表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

第7話

コンビニの深夜シフトは、いつも通り退屈だった。


午前2時を過ぎると客足も途絶え、監視カメラの前には誰も映らない。悠也はレジ裏に立ったままスマホをいじっていた。Xの通知、相場サイトの価格推移、DMで流れてくる仕入れ先の情報。


 バイト仲間の村井は、おにぎりの補充を終え、バックヤードに戻ってくると一言ぼそっと言った。


 「お前、スマホ中毒すぎだろ。寝る時間も惜しいってか?」

 「……まあな。調べもんあるから。」

 「ああ? なに、情報商材でも始めた?」


 軽口だった。が、悠也の指が一瞬止まったことを、村井は見逃さなかった。


 「冗談だって。そんなマジな顔すんなよ」

 「別に。バカらしいから相手してねぇだけ」


 村井は缶コーヒーを開けてカウンターに腰かけると、店内モニターの死角で小声を漏らした。


 「でもさ、正直ちょっと気になってんだよな。」

 「なにが?」

 「お前さ、最近なんか動きおかしくない?」

 「あ?」

 「シフト前に来て裏で電話してたり、バイト終わってすぐ変な方向行ったり。あと、配送の伝票とか、こっそり見てんの俺知ってるからな」


 悠也は目を伏せた。笑ってごまかす気力も湧かない。図星だった。そして、自分が思ってるより、見られていたという事実が刺さった。


 「いや、ちょっと副業的なのやってんだよ。隙間時間でできるやつ。最近流行ってるじゃん」

 「副業、ねぇ……」


 村井はしばらく黙っていた。冷蔵庫のファンの音だけが、だらだらと空気を埋めた。


 「まあ、ぶっちゃけ俺もそういうの興味あったし、やるのは自由だと思うよ。けど、最近のお前、ちょっとピリついてるというか、カネの匂い出しすぎっていうか……」

 

悠也は無言で視線を返した。そのまま村井が続ける。


 「たとえばさ、コンビニの商品とかにもやたら“定価”にこだわるようになってね?そんなやつ普通おらんて。」


 村井は笑いながら言った。でもその笑いは、どこか本気の不気味さを含んでいた。


 「いや、いいんだけどな。マジで儲かってんだったら。さ、言えば?何やってんのか。少しは興味あるし」


 悠也は答えなかった。スマホをポケットに突っ込み、掃除用具を持って出入口を拭くふりをしながら、内心で激しく脈打つ鼓動を落ち着けようとした。


 「別に大したことしてねぇよ。ちょっとした転売とか、そういうもんじゃないから。」


 最後の言葉が、かすれた。村井はもうそれ以上何も言わなかった。ただ、笑みの消えた目だけが、妙に静かだった。


 シフトが終わって、更衣室で着替えていると、村井がぽつりと呟いた。


 「闇バイトとかじゃねーだろうな。」


 悠也は着替えの手を止めなかった。背中でそれを聞き流し、何も返さず、ロッカーの扉を乱暴に閉めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ