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第89話 乙女の恋慕は凍らない05


「では寝ますわよ……」


「あいあいさー」


 キングサイズのベッドで二人。


 同衾することになった。


 セロリには使用人が再度言づてを。


 魔術の明かりを消して暗闇の中。


「ミズキはギフト殿下に気に入られていますね」


 隣で寝転んでいるサラダの物。


 声が少し固い。


「だな」


 別に後ろめたいわけでもない。


 責めるようなサラダの口調だが今更だ。


 ミズキの周りには美少女が溢れている。


 サラダはその内の一人。


「ミズキは……」


 思案するような声。


「女体に興味は無いのですか?」


 スッと距離を詰めるサラダ。


「殊更無いとは言えんが……」


「わたくしと子を為しましょう?」


「シルバーマンの血筋に生まれるのなら……その子は幸福だな。その意味では有意義とも言えないこともない」


 貴族に生まれれば、たしかに勝ち組ではある。


 ツンとミズキはサラダの額を突いた。


 伸ばした人差し指で。


「であれば」


「却下」


「…………」


 無言のプレッシャー。


「エセビッチめ」


「ミズキにだけですわ」


 純情のつもりか?


 そうは思ったが沈黙は金だ。


「で、お前は俺をどうしたいの?」


「シルバーマンの家長と……」


「面倒くさい」


 ハッキリキッパリ。


「セロリですの?」


「アイツも何だかなぁ」


「カノンは?」


「可愛い」


「ギフト殿下」


「天敵だな」


「ジュデッカ?」


「一番意味不明だ」


 さもあろう。


 あまり良い印象も覚えない。


 最悪のケースも想定してはいるが、


「別にどうとでもなるしな」


 程度だ。


 本当にどうでもいいらしい。


 ミズキにとっては。


「一夫多妻でもわたくしは構いませんわよ」


「夢が広がるな」


 嘆息。


 一応人体調律において他者より一歩先を行く。


 理性と衝動の天秤は静かな物で明鏡止水の理だ。


 性欲は持つが、軽挙妄動に奔るほど急き立てられてもいないということだ。


 セルフコントロールはかなり上位のレベルを維持しており、むしろそうでなければ今頃彼は刺されているだろう。


「お前ならその内いい男が現われるさ」


「それがミズキですわ」


「難儀な乙女だな」


「命の恩人ですもの」


 ミズキがいなければ死んでいた。


 それも事実。


 制服には勲章が付いている。


 人殺しの賞賛。


 サラダのアイデンティティにして殺戮能力。


 が、それも、


「ミズキあったればこそ」


 とも言える。


 でなければ二階級特進だったはずだろう。


 学院生は予備役であるため階級には縁が無いが。


「くあ」


 欠伸。


「そろそろ寝るか」


「えと……」


 闇の中。


「抱きついて良いですか?」


「構わんよ」


 サックリ。


「不埒な真似はするなよ」


「あう……ですわ……」


 図星だったらしい。


「ミズキ……」


 ギュッと力が込められる。


 その体は震えていた。


 慚愧。


 後悔。


 他のヒロインと違い、サラダはミズキに負い目を持っている。


「嫌われているかもしれない」


「今更好感情を向けても白々しいかもしれない」


 そんな観念が後ろ髪を引っ張る。


 滾るような負の感情のスープ。


 とても飲めた物ではなかった。


「…………」


 ミズキの方は速やかに寝ている。


 緊張も無いらしい。


 実際に今までがそうだったのだから、これからもそうなのだろう。


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