライ!ムフフ!」
「すぐにソウジさんの住処がわかったので、こちらと私達の世界を繋ぐゲートを作らせてもらいました」
「ん?どこに?」
「こちらです!」
得意気にリリムは扉を開ける。
「トイレじゃねーか!!」
「え…ちょうどいい形だったもので…」
「…そこで用足しても大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ!(多分)」
俺はサバオの頭を撫でながら更に問い続ける。
「そういえば何でサバオは人間の子供の姿なんだ?」
「竜は人化することが出来るんですよ。ここまで完璧に人化するのはなかなか珍しいですが。それにセラフドラゴンは竜の中でもとても知能が高いので、もうすでに言葉も覚えたようですね」
「何から何まですげーな…」
(それを使役してるソウジさんもなかなか特殊なんですけどね)
その後は俺があの世界で意識を失った後のアリシアの事、集落の事、帝国の事やら色々な話を聞いた。
「他に何か聞きたい事はありますか?」
「そうだな…お前、この世界初めて来たよな?何でBluRayの使い方わかったんだ?」
「フフフ…そんなの何の造作もありませんよ。私には女神様から預かった力が…」
「おまっ!んな事に貴重な力使ってんじゃねぇ!!」
とんでもないヤツだった。
一通り話したところで一旦一息入れることにした。
「ちと俺風呂入ってくるわ」
「わかりましたー、ごゆっくり」
そして脱衣所で服を脱いでいると、ある事に気付く。
(いけね、凛々香さんの部屋にスマホ置いてきちまった…もう寝ちゃってるかな?)
そんな事を考えながらシャワーを浴び始める。
俺がシャワーを浴び始めてからしばらくして、
『ピンポーン』
と、チャイムが鳴る。
「ダレカキタ?」
「あー、呼び出しなんですかね?行ってみましょう」
リリムはガチャリと玄関のドアを開ける。
するとそこには俺のスマホを持った凛々香さんが。
「あ…え、えーと…」
得体の知れない少女の登場に戸惑う凛々香さん。
(あら、もしかしてこの人…ソウジさんの…)
リリムの目が怪しく光る。
「あら?どちら様かしら?」
わざとらしく問いかけるリリム。
「あ、あの蒼司さんスマホを忘れて行ったのでお届けに来たのですが…(この子誰かしら?妹さん?)」
「ソウジ、オフロ!」
サバオも何故か参戦。
(え?こんな小さな子供まで?弟さんにしては歳が離れすぎてるような…)
「あらサバオ、そうねぇ、パパは今お風呂だからねぇ。奥で待っててね?ママの言う事聞けるかな~?」
「パパチガu…」
「さあさあ、サバオー、いい子だから奥に行っててねぇ?」
「ママチガ…」
「パパ?ママ?え…蒼司さん…既婚者?」
パニックになっている凛々香さんを横目にリリムは、
「すいませんねぇ、ウチの子が。それで彼に何の御用ですか?」
言葉を失う凛々香さん。
「ふぃ~、さっぱりした」
そんな状況になってるとは知らずに俺は風呂から上がる。
「ん?リリム何やって…凛々香さん!?」
「…です」
「え?」
「蒼司さん最低です!こんなに可愛い奥さんと子供がいながら!!」
「え?えぇ!?」
「私を騙していたなんて!蒼司さん見損ないました!!」
「ち、ちがっ…」
ニヤニヤしながら眺めるリリム。コイツは…
【※この後30分程修羅場が続きました】
「そ、それではこの子達はその異世界という所の?」
信じてもらえるかわからなかったが、俺は凛々香さんに異世界のこと、この2人はその異世界から来たということを説明した。
「ま、まあ急にこんな事言われて信じてくれって方が難しいかもしれないけど…」
「そうですよ、私達は永遠を誓った…」
「お前は黙っとれ!」
「リリム、ウソ、ダメ、ゼッタイ」
どこかで聞いたことあるフレーズだ。
「話はわかりました。それに蒼司さん、ちゃんと信じれるだけの根拠もありますよ?」
意外にもすんなりと信じてくれた凛々香さん。
「根拠って?」
「ほら、蒼司さんバールで殴られたのにバールが曲がっちゃったり、川原元部長の腕を簡単に折ってしまったり…」
「あー、そういえば!」
そう、俺の身体に起きている異変を目の当たりにしている凛々香さん。逆にその異世界が関係しているのなら納得なのだとか。
「なあリリム?そういうことなんだけどさ、お前何かわかるか?」
「うーん、ソウジさんは超絶雑魚のはずなので…」
「超絶って…」
するとリリムはまたどこからかハンマーを取り出し、
「えいっ!」と俺に思いっきり振りかざしてきた。
『バキッ!』
全員の目に映っているのは折れたハンマーと無傷の俺だ。
「…ソウジさん、痛くないんですか?」
「あぁ、全然」
「何が起きたのでしょう?サバオ、ちょっとソウジさんに咆哮を…」
「やめんか!この一帯消し飛ぶだろ!!」
「どちらにしても色々わからないことだらけです。やはりここはあちらの世界に戻り、調べる必要があるかと」
「うーん、でもなぁ…」
「蒼司さん、私もリリムちゃんの意見に賛成です。このままわからないのも気持ち悪いですし、何よりもリリムちゃん達の世界が今大変なことになりそうなんですよね?」
「まあそうみたいだけど…」
「それなら行くべきです!それに蒼司さんにしか出来ないことがあるのなら、ワクワクしません?」
「仕事しないと生活も困るし、何よりも凛々香さんに会えなくなる日が…」
「自由に行き来できるならいつでも会えます!それと生活面なら私が支えますからご安心を!」
「いや、流石にそれは…」
「お金ならありますよ?」
そう言うと、リリムは鞄をひっくり返す。
中からゴトゴトと音を立てて20枚程の金貨が出てくる。
「これだけあれば当面の生活は心配いりませんよ!」
「あのなぁリリム、この世界では金貨じゃ何も出来ないんだよ」
「えぇ!?これだけあれば1年は大丈夫だと思ったのに…」
金貨を一枚手にした凛々香さんは金貨をじっと見つめ、
「あの、これって金ですよね?もしかしたら買取してもらえませんかね?」
「あ、なるほど!もしかしたらワンチャン…」
「では明日早速売りに行ってみましょう!ちょうどお休みの日でしたし」
「いいのか?凛々香さん」
「はい!一緒にお出かけできますしね」
「凛々香さん」
俺は凛々香さんと目を合わせると、お互い顔を赤らめる。
「…サバオ、この人達何かよくわかりませんけどイチャコラ始めましたよ?」
「ソウジ、アマズッペェェ!!」
「どこでそんな言葉覚えたんだよ!」
翌日、俺達は早速金の買取の店に向かっていた…のだが。
『はむっ!』
「こ、これはっ!甘い幸せをくるくる巻いた宝石箱や~」
「だから彦〇呂やめいっ!」
クレープを頬張り幸せそうなリリム。
「ソウジ、アレタベタイ」
「またステーキかよ!牛一頭食う気か!!」
リリムとサバオは通りがかりに目に入る食べ物全てに反応し、全く先に進まない。
「ウフフ、2人ともとても美味しそうに食べますね」
「勘弁してくれよ…財布の中が空になりそうだ」
「ひゃーほふかへばひいひゃふぁいふぇすふぁ(カード使えばいいじゃないですか)」
「食いながら喋るな!あと何でお前がカードなんて知ってんだよ!!」
「フフ、蒼司さん、私達って周りから見たら家族に見えますかね?」
「え?」
「可愛い子供がいて、横には蒼司さんがいて」
「凛々香さん…」
俺はそっと凛々香さんの手を握る。
「ふぁぶぁふぉ?ふぉーひふぁんひひゃふぉふぁふぁひふぇふぁひふぁひょ?(サバオ、ソウジさんイチャコラ始めましたよ?)」
「ほーひ、ふぁへふぁへふぁい(ソウジ、アレタベタイ)」
「ちゃんと食ってから喋れ!サバオ、今度は寿司か!?」
(何で蒼司さん、さっきからこれで通じてるのかしら…)
※ツッコミ体質の悲しい性
ようやく金買取専門の店に到着した俺達。
早速店内に入り、リリムの持ってきた金貨を差し出し、買取可能か聞いてみる。
「すいません、この金貨なんですけど…」
店員は不思議そうな顔で金貨を調べる。
「確かに金のようですが…このようなデザイン金貨は見た事が…」
『パチンッ』
その時何か空気が破裂するような音が聞こえた気がした。
「ん?」
「ソウジさん、どうかなさいましたか?」
「今何か音しなかったか?」
「ソウジさん、こいてしまったなら素直に白状してください」
「こいてねーわ!!凛々香さんも聞こえなかったか?」
「いえ、私には何も…」
(おかしーな…確かに何か聞こえた気はしたけど…)
すると、先程まで不思議そうな顔をしていた店員が別人になったように、
「こ、これはっ…お客様これを一体どこで!?これは素晴らしい物です!一枚150万円で買取させて頂きます!!」
「え、えぇ!?150万!!」
「そ、蒼司さん落ち着きましょう!20枚ありますから、えっとその…お茶碗持つ手は左なので…」
「うん、凛々香さんも落ち着こう?」
「全部で3000万円で買取させて頂きますが、よろしいでしょうか?」
「ぜ、是非!!」
「ほぇ?そんなにすごいんですか?」
「凄い額よ、リリムちゃん。うまい棒なら200万本買えます」
「す、凄すぎますねっ!!」
「何でうまい棒で換算?何でリリムもそれで驚けるんだよ!」
「この金貨って異世界からこちらに持ち帰れるってことですか?」
「ソウジさんは魂での移動になりますから難しいですけど、私やサバオなら持ってくることは可能ですね」
「そういえば…向こうじゃ一生遊んで暮らせるだけの金貨があるんだったよな?」
「ええ、王都に保管していただいてます」
「…俺、仕事辞めようかな(小声)」
そして大金を得た帰り道、俺と凛々香さんは胃袋宇宙な2人を連れてバイキングの店へ。
リリムとサバオは出禁になるんじゃないかという勢いで料理を平らげる。
「蒼司さん、これだけのお金が振り込まれれば
当面生活の心配はいりませんね!」
「そうだな、一生遊んでって訳にはいかないけど、しばらくは異世界と行き来しても大丈夫だな…けど…」
凛々香さんは俺の手をそっと握り、
「私なら大丈夫ですから行ってきてください。それにすぐこちらに帰って来れますし、私はいつでもあなたの傍にいます。それと行ってる間は私がしっかり蒼司さんのことお護りします」
「お護りって(笑)まあそう言ってもらえるなら…」
そして翌週、俺は会社に休職届を提出。
会社には色々理由を聞かれたが、とりあえず色々勉強したいことがあるということで何とか誤魔化した。
「それじゃ凛々香さん、行ってくる」
「はい!お気を付けて」
「ではソウジさん、参りましょう!リリカさん、また私もこちらにお邪魔させてもらいますので、その時は美味しい物食べさせてくださいね!」
「まだ何か食うつもりかよ…」
「では行きます!」
リリムとサバオは勢いよくゲートへ飛び込む。
俺はというと…
「…ホントにこの中に頭突っ込むの?」
「ま、まあ…リリムちゃんがそう言ってましたし…」
傍から見ると便器に頭を突っ込むという状況になるので抵抗はあったが…
「魂抜けた後はベッドまで運んでおきますね!」
「ああ、それじゃ行って…」
俺が便器に頭を突っ込むと、俺の身体は抜け殻になったようだ。
凛々香さんは抜け殻になった俺をベッドまで運び、
「大丈夫ですよ、蒼司さん。私はいつでもあなたを見守ってます。そう、いつでも…フフフ」
こうして俺はまた異世界に戻ることになったのであった。




