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第92話 乙女の恋慕は凍らない08


「にゃあごう」


 カノンとデート。


 武闘祭まで時間があるのでヒロイン各々とのデートの最中。


 今日の相手はカノンだ。


 鮮烈な桃色の髪は。乙女にとり愛らしい。


「何か?」


「カノンは幸せ者」


「そりゃ重畳」


 ケラッと笑うミズキ。


「王子様だし」


「正確には王子様の様だ……だがな」


「契約した」


「したな」









『お前が絶望し囚われているのなら理由も理屈も脅威も無茶も無視して童話の王子様みたいに助けてやる』



 そんな契約。


 男性にそう言われて。


 尚絶望から助けられて。


 しがらみを解いてくれて。


「惚れずにどうする?」


 がカノンの思うところだ。


 乙女街道邁進中。


 およそのロマンを凝縮した愛の形がここに在り、そして何者にも奪えぬ強烈な思慕が素材となって恋を構築する。


「ま、気に入った相手ではあるが」


 ミズキとしても悪くはないらしい。


「武闘祭も楽しみ」


「身も蓋もないがな」


 苦笑しか出来ないミズキだった。


 ――術式拡散システムディフュージョン


 魔術師が参加する決闘であればこれ以上もありはしない。


 さすがに本気になるわけにもいかない。


 それこそ面倒なことになってしまうだろう。


「何だかなぁ」


 が本音だ。


「とりあえず昼食です!」


「だな」


 定食屋に入った。


 カノンのお気に入りの店だ。


 魚の燻製に一家言ある食事処。


 栄養豊富で旨みも高い。


 健康に良く、ヘルシーでもある。


 海の国。


 半島国家なので海の幸はありふれている。


 ついでに米も。


「やっぱりコレですね」


 御飯をかき込みながら幸せそうなカノンだった。


 食事的な事情でも、


「麦の国より海の国」


 らしかった。


 尤もミズキが、


「麦の国に行く」


 というなら本国についていくだろうが。


 あくまで仮定として……と注釈はつくがぶっちゃけ海の国そのものよりミズキの方に情は寄せているのだから。


「幸せそうだな」


 苦笑。


 そんなミズキに、


「とても美味しいですから」


 朗らかにカノンは笑う。


「ソレは認める」


 ミズキとしても魚の燻製は「美味しい」に異論無し。


「午後からは武闘祭ですね」


「あまり気が進まないんだが」


「頑張ってください」


「カノンも出れば良かろうに」


「一応特別顧問ですので」


 此度の武闘祭は高等部の生徒限定だ。


 しかも安穏な。


「いいんだがなぁ」


 あまり良くも思えないミズキ。


 カノンのキラキラした期待の瞳は重責だ。


 ピンク色の髪と瞳。


 それからほっぺ。


 紅潮。


 興奮しているらしい。


 ミズキが負けることを微塵にも考慮していない。


 そんな浅慮な思考だった。


 信頼とも言う。


 ミズキには、


「重いんだが」


 が本音だとしても。


 肴の燻製を食べる。


 白米を咀嚼する。


 嚥下。


 味噌汁で流し込む。


「はふ」


 吐息。


「麦の国より粋ですね」


 カノンは至福の表情だ。


「だから海の国にいるしな」


 それもまた自然な言葉。


「ミズキが居れば何処でもオッケーではありますけど」


「光栄だ」


 苦笑。


 苦笑い。


「お前もお前で業が深いからな」


「ミズキが言いますか?」


「俺はまぁ」


 味噌汁を飲み込む。


「へっぽこだから」


 出てきた言葉がそれだった。


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