第70話 学院祭パニック11
「あう……」
さすがに三人で浴室は狭い。
ぎゅうぎゅう詰めだ。
色々と押し付けられている。
色々と。
セロリもギフトも赤面しており、
「…………」
一人ミズキがぽやっとしている。
「こういうことには慣れているんですか?」
とはギフト。
「童貞だ」
むしろ誇らしげ。
「経験無いんですか?」
「童貞だからな」
「むう」
半眼。
「何よ?」
「それにしては冷静かと」
「然程でもないがなぁ」
ぼんやりと。
「でももう一人のミズキは何も反応しませんよ?」
その通りだ。
フニャッとしている。
フニャッと。
「賢者タイム」
ぬけぬけと言ってみせるミズキだった。
「…………」
してやられた。
ギフトの率直な感想。
トイレに行った際に、果ててしまったのだ。
女性の裸を見て興奮しない理由。
別にミズキも動揺していないわけじゃない。
もっと単純で、
「自慰行為で予防接種」
というだけ。
「あう……」
セロリは赤らんだ顔が引かない。
「可愛いな。お前は」
蒼い髪を撫でる。
「あうぅ」
こういうところが愛らしい。
「ミズキはセロリが好きなんですか?」
「青田買いという意味では先見の明だな」
「そういうんじゃ……ないよ?」
否定しているつもりなのだろうが、弱々しい声の中に喜色がほんのり混じっていた。
ギフトとは違うのだ。
無論カノンともサラダとも。
最初の切っ掛けは何気ない。
治癒。
それだけ。
なのにソレに敬服し、尊崇する。
女の子として男の子と恋をする。
恋愛事情に発展してない理由は幾つかあるが、
「自分では」
とミズキが自虐しているのも含有される。
要するに積み上げた年月が違うのだ。
「殿下もミズキちゃんが……」
「一目惚れです」
「ふえ……」
不毛だな。
言葉にせねども印象はそんなところ。
「言いましたよね?」
ミズキに向けてニッコリ。
「ギフトはミズキに一目惚れしたと」
「言ったな」
だからどうした。
ソレに尽きる。
「ミズキちゃんは?」
「興味ないかね」
「辛辣な……」
実際にその通りではあろう。
「むぅ」
そこでギフトが話を変えた。
「過去記憶の……」
下部を見やりながら比較検討。
「父のより大きい気がするんですけど」
ギフトが父と言えば、この場合は国王だ。
こと男の象徴は権力と比例しない。
「どちらが正常なので?」
「知らんよ」
別に、
「大きいから誇らしい」
との感情とは無縁だ。
そもそもが童貞であるため、
「使わない器官をどう論評されようと一銭にもならん」
が前提にある。
「お友達と比べたりはしないんですか?」
「友達がいない」
事実だ。
ミズキの学院での評価は、
「へっぽこ」
に尽きる。
イジメこそ起こっていないものの、近づけば同類に見なされるため、誰も近寄らない。
例外がかしまし娘とギフトとジュデッカくらいか
全員女子。
それも一人残らず美少女という。
「はふ」
やはり浴室に三人は狭かった。
 




